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ちょびの書評

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2018年4月の記事一覧

ジョン・ボイル「ヒトラーと暮らした少年」★★★★☆

小説、ジョン・ボイルのヒトラーと暮らした少年を読んだ感想。

無垢な少年が迫害する側へと変貌する物語。

成長環境は子供の人格形成に大きく影響する。自分の中に判断基準を持たない子供は信頼できる大人を疑うことは難しい。また、権力を持つことや他人を威圧することで自己肯定感を増していき自身の考えを否定する者に耳を貸すことはますますできなくなる。

それでもこの物語には救いがある。若くして彼自身に気づきの

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猪俣武範「働く人のための最強の休息法」★★☆☆☆

猪俣武範「働く人のための最強の休息法」★★☆☆☆

健康本、猪俣武範の働く人のための最強の休息法を読んだ感想

良いところ。休息について6つの観点から広くまとまっている。健康を意識するきっかけになる。

悪いところ。内容が薄い。論文など参考文献をつけているが議論になっていて定説とは言えないものやググればもう少し詳しく知れるだろうといったものが多い。

健康を意識してなにかに取り組むことは間違いなくいいことなので、そのきっかけがつかめれば読んだ価値は

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ブッツァーティ「タタール人の砂漠」★★★★★

ブッツァーティ「タタール人の砂漠」★★★★★

小説、ブッツァーティのタタール人の砂漠を読んだ感想。

いつの日かタタール人が攻めてくる。この砦は最前線の防御拠点であり、ここに駐屯する我々は英雄となるであろう。

私もいつか同じ思いを持ってしまうのではないだろうか。環境や仕事がかつて思い描いていた理想のものでなかったとしても、これには意味があって重要な仕事なのだと思い込む人は日本の現代社会において、ひょっとしたら多数派を占めているかもしれない。

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東野圭吾「恋のゴンドラ」★★☆☆☆

小説、東野圭吾の恋のゴンドラを読んだ感想。

登場人物はいわゆるリア充と呼ばれるものたちだらけだ。そんな彼らの恋模様を描いているわけだから、イライラさせられたり憤慨する読者も多いのではないだろうか。

冬のゲレンデはスキーウェアを着たりゴーグルをして顔を覆っているため、ミステリーでは人入れ替えトリックにはもってこいの環境だが、本作では恋愛の修羅場の演出に使われる。

東野圭吾の遊び心満載の一作だが

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