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アルスラーン戦記19巻【ネタバレあり読書感想文】 戦場の混戦、人の狂気、神の過ち


★★★★☆
Amazonでレビューしたものです


入り乱れての混戦


王都エクバターナを奪還するヒルメス軍。
アンドラゴラス軍に敗れ王都からも敗走するルシタニア・ギスカール王弟軍。
王都奪還に向かうアンドラゴラス軍。
状況を見て、ルシタニア軍を撃ちに向かうアルスラーン軍。
そして、そこへ乱入するルシタニア・ボタン軍。
裏で暗躍する蛇王ザッハーグの一味。

登場人物もふえ、色々な立場のものが入り乱れ、なかなか複雑になってきました。この人誰だっけ状態。
2つの国に分かれているなら服が違うからわかるんですけどね。
アルスラーン陣営もアンドラゴラス側と分かれて、また合流して、とかでだいぶ複雑ですよ。

さらに陣営の中でも思惑は人それぞれ。
野望のため神のため王冠のため正義のため、、

不思議なのはタハミーネ様でしょうか。
アンドラゴラスとは決して打ち解けず、涙も枯れ果て。
ただ流されているようにも見えないのですがこの方。かといって金銀財宝が欲しそうにも思えず。
何が欲しいのでしょう?何のために生きているのでしょう?
今後のお楽しみの1つにしておきますか。


市民の狂気


しかし、この巻で一番恐ろしかったのは、ヒルメス軍が侵入した後のエクバターナの市民でした。

今まで虐げられ家族を殺されてきた恨み募りが爆発し、ルシタニア軍を惨たらしく殺しまくります。
まるで子供を火に投げ込んだルシタニア軍の再現です。
それだけならまだわかります。復讐ですから。
しかし、この市民たちは、残虐な行為を止めようとする同じパルス人の市民まで、自分たちを止めようとするものは敵とばかりに殺しまくります。

戦場が人を狂わせるのか?
それとも、狂っている人が、力をえて、違法行為を咎められない状況になって、本性をだすだけなのか?

自分が正しいと思う人間は恐ろしく、狂気と暴力の前では、法も良心も無力です。

アルスラーンはこんな市民も守り、救おうとするのでしょうか?
ちょっと考え直さない?

神の過ち?


”そうさ 神々はいつでも間違う
そして間違った結果を人間に押しつけるものさ”

ギーヴからルシタニア軍へのセリフです。
ここのギーヴ、マジでかっこいいですね。剣も弓も使えて楽器も弾けてナンパしまくりのコミュ力、、何なのこの人。
そんなギーヴも、うるわしの女神を信じ、死にゆく敵への弔いの言葉を送ったりしています。

元々このルシタニアがパルスに進軍した理由の1つが、宗教問題。
十字軍がモデルなんでしょうかね。
この漫画の世界の人々は、みなそれぞれの神を信じているようで、他の宗教を受け入れず、それによって争いが起こっているようです。
その辺は現実社会と同じでしょうか。キリスト教にイスラム教に、、みな不寛容です。

神様仏様、、とお祈りすることはありますが、私は神を本心では信じていません。むしろなぜ信じられるのかわからない。

確かに、宗教は、法律や道徳、倫理の代わりという面もあるあったでしょう。人が集まって過ごすにはいろいろな問題争い事が起こり、ルールが必要ですが、誰かが決めたというよりは、人間より偉く優れた人間が決めたという方が受け入れ従いやすい。
そして、気持ちの安寧という面もあるのでしょう。生老病苦、人間生きていれば辛いことも多く誰かに助けて欲しいと思いつつ誰も助けてくれず助けられなことも数おおくあります。さらに、身内や親しい人が亡くなった時、永遠に存在が失われ2度と会えない、と思うよりは、頑張って生き抜けば次の世でまた会える、と思った方が残された側はよりよく生きられるでしょう。

それでも、このような暴力殺戮がおくる現状を見ると、宗教がもたらす幸福より不幸の方が多そうと思ってしまうのは、私だけでしょうかね。

神などいません。
人を殺そう、他国を侵略しようと決め、実行したのは人です。
そして、人はその理由を神に押しつけます。
神ではなく、人の間違い、人の過ちだと思うよ、ギーヴ。


混沌を制し納めるのは誰か?


ただ、この世界では、神は助けてくれませんが、異形のものはいるようです。
人間たちはどう対抗していくのでしょうか。

そうでなくても、父と従兄弟の調整役を希望するも、力のなさを指摘される、アルスラーン。
国のため国民のため国王のため、悩み動こうとするも、何もできないエステル。
正しく優しいだけでなく、力がなければ、平和も秩序も得られず保てない厳しい現実です。

始まりの地に戻り、一歩も引かない決意のアルスラーン。
彼と仲間たちはこの状況を納めることができるのでしょうか?

がんばれーーー


またアニメ化待ってます!


著者:荒川弘 、 田中芳樹 
ASIN ‏ : ‎ B0C6D72JNJ
出版社 ‏ : ‎ 講談社 (2023/6/8)
発売日 ‏ : ‎ 2023/6/8
言語 ‏ : ‎ 日本語
ファイルサイズ ‏ : ‎ 82126 KB


6巻の感想はこちら。




ちなみに以前アニメ化されてます。
途中まで。
今の所、アマゾンでは無料は1話だけでした。
残念。


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