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インクルーシブが人生を豊かにすること

ブラインドライターズ代表の和久井です。

ユニバーサルデザイン、バリアフリー、インクルージョン、アクセシビリティ、ダイバーシティ……これらの言葉をよく耳にするようになりました。大きなくくりで言えば、「より多くの人が快適に生きる社会」のために使われる単語です。

1995年の阪神淡路大震災は、日本にボランティアが根付いた「ボランディア元年」と呼ばれています。そういえば当時、私は英語の専門学校に通っていました。クラスメートの大学生男子が2週間ほど学校を休んで現地に行ってボランティアをしていたと聞いて、めちゃくちゃ驚いた記憶があります。「タダで働くの?」「なんで?」みたいな。

そんな私も今では災害があれば現地に行って掃除をするなど、普通にボランティアをするようになったので、だいぶ感覚が変わりました。ブラインドライターズを立ち上げたのも、障害のある女子のためのフリーペーパー「Co-Co Life☆女子部」の編集プロボノをしていたことがきっかけです。

バブルどころか世紀末も記憶にないZ世代は、社会貢献意識が高いと聞きます。会社の飲み会で一万円札(聖徳太子)が舞っていたという拝金主義の時代は、すっかり遠くになりにけり。

最近では、ランニングとチャリティを組み合わせたり、eゲームとゴミ拾いを掛け合わせたイベントが企画されるなど、レジャーにも社会貢献の意識が広がっているようです。

まだまだ日本では、障害がある人と関わることは社会福祉の一環、というイメージがあるように思います。私の両親などは優生思想教育を受けて育った世代なので、無意識に差別的思考で満ち満ちていて、私がものすごーく立派なことをしていると思っているようです。「お前たちは自分の娘をそんな聖人に育てたつもりなのか、おこがましい」と心の中で叫んでいます。

でも、経験によって人の感覚は変わっていくものです。珍しかったものやことでも、何度も触れれば、それがいつしか「普通」になります。

インクルーシブから得られるものとは

先日、私の友人2名と弊社全盲スタッフを交えて、夜までダラダラ麻雀をしました。
視覚障害者は点字をスラスラ読めるのだから、盲牌もお手のものかと思ったら、けっこう柄が細かくて難しいらしいです。彼は牌の側面に点字を貼っていて、手牌すら伏せたまま盲牌してました。その様子はまるで透視ができる魔法使いのようです。

だいたい弊社スタッフと一緒にいるとこういう驚きがあるのですが、これまで視覚障害者と関わったことがなかった2人はどのように感じたのでしょうか。

「お誘いをいただき、自分とはまったく違う環境で生活をしている人に出会えると、喜んで伺いました。予想通り、周囲の音を聴きながらの街の歩き方、家の中のものの置き方、PCの使い方など、知らなかったことだらけでとても新鮮でした。別の視点に触れる機会として楽しかったですし、アイデアづくりにもつながりそうな良いご縁をいただけました」
(ボードゲームデザイナー:宮﨑雄さん)

「誰でも、自分が障害を得る可能性があります。もちろん自分も同じなので、何かしら知っておきたいという気持ちでした。百聞しても勘所はなかなかわからないものですが、実際に一緒に遊べたことで気遣いのバランスを知ることができたように思います。『全盲の方に対する通常とは別個な気遣い』というよりは、他者との適切な距離感のその延長のような感覚です。もちろん楽しかったことは前提としてあります。

今後の展望としては、eスポーツの大会やイベントで何かご一緒できる機会が作れればいいなと考えています。代替テキストの必要性や具体的にどういう説明が良いのかといった部分もお話してみたいです」
(株式会社ミリアッシュ代表取締役、株式会社DEPORTAR取締役:竹谷彰人さん)

多様なかたたちと実際に関わってみると、今まで自分が持っていた偏見に気づいたり、無知を認識したりします。

ちなみにコロナ前は、障害のある女子と健常男子の合コンを開催してました。参加した男性陣のお人柄が一発でわかるので、大変興味深いイベントでしたよ!

あたらしい視点が、あたらしい発想や習慣を生む

私はブラインドライターズを立ち上げて6年になりますが、未だにスタッフと話していると、新鮮な驚きがあります。「人それぞれ固有の匂いがあり、部屋にその人がいれば匂いでわかる」と言われたときは、衝撃でした。「生ゴミ臭がするから和久井がいるな」とか思われてたらどうしよう。

私は、スタッフと関わるようになってから、何をしていても「これは少しの工夫でバリアフリーになるな」と気づくようになりました。

そうしてブラインドライターズの飲み会会場を探すのがあまりに大変だったので『首都圏 バリアフリーなグルメガイド』(交通新聞社)を友人と企画・出版しました。

新しい視点は新しいアイデアを生み、新しいビジネスを生む可能性があります。とくにユニバーサルデザイン、インクルーシブといった視点は、これからの社会に必須の分野です。

視覚障害者が日常的に使う「自動読み上げ」は、今や私のメインの読書法です。バリアフリーなサービスは、決して一部の人たちのためだけにあるのではありません。

誰ひとり、「特別」ではない社会づくりを

でもほんとうは、遊びに行くときに「今日は眼鏡の友だちが2人いるな」とか意識しないのと同じように、障害あるなしなんて意識せず、一緒に仕事したい人と仕事をする、遊んでいて楽しい人と遊ぶ社会がほんとうのインクルーシブだと思います。
それには環境のバリアフリー化も必須です。

ブラインドライターズでは今後、積極的にインクルーシブの機会を創生する取り組みを進めていきます。まずは各種イベントを企画中です。

そうしてソフトとハードの両面から社会を進化させていく所存です。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


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