海を望む小さな食堂、花鳥風月。
特別じゃない、なんでもない日を祝いたい。
創作和食と美味しいお酒、思い切りの笑顔でお待ちしています。
これは、そんなお店のしあわせな夏の日の物語。
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#青春小説
連作短編「おとなりさん season2 海の見える食堂から」#9
第九話「夏の日 〜後編」
晴天。今日は炎天。
午後も三時を過ぎたころ、お日様はわずかながら傾いてはいたけれど、変わらず、まるっきりの猛暑。酷暑。気温は摂氏三十五度。そもそもが車道に設けられた飲食店ブースは、アスファルトからの照り返しで完全な蒸し焼きスペースになっていた。
海も開放されたこの日。浮き輪を手にして、水滴を滴らせてゆく小さな子たち。日焼けた背中。お母さーん、の、呼び声。すぐに乾く
連作短編「おとなりさん season2 海の見える食堂から」#10(最終話)
第十話(最終回)「いつも隣に君がいた」
七月の花火大会を経て、再び帰ってきた梅雨前線。連日の大雨。四国の梅雨は、それこそ、機関銃のように雨が降るのだ。曇り空の後の激しい雨、そんな季節をやり過ごして、前線がようやく遠く離れたのを確認して、どうにか、遠回りしてやってきた盛夏。
八月になると連日の三十五度。挨拶代わりの「暑いね」「暑いですね」。
猛暑は僕たちから言葉を奪う。四国は暑いと骨身にしみ