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お金と時間をかけずに失敗しないプロダクト/サービスのコンセプトを作る方法

(第2回)ジョブストーリーを記述してみる

前回(第1回目)の中で、多くの新しいプロダクトやサービスが失敗に終わる主要な理由の1つとして、「ターゲットとする顧客、その顧客が抱える課題やニーズが不明瞭であったこと」ではないかと考えました。

また、ジョブ理論とは、人々が特定のプロダクトやサービスを購買/利用する本当の理由を知ることで、イノベーティブなプロダクトやサービスを創造するためのアプローチであり、本ブログではジョブ理論のエッセンスを「ターゲットとする顧客の課題に関する仮説設定」に活用していくこともお話ししました。

ジョブ理論は、今年(2020年)の初めに惜しくも亡くなられたハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセン(1952~2020)の書籍(原題:Competing Against Luck – イノベーションを運任せにしないというような意味?)で、日本でも有名になりました。

ジョブ理論

ジョブ理論は、同氏が考案したものと思っている方が多いかと思いますが、実際には50年ほど前から様々な分野(経営学、経済学、社会心理学など)で、人々が特定のプロダクトやサービスを購買/利用する理由に関する研究がなされてきました。同氏がこれらの研究成果を1冊の書籍でまとめたものがジョブ理論であるといった方が正確でしょう(これに関しては、改めて別のブログで触れていきたいと思います)。

クリステンセン同様、ハーバード・ビジネス・スクール教授であり、マーケティングの大家であったセオドア・レビット(1925~2006)がよく口にしていたといわれる「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」というフレーズは、ジョブ理論の本質を上手く示してします。

クリステンセン教授は、「ある状況において、私たちは何かを成し遂げるために、特定のプロダクトやサービスを雇う(Hire)」という表現をしています。反対に、私たちは何を成し遂げる上で役に立たないプロダクトやサービスは解雇する(Fire)ことになります。

例えば、シンデレラは「次の晩餐会で、王子様と踊るために、ガラスの靴を雇う」わけです。個人だけでなく、組織にもジョブ理論は当てはまります。日産は「改革を進めていく上で、企業ブランドのイメージを刷新するために、永ちゃん(矢沢永吉)を雇う」のかもしれません(間違っていたらごめんなさい)。

シンデレラ

デザイン思考と同様、ジョブ理論もまた様々なバージョンが存在しています。プロダクト開発者向け、マーケッター向け、UX/UIデザイナー向けなどです。

ジョブストーリー

ここでは、ジョブ理論の論客の1人、アラン・クレメントが提唱するジョブストーリーというテクニックを活用していきます。ジョブストーリーとは、以下のようなステートメントから構成されています。

When _________________(Situation)
I want to _________________(Motivation)
So that I can
_________________(Expected Outcome)

ジョブストーリー

ジョブストーリーを日本語で示せば、以下のようになるでしょう。

______という状況において、
______できるように(期待される成果)、
______したい(動機)

ここでいうところの期待される成果とはニーズ、動機とはその状況においてそのニーズを満たすためのプロダクトやサービスに対する購買/消費の理由に近いかもしれません。

この世に生まれた新しいプロダクトのサンプルを、ジョブストーリーに沿って当てはめてみました。

ジョブストーリー1

例えば、ウォークマンは、当時ソニーの名誉会長であった井深大さんが、旅客機内で音楽が聴けるモノを(自分のために)作って欲しいと、社内の事業部長に依頼したことが開発の発端となったという話があります。

ジョブストーリーの中で最も重要な要素は、状況の特定です。状況が不明瞭であれば、そのジョブを成し遂げる上で購買/利用可能なプロダクトやサービスは非常に多く存在するからです。

状況とは、時間や時期(早朝、真夜中など)、場所(オフィスの中、電車の中)、何かの最中(ランニングの最中、移動の最中など)、またはそれらの組み合わせ(休日の朝、公園でランニングしている最中)であったりします。また、ライフイベント(就職や転職、結婚や定年退職など)を含めてもよいでしょう。

本ブログ「お金と時間をかけずに失敗しないプロダクト/サービスのコンセプトを作る方法」は、身近なテーマであり得そうなジョブストーリーを記述してみることからスタートします。

例えば、以下のようなものを記述してみましょう。

ジョブストーリー2

もし、皆さんが何か新しいプロダクトやサービスのアイデアをお持ちであれば、それをベースにジョブストーリーを逆引きで考えてみるとよいでしょう。そうすることによって、ターゲット顧客像がより鮮明になると同時に、そのアイデアをさらにブラッシュアップしていくことができるかもしれません。


次回は、既存の代替(プレトタイピングキャンバスの次の要素)について触れていきます。ジョブストーリーと既存の代替を組み合わせることによって、ターゲット顧客の課題、その課題を解決するプロダクトやサービスのアイデアのベースが思い浮かぶようになってくるでしょう。


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