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スティーヴン・ホーキング「ビッグ・クエスチョン<人類の難問>に答えよう」

スティーヴン・ホーキングについてどれだけ知っているだろうか。 私が持っていた彼の印象は難病を抱えた天文学の天才ということぐらい。恥ずかしながら今まで「知ろう」としていなかったのだ。 今回、図書館で高校生向けの図書としておかれていた本書を手に取った。(周りに見られていないか少し恥ずかしかった)  本書の中では10個のビッグ・クエスチョンに対しての彼の見解が書かれている。  これらのうちのいくつかは、子供のころに考えたことはあるかもしれないが、大人になるにつれて「なんとなく

    • ジョン・ボイル「ヒトラーと暮らした少年」★★★★☆

      小説、ジョン・ボイルのヒトラーと暮らした少年を読んだ感想。 無垢な少年が迫害する側へと変貌する物語。 成長環境は子供の人格形成に大きく影響する。自分の中に判断基準を持たない子供は信頼できる大人を疑うことは難しい。また、権力を持つことや他人を威圧することで自己肯定感を増していき自身の考えを否定する者に耳を貸すことはますますできなくなる。 それでもこの物語には救いがある。若くして彼自身に気づきの機会が得られたこと。そこからどう変わっていくか自由が与えられたこと。 過ちを気

      • 猪俣武範「働く人のための最強の休息法」★★☆☆☆

        健康本、猪俣武範の働く人のための最強の休息法を読んだ感想 良いところ。休息について6つの観点から広くまとまっている。健康を意識するきっかけになる。 悪いところ。内容が薄い。論文など参考文献をつけているが議論になっていて定説とは言えないものやググればもう少し詳しく知れるだろうといったものが多い。 健康を意識してなにかに取り組むことは間違いなくいいことなので、そのきっかけがつかめれば読んだ価値はあるだろう。 猪俣武範「働く人のための最強の休息法」https://www.a

        • ブッツァーティ「タタール人の砂漠」★★★★★

          小説、ブッツァーティのタタール人の砂漠を読んだ感想。 いつの日かタタール人が攻めてくる。この砦は最前線の防御拠点であり、ここに駐屯する我々は英雄となるであろう。 私もいつか同じ思いを持ってしまうのではないだろうか。環境や仕事がかつて思い描いていた理想のものでなかったとしても、これには意味があって重要な仕事なのだと思い込む人は日本の現代社会において、ひょっとしたら多数派を占めているかもしれない。 そう思い込まないとやっていけない場合もあるだろうし、苦しい環境に身を置いてい

        スティーヴン・ホーキング「ビッグ・クエスチョン<人類の難問>に答えよう」

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        • ちょびの書評
          13本
        • ちょびの映画評
          1本

        記事

          東野圭吾「恋のゴンドラ」★★☆☆☆

          小説、東野圭吾の恋のゴンドラを読んだ感想。 登場人物はいわゆるリア充と呼ばれるものたちだらけだ。そんな彼らの恋模様を描いているわけだから、イライラさせられたり憤慨する読者も多いのではないだろうか。 冬のゲレンデはスキーウェアを着たりゴーグルをして顔を覆っているため、ミステリーでは人入れ替えトリックにはもってこいの環境だが、本作では恋愛の修羅場の演出に使われる。 東野圭吾の遊び心満載の一作だが、面白いかどうかは人それぞれかもしれない。 軽薄な男の浮気は許される、イヤな事

          東野圭吾「恋のゴンドラ」★★☆☆☆

          穂村弘「本当はちがうんだ日記」★★★★★

          エッセイ集、穂村弘の本当はちがうんだ日記を読んだ感想。  面白い話をするのは難しい。特に「ちょっと面白いことがあったんだけど」などと話し始めたら最悪だ。ただでさえ難しいのにそのハードルを自ら上げてしまっているのだから。 自分の中では確かに面白いのだ。思い出し笑いをしてしまうほどに。しかし、言葉にして人に話してみると、どうもその面白さの十分の一も伝わった気がしない。最後には仕方なしに「っていうことがあって笑っちゃったんだ」などと付け足してみる。友人の苦笑いに心がしゅんとなっ

          穂村弘「本当はちがうんだ日記」★★★★★

          榊原康 「NTT30年目の決断 脱「電話会社」への挑戦」★★☆☆☆

          ビジネス書、榊原康のNTT30年目の決断 脱「電話会社」への挑戦を読んだ感想。 NTTグループの2010年代の動きが大まかにまとめられている。専門用語が多く、その分野に近い人にはお勧めできるが、興味のない人にはことごとくつまらないだろう。 単純な賞賛本ではなく、批判的な内容も多く、今後の課題を広く検証するなど批評としては良心的であるといえる。  通信業界に興味のある人は読んでみるといいだろう 榊原康「NTT30年目の決断 脱「電話会社」への挑戦」https://w

          榊原康 「NTT30年目の決断 脱「電話会社」への挑戦」★★☆☆☆

          綿矢りさ「蹴りたい背中」★★★☆☆

          小説、綿矢りさの蹴りたい背中を読んだ感想。 同著者の「勝手に震えてろ」が拗らせた女性を描いているとするならば、こちらは拗らせかけている女子高校生を描いている。 男子校出身の私には共学における人間関係の機微というものは想像の世界にしかないものだが、その人間関係に嫌気がさした主人公は嫌気がさしている分、人間関係に敏感になり俯瞰した視点でそれを眺めている。 オタクのにな川は幼稚だが純粋だ。その純粋さに触れた主人公は苛立ち、自分の感情を整理できずにおり、しかし離れることもできな

          綿矢りさ「蹴りたい背中」★★★☆☆

          ちはやふる 結び ★★★★☆

          映画、ちはやふる 結び の感想。 上の句、下の句に続き安定の出来栄えで楽しめる作品に仕上がっていた。 三角関係の恋模様は置いておいて、ここでは団体戦を主題に据えて話を進めたい。 チームスポーツのように明らかに連携やチームワークが必要な競技に比べて、本作の競技カルタ、あるいは将棋・囲碁などの個人競技の団体戦というのは一般人にはなかなか理解できない点も多いのではないか。 しかし、高校生・大学生の青春時代をそれらの世間一般から見たらマイナーで地味な競技に捧げる理由はひとえに

          ちはやふる 結び ★★★★☆

          早見和真「イノセント・デイズ」★★★☆☆

          小説、早見和真のイノセント・デイズを読んだ感想。 事前知識なしに読み始めたが、途中まで読み進めたところでもう一度プロローグを読むことになった。構成が特徴的で、プロローグに判決シーンを持ってきて、その後過去を明かしていく手法が核となっていて、かつ面白い。 民放のニュース、報道番組は視聴率を重視せざるを得ないため、視聴者の興味をそそるか、ショッキングで印象に残るかを基準に報道するのは現状の制度では自然な状態である。 そのために事実をあらゆる角度から切り取っているということは身

          早見和真「イノセント・デイズ」★★★☆☆

          村田沙耶香「殺人出産」★★★★☆

          小説、村田沙耶香の殺人出産を読んだ感想。  物語の導入の書き方が巧み。独特の倫理観が浸透している世界に違和感なく没入させる手法が見事。星新一のショートショートを読んでいるような気分になる。 全編を通して生と性に対する現代社会の倫理観への懐疑が描かれているが、倫理観なんてものは長い目で見れば一過性のものにすぎないと考えると割とすんなり読めてしまう。 どの短編もすっきりしており読みやすいが、「トリプル」だけはやや嫌悪感を感じたのは私も現代社会の倫理観にとらわれているからだろ

          村田沙耶香「殺人出産」★★★★☆

          ジェイン・オースティン「高慢と偏見」★★★☆☆

          小説、ジェイン・オースティンの高慢と偏見を読んだ感想。 筆者の身近な世界を描いているからこそリアリティがあり、情景をつぶさに想像できる。ユーモアあふれる会話や知性を備えた主人公のエリザベスが魅力的。また、タイトルである高慢と偏見は読者にも少なからず身に覚えがある部分があるのではないだろうか。 次に、疑問に思った点。 まず活発で知性を備えたエリザベスに比べて彼女の家族があまりに愚鈍である点。これはやや不自然である。エリザベス視点で語られる物語ゆえ、そこに彼女の偏見がやはり入

          ジェイン・オースティン「高慢と偏見」★★★☆☆

          R・A・ハインライン「夏への扉」★★★★★

          小説、ロバート・A・ハインラインの夏への扉を読んだ感想。 SF小説でタイムトラベルは定番のテーマの一つであるといえる。未来であれば多少の科学技術の進歩は約束されるものであるし、ユートピアあるいはディストピアを自由に創造することができる。 ナイーブなアイデアならタイムマシンで時間の遡行と順行を実現するだろうが、本作では2種類の手法で別々に解決している点はユニークである。 原作が発表されたのは1956年、小説の時代設定は1970年、トラベル先が2000年と3つの時代のずれに

          R・A・ハインライン「夏への扉」★★★★★

          伊藤計劃「虐殺器官」 ★★★★☆

          小説、伊藤計劃の虐殺器官を読んだ感想。 テロ、戦争、虐殺。TVやインターネット上で目にする機会が増えてきた、そういわれても私達の生活には何ら影響は感じられない。 ミサイルが上空を通過していっても会社は休みにならないかしらと期待する我々にとって、人が人の暴力によって命を奪われるという事象は別世界、あるいはフィクションの中に存在するに過ぎない。 伊藤計劃「虐殺器官」の世界では戦争、大量虐殺が頻発する後進国と監視社会によって虚偽の安寧を見せる先進国が描かれている。 ジャンル

          伊藤計劃「虐殺器官」 ★★★★☆