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【雑記】ちんこだけが可愛がられる不平等──後編


男性器は明るくポップな感じなのに、女性器はなぜタブー視されるのか。

前編では、男性器と女性器の取り扱いの差について、国語学的に考察してきました。今回は、女性器がタブー視された原因について文化人類学的な推察を加え、この課題にどのように取り組むべきかをまとめて、結びとしたいと思います。ただし、ちょっとテーマが手強すぎた印象があります。尻すぼみ感、満載ですw

さすが、性文化学だけで学会もあるほど、大きな研究テーマですから、一筋縄ではいかないですねー😅

 

◆女性器をめぐる文化人類学的考察

 
僕の知っている限り、世界のほとんどの文化圏が女性器をタブー視しています。探せばあるかもしれませんが、女性器をタブー視しない社会を、僕は知りません。女性器はなぜ、文化を超えてタブー視されるのでしょうか。

 

■独断と偏見による5つの仮説

ここからはかなり僕の推測になってしまいますが、女性器へのタブー感が形成された原因は、①出産に対する畏怖心と神聖感、②倫理・宗教、③男性上位社会、④生理の忌避、にあると考えます。でも、どの仮説も弱い!

①出産に対する畏怖心と神聖感
古代の人々にとって、女性が「新たな生命を生み出す」ことは神秘的な現象であった。人々が形而上の思考を発達させ「迷信深く」なるにつれて、女性器は神々と繋がる関門と考えられるようになり、その結果、畏怖いふ心と神聖感が形成されていった。それが次第に女性器へのタブー感へと繋がっていった。

⇒仮説の弱点:畏怖心と神聖感の形成からタブー視に飛躍がある。タブー視に繋がらず、オープンに拝む対象となってもよいはず。

②倫理・宗教
原始宗教から高等宗教(キリスト教・イスラム教・仏教など)に発展する過程で、性に対する倫理的規制がかけられるようになり、性がタブー視されるようになった。その結果、女性器がタブー視されるようになった。

⇒仮説の弱点:男性器はいいのか? それに仏教は性をタブー視してない気がする。

③男性上位社会
男性が社会の権力を握るようになり、その過程で血統を守るために女性の性を抑圧した結果、女性器もタブー視されるようになった。

⇒仮説の弱点:女性上位の社会集団において、「ま〇こ」が明るくポップに語られているなんて、聞いたことがない……。

④生理の忌避
出血は、医学的知識が乏しかった前近代において恐怖を伴うものであり、生理中の女性器からの出血が忌避されたから。

⇒仮説の弱点: アジア圏では大きな理由と思われるが、古代ローマでは女性器はタブー視されていなかったため、文化を超えた理由にはならない。

生理期間中、家から離れた生理小屋に隔離されるネパールの少女。
南アジア圏では現在も生理に対するタブー感が強い。
毎日新聞大阪社会事業団「2015年ネパールから 少女たちの祈り」(https://www.mainichi.co.jp/osaka_shakaijigyo/main_enterprise/world_child/2015/index.html)


■5つの仮説に関する考察

畏怖心・神聖感・宗教
女性器には大きな力が宿るという考え方は、文化を超えて存在しました。例えば、スペインのある地方では、漁に行く夫の安全を願って、夫が家を出るときに妻は必ず女性器を見せる風習があったそうです。

 また、女性器を魔除けのシンボルとする風習も、世界各地にありました。例えば、中世ヨーロッパの城や教会には、女性が裸でしゃがみ込んでヴァギナを広げて見せている女性の彫像(シーラ・ナ・ギグ)がよく見られるそうです。すでにキリスト教が定着した中世ヨーロッパでも、このような風習が残っていたんですね。ちなみに、シーラ・ナ・ギグの起源は謎とのことです。

イギリスのキルペック教会に掲げられたシーラ・ナ・ギグ
クーリエ・ジャポン:「巨大ヴァギナのエネルギー」中世の城に刻まれた“股を大開脚した女性像”の謎(https://courrier.jp/news/archives/242823/)

 
しかし、このような「大きな力」への畏怖がタブー感に繋がったかというと、そうはならない様子です。例えば古代ギリシャ・ローマでは、むしろ女性器は全くタブー視されていなかったみたいなんですよね。ラテン語の文献には、ヴァギナという言葉が普通にさらりと出てくるようです。誰だか忘れましたが、有名な文学者の詩の中にも出て来ます。

西洋圏の場合は、キリスト教が広がってから、タブー視されるようになったそうですが、アジア圏では宗教以前からタブー感があるように思えますから、宗教が理由という訳でもない……。

男性上位社会
男性の所有物と見做され、隠されるものとなったという推測ですが、すでに高度な男性上位社会だった古代ギリシャ・ローマで、女性器は全くタブー視されていなかった事実と繋がりません。うーん……。

ポンペイの壁画。これを見ると、女性器にタブー感がなかったどころの騒ぎじゃないw


生理の忌避
生理の忌避は、アジア圏で強かったです。先ほど紹介したように南アジアでは現代も色濃く残ります。日本でも江戸期以前は、生理小屋がありました。また、「生理中の女性は〇〇をしてはならない」といったタブーもたくさんありました。

ちなみに、前編の「語源と方言」では触れませんでしたが、女性器を現わす古語に「ほと」があり、これはかなり使われていたようです。この「ほと」は火山の火口を現わします。つまり、「赤く燃えた口」です。

しかし、このような生理へのタブー感は、西洋圏ではあまり強くないように思えますから、文化を超えた女性器のタブー視の理由にはなりません。

その他
蛇足ですが、東洋思想には陰陽五行説いんようごぎょうせつという考え方があります。すべてを陰と陽に分ける世界観です。陰は月と女、陽は太陽と男を意味します。男性器を陽根といい、女性器を女陰というのは、この影響です。タブー感とまではいきませんが、女性器を「おおっぴらではないもの」ととらえる考え方は、アジア圏の場合は陰陽五行説の影響もあると思われます。


うーん、ここまでいろいろ述べてきましたが、なかなか難しい……。

女性器へのタブー感に「文化を超えた共通する理由」があると考えましたが、有力な理由を見つけられませんでした。少し調べた限りでは、文化圏によって違いが大きい印象を受けました。

500ページ以上もあってちょっと大変ですが、『ヴァギナ 女性器の文化史』(キャサリン・ブラックリッジ著、河出書房新社、2011年)でも読んでみますか……。でも、西洋圏のことしか書いてないだろうな……。



◆女性器をタブーから解放するべきか否か


前編では「男性器に対する女性器の取り扱いの不平等を伝統的なフェミニストが問題にしなかった」と書きましたが、最近は、女性器をタブー化から解放しようという運動も盛んです。

日本では逮捕されてしまいましたが、漫画家・アーティストの「ろくでなし子」さんが、女性器を使った様々な作品を作って、このタブーに挑戦しました。海外ではもっと盛んで、ブラジルでは2021年にジュリアナ・ノタリさんがこんな作品を芸術公園内に作り、物議をかもしました。

Forbes「ヴァギナはタブーか? 『エコフェミニズム』に自由と権利はあるか?」(https://forbesjapan.com/articles/detail/40315)より


やっぱり僕個人としては「不平等の是正」という観点は分かるにせよ、ちょっとタブー視されているほうがいいなと思います。やっぱり、秘め事じゃないと。だから、燃えるんだと思います。

ちなみに、余談ですが、女性器を示す方言の1つに「おだいじちゃん」(京都府)という言葉があるそうです。これ、センスいいですよね。

「おだいじちゃん、こんな濡れてるけど、どうしたの? まだ、何もしてないよ。どうして欲しいの」

「おだいじちゃん、すごく開いてるよ」

うーん、やっぱダメな気がするw 使用感が悪いですねw(こんだけ書いておいて、こんな結論、苦笑)


ネットで検索したら「ネット乞食」という言葉に出くわしました。酷いこと言う人、いるなー。でも、歴史とたどれば、あらゆる「芸」は元々「乞食」と同根でした。サーカス、演芸、文芸、画芸しかりです。つまり、クリエイトとは……、あ、字数が! 皆様のお心付け……ください(笑) 活動のさらなる飛