見出し画像

ノルウェーでの9週間実習指導体験 ~第4・5週~ 中間実技試験とレポート提出


ノルウェーの理学療法学科では、最終年度に3か月間の実習期間があります。私も現在の職場である回復期リハビリ施設で4〜5人の実習生を担当した経験があります。ここでは、ノルウェーでの理学療法実習指導の体験を数回に分けて紹介します。
前回の記事はこちら →
[第1週: 「はじめまして」の週]
[第2・3週: 患者さんを受け持ち、トライ&エラーを繰り返す週]

実習が始まる週にスーパーバイザーは大学側の担当教授と連絡を取りながら4・5週目に行われる中間実技試験の日程を決めます。学生一人につき3時間設けられていて実際の患者さんへの理学療法を大学教授とスーパーバイザーの前で行います。評価の対象にはなりますが、ここで合否をというわけではなく、どちらかといえば、学生主体の実技を行うことで、学生自身のプロとしての自覚を高めてもらい、残りの実習でどのように学生自身が学んでいくか、実技を通して皆で議論し合う機会を設けていく場と私は認識しながら毎回参加しています。でも学生さんにとっては人前で自分の実技を披露しその後1時間、教授と指導者と共にディスカッションしなければいけないので、たまったもんではない、というのが現実かなぁとも思います(汗)。

実技試験の内容

試験前日準備:学生は、既に担当している患者に対する検査および治療の一部を実施する。学生は患者のカルテを事前に読み、病歴を把握し、事前に患者を検査している。中間実技試験では、この患者についてスーパーバイザーから指導を受けている場合もOK。

試験当日

  • 発表:学生は口頭または書面で、病歴、症例歴、および検査の主要な所見を発表し、患者の主な問題を明示する。その日の治療目標も提示する(約10-15分)。

  • 検査:学生は、患者の主な問題を明らかにするための関連検査を実施する。少なくとも1つの検査は、動作解析または観察であること。

  • 治療:学生は、主な問題、目標、検査結果に基づいた理学療法を実施する(検査と治療の合計で約50分)。

  • 休憩:15分間の休憩。

  • 臨床的推論の説明:学生は実施した理学療法に対する臨床的推論および専門的根拠を詳述する(約10-15分)。

  • 議論と反省:関連する学習成果に関連した議論と反省(約50分)。

重視する点

  • リーズニング

  • 患者の問題と目標の整合性

  • 患者の問題、検査、理学療法の整合性

  • 検査および理学療法の技術的実施

  • 実技中の患者へのケア

スーパーバイザーとしての経験

患者さん選びが大変です。回復期リハの患者さんは多疾患併存がほとんどで、できるだけ大学側のカリキュラムに沿った患者さん選びを心がけています。でも、時期によっては多疾患併存で実習への参加同意を得るのが困難な認知症の方しかいない場合もあり、その時は全ての階を走り回って同僚に助けを求めます(笑)。

学生の反応も様々で、ほとんどの学生はとても緊張して本番を迎えます。指導者として私が心がけていることは、実技試験までに学生のプレゼン力を高めることです。緊張していつもの自分が出せないパターンがよくあるため、実習初週から「人前で説明できるテクニック」を高めるように話しています。

大学教授との連携

大学教授の方も学生が実習中に多くの学びを得られるかを重視しており、本番当日はとてもスムーズに進みます。しかし、人によっては圧迫面接のように詰め寄ってくる教授もいます。私も自分が学生の頃にそのタイプの教授に当たってしまいTHEトラウマになっています(笑)。その件はまた他の記事に書きたいと思います。

ノルウェーの教育方針としても、学生自身が自分の頭で考えて発言するプロセスを重視しています。実技試験においても、学生自身が頑張って失敗しながらリーズニングを導いていくプロセスを重視しています。ノルウェーではこの過程を「リフレクション(熟考)」と呼び、実技の中で行ったことを振り返って改善点を見つけたり、深く考えることによって、自分自身へフィードバックができることこそが実習の醍醐味だと考えられています。

レポート提出

中間実技試験の1週間後に、学生は実技で担当した患者の症例レポートを提出します。内容は実技と同じですが、それに加えて臨床的推論をより深く述べることが求められます。患者情報の収集から情報の分析、仮説を立て検査で確かめ、最も適切な治療法を導き出しリーズニングをする。そして理学療法を行った後のフィードバック・軌道修正など、理学療法を行う上で欠かせないプロセスを言語化してレポートにします。文字数が限られている中で苦労する学生が多いですが、実技試験後に提出することで、レポート内容がより深まり、学生の成長を感じられます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?