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ふるさとを語ろう【表現者:まこと】

「ふるさと」ってどこを指すんだろうってよく考えます。大学で「地元どこ?」と聞かれるたびに心にちくっと針を刺されます。ググってみました。

ふるさと‐その人に古くからゆかりの深い場所、生まれ(育った)土地や以前に住み、またはなじんでいた場所。

私が生まれたのは沖縄。気候も温暖で、海も綺麗で、、、私はそんな生まれ故郷がずっと嫌いでした。

転勤族だった私は引っ越し先の「適当でいいよ」という文化に馴染もうとしたけど

幼少期の沖縄の記憶はありません。転勤族だったから、私が1歳の頃にすぐ大阪に移り住んでいました。それから数年たって、沖縄に戻ってきたのは小学校2年生の5月頃。

転校生の私が物珍しかったのか、担任の先生と教室に向かう途中の廊下まで、私を見に何十人も生徒が出てきていました。緊張しすぎてどんなふうに自己紹介したかも覚えてないけど、そこから私の沖縄での生活がスタートしました。結果からいうとめちゃくちゃしんどかったです。

同級生たちはみんな同じ土地でずっと生活してきて、もうすでに私の入る隙なんてなかったんですよね。あとなんだろうな、「真面目な子」ってレッテル張られちゃって、「真面目過ぎて無理」みたいな感じに言われちゃったんです。

「適当でいいよ~」みたいな文化の中では私はとがっている人間だと思われたみたいです。ちょっとでも馴染もうと思って、無理やり言葉の訛りを作ってみたり、不良みたいな服を着てみたり。すごく無理をしていました。

でもこれだけだったら、故郷を嫌う理由にはならなかったと思うんです。多分私が沖縄を嫌う、というか憎む?きっかけになったのは曾祖母の死でした。

「ここにいたから母は壊れたんだ」。曾祖母お葬式で感じた”しきたり”

沖縄の葬式の儀礼はとっても手順が細かく、厳しいしきたりがあります。大人数の親戚が休日に集まって、食事を囲んでお線香を立てる。

9才だった私は女性の一人として台所に立って、次々にやってくる親戚達の食事をご膳に盛って出したり、食器を洗ったり、自分より小さい子どもたちの面倒を見たり。

そして何よりも、県外の人間である父と結婚した母のことを目の敵にしていた人達だったから、幼いながらにその摩擦というか、水面下で行なわれる私達家族へ白羽の矢が立てられる空間が今でもトラウマです。「あぁ、ここにいたから母は壊れたんだ」って。

小学校を卒業する半年前、「埼玉に引っ越すよ」と突然言われました。心の中でひそかにガッツポーズ。やっとここから逃げられる!次の日から学校に行く足取りがとっても軽かったです。卒業式が終わったら、花束とかを渡しあう同級生の間をかき分けて足早に家に帰りました。

出身を褒められるたびに沸き起こる嫌な記憶と憎悪は、祖母が亡くなったことで変わった

中学校では親友と呼べる友達ができて、クラスのみんなと笑いあって。でもそんな中で私の話になると毎回沖縄の話になります。「沖縄出身ってめっちゃいいじゃん!」って言われるたびに、嫌な記憶と憎悪が沸き起こってきて、「いやいや、あそこはちょっと、、、」ってそんな会話を何度もするたびに自分のアイデンティティを否定する虚しさにとらわれていました。

ずっと憎んできた生まれ故郷への想いが変わったのは祖母が亡くなったことでした。以前のエッセイでも書いたようにおばあちゃんとは亡くなる前の二日間だけお話をしました。おばあちゃんはかつての戦争の話をずっとしていました。

下手に飾るような言葉もなく、でも話をするその目はありのままの史実をまっすぐに伝えるようで。そんな話を聞いていると私たちを差別してきたあのおじさんおばさんもこんな気持ちだったのかな。

行き場のない怒りを抱えて来たのかな。私たちにした仕打ちを許すつもりはないけど、単純にやり返して解決する問題でもない。そう考えると少し冷静になれました。抱えてきた故郷に対しての怒りが私が背負えるだけのものになったんです。

なんとなくでも覚えた潮風の懐かしさ。いつか琉装をして花笠をかぶるのも悪くないかもしれない

今でも、沖縄に行くのは怖いです。また迫害みたいなことをされるんじゃないか、「ここはお前の場所じゃないだろ?」そんな風に指を指されるんじゃないか。将来的に沖縄に住むことはないと思います。

ですが、療養期間中に一人で潮風にあたりに行ったとき、なんとなくなつかしさを覚えたのは、私のなかにずっと「ふるさと」として存在している証なんだなぁと。いつか琉装をして花笠をかぶるのも悪くないんじゃないかなあとそんな風に思っています。

(編集:響あづ妙
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