第73話「感染疑惑」

（前回からの続き）
　前回のアポから2週間後、早くもまた会うことになりました。意外と受け入れられています。全然手応えを感じていませんが、何故か話が進んでいます。
　しかし当日、事件が起きます。

　私はその日の午後、急に具合が悪くなりました。急にです。ほぼ一年中健康状態の私が珍しいです。
　この具合の悪さには、理由がありました。
　会社の総務の女性（ヤマダさん）が、出社して2時間ほどで早退をしました。実は朝から熱があったそうなのです。帰る途中で病院に寄り、診察の結果が社員連絡用チャットに送られてきました。

大変申し訳ございません。
インフルエンザA型の診断が出ました。

　ちょっ！　おまっ！　マジか！
　つうかインフルエンザ関係なく熱があったら会社来るな！　休め！
　社内がザワッとしました。
　会社も会社でおかしかったですね。その報告を受けて、全社員へ対応策が通知されました。
「皆さん、うがい・手洗いをきちんとしましょう」
　のん気か！　それ対応策じゃなくて予防策や！
＂インフルエンザの人が出社した＂ことによる対応策を知らせないと。社内の消毒や家に帰るまでのマスクの徹底、数日の検温などなど（プラスで、うがい・手洗いなら分かる）。

　ヤマダさんがインフルエンザだと知ってから、私の容態が急変しました。吐き気と頭痛。しかも顔が異様に熱くなっています。
　これは、まさか＂インフルエンザ感染＂……！？
　マズいです。夜スズサワさんとの予定があるのに。
　夕方になっても回復しないので、とりあえず会社を早退しました。向かった先は、病院です。検査をしてもらって、インフルエンザじゃなければスズサワさんと会おうと思いました。

　病院に行くと、言われたことは、
「熱が出ていないと、インフルエンザかどうか診察できません」
　その時の私の熱は、36.3℃。めっちゃ平熱……。
　インフルエンザかどうか分からない状態でスズサワさんと会うわけにはいきません。くらすたーがぱんでみっくになってしまいます。
　悩みに悩んで、私は断腸の思いで、「今日キャンセルさせてほしい」とLINEをしました。主な内容はこうです。

・具合が悪くなった
・謝罪の言葉
・会社の人がインフルエンザだった
・もしインフルエンザをうつされていたらまずい
・今回はキャンセルにさせてほしい
・謝罪の言葉

　人生初のドタキャンです。ものすごい心苦しいです。頭痛もヒドいし吐き気もするし、満身創痍です。
　30分後、スズサワさんから返事が来ました。

・体調不良は仕方ない
・が、こんなギリギリのドタキャンはどうなのか。もっと早く連絡できなかったのか。
・自分の事情伝えてばかりでどうなのか。
・お大事に。

　途中私、激詰めされています。泣きそうになりました。
　丁寧に事情を説明して謝って、自分としては精一杯の言葉を送ったつもりでしたが、ダメだったようです。どう書けば良かったのでしょうか。
　約束の時間ギリギリになってしまったのは本当に申し訳ないですね。行きたかったからこそ、ギリギリまで行ける可能性を探していたのですが。

　この激詰めがトラウマで、その後何もメッセージを送ることができませんでした。当然向こうからもメッセージは来ず。結果、自然消滅となりました。悲しい。

　ちなみにインフルエンザにはかかっていませんでした。普通に気のせいでした。熱っぽかったのも、気のせい。吐き気も、気のせい。全ては、そう、ヤマダのせい。