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棚の本:このあたりの人たち

このあたりの26の物語。

くまとら便り

それなりに幸せで、世界を破壊する気はないけれど、今日一日は仕事をさぼり、電車で少し遠くへ行きたい、せめてお昼は一人で食べたい、というような日に。

ショートショートに分類される、26の作品群です。
電車に乗っている間や、コーヒーを飲みながらでも、物語をひとつ、ふたつ読むことができます。

そして、物語ひとつでも、川上弘美の「あの世感」、「あの予感」を、十分に味わえると思います。
世界と自分との間に少し隔たりができ、現実感が薄くなり、そこにするりと顕れた別世界の住人になったような感覚。
川上弘美ワールド未経験の方にもおすすめしやすい、神経に軽く作用するおくすりです。

川上弘美さんに直接お会いする機会はないと思いますが、もし、この先お会いするようなことがあれば、その両足が、床についているのか、少し浮いていたり半透明だったりしないのかを、気付かれないように、確認しなければならない。そう思いました。

中世の魔女狩りで不幸にも死刑に処せられたのは、スパイ活動中の末端の魔女や、ふつうの女性で、ほんとうの魔女は力を保ったまま、世界中にちらばったはずなのです。そして、ほとんど幸せに、静かに生き長らえながら、ときどき、一見それほど重大でないかのような風情で、このあたりで決定的に重大なことをしているに違いありません。

魔女は、幽霊ではないのだし、足の様子で見分けられるはずはないのだけど。
















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