見出し画像

ジェンダーの壁と自分らしさ〜地方の課題〜LDLバデイ対談vol.3

「地方創生」「稼ぐまちづくり」を掲げ、全国各地で経営とまちづくりに取り組んでいる木下斉さんが所長として立ち上げたオンラインラボ「locally Driving Labs(LDL)」。全国各地で地域主義を徹底しながら、定期的にオンラインでメンバーが繋がり、課題を共有し、自らの場所で動く。を繰り返しながら活動しています。
現在、参加メンバーは70名以上。それぞれどんなバッググランドでどんな活動をしているかを掘り下げることを目的に始まった『LDLバデイ対談』です。

今回の対談者は埼玉県と愛知県の2拠点生活をしながら、生まれ育った愛知県名古屋市で、「学び舎mom株式会社」を立ち上げ、女性や大学生の企業サポート事業を運営する、矢上清乃さん。

矢上さんの生い立ちから現在、2拠点生活をしながら女性起業支援をサポートする会社を立ち上げた経緯を伺いながら、「私が地域に目覚めたきっかけ」についてお話しを伺いました。

1、大学進学に大きな挫折

愛知県で生まれた矢上さん。ご実家は、車などの部品工場を営む、自営業の家に生まれた。若い頃から、家業の手伝いをしながら、うる覚えながら「地元に貢献する仕事に対するやりがい」や「地域に雇用を生むことをしたいな」という心が芽生えたそうです。
お母様は専業主婦で、愛知特有の保守的なお家で育ち、小さな頃から親の言う通り勉強はがんばったのに、親からは「女性は、はやく嫁に行け」「男にしか家業は継がせない。」と言われ、東京の大学に行きたかったけれど親には認めてられなかった。そこで「女性は勉強しても地元からは出してもらえない」大きな挫折を味わう。
地元の大学に行く代わりの条件として、1年間留学することを認めてもらい、1年間、アメリカへ留学し、ビジネスについて学び、とても刺激を受けたそうです。
たが、留学から帰国して即就職活動の際、東京で働きたくて東京本社が9割の会社に就職したのに、いざ入社してみると、7人しかいない名古屋支社配属になってしまい希望が叶わなかった。東京本社の同期は女性でも伸び伸びと働いているのに、名古屋支社では、その風土に合わせて「女性」というだけで、営業には行けず、総務の仕事ばかりで、仕事にも制限がかかる【ジェンダーの壁】を感じた10代〜20代だったそうです。

2、キャリアアップの壁


就職後も、何か「地元に貢献したい」という思いは変わらず抱き続け、休日に女性センターに通ったり、ボランティアに参加したりしました。また、もっとビジネスを学びたいと「MBA留学」を目標に、東京出張時や長期休みには、東京にしかないMBA留学予備校に通ったり、試行錯誤しながら、2度目の挑戦で、MBA留学に合格し、テキサス大学院へ留学。
帰国時に名古屋では、MBA帰りの女性の就職先は逆にオーバースペックと言われてなかなかなく、東京での就職先しかなく、名古屋にいるご主人とは別居婚を選ぶことに。
仕事も旧姓で続けていたため、当時、実家の家族に、「別居婚」も「旧姓で仕事を続けること」もなかなか理解を得るのが大変だったそうです。
また、子どもを授かりたかったが、なかなかできず、会社には打ち明けられないまま不妊治療をし、35歳でようやく授かった時に昇進の話。
せっかく授かった生命。昇進は諦めざるをえなかったそうです。
妊娠9ヶ月で早産と、出産時には身体はボロボロに。産後うつになりかけた時に、行政主催の子育てサロンで仲良くなったママ友に助けられました。
育休も1年で復職。まもなくして今度はご主人が東京に単身赴任となり、名古屋でワンオペでの子育てに。時短勤務で給料は半分ながら、成果は常勤だった時と同じように求められる。さらに子どもが発熱したら、仕事を抜けざるを得ず、「子どもがいる=安い労働力」としか見てもらえてない、【ジェンダーの壁】を強く強く感じたのだそうです。

3、女性や若者が輝く場所を

当時、子育てサロンを利用できるのは、子どもが満1歳になるまで。1歳になったら卒業しなくてはならず、その後親子で過ごす居場所がなかった。そんな中、助けてくれたのがママ友達だった。
親子支援団体「ママスタート・クラブ」を2009年7月に立ち上げ、0〜3歳児のお子さんを持つ親子向けに、コミュ二ティーセンターを借りて、親子ヨガやリトミック教室を開催。イベントも企画すると当時、参加者が1,000人〜2,000人に膨らみ、ボランティアスタッフも100名ほど集まった。みな、名古屋や愛知県に地縁がないママが参加してくれた。
そして、2013年の春に「女性/ママのためのコミュニティスペース“学び舎mom”」を名古屋市新栄にオープンし、女性起業サポートや復業のサポート事業を始めた。そして今は大学生の起業支援も行なっているそうです。
矢上さん自身は、お子さんの小学校入学を機に、埼玉に引っ越し、家族3人の生活を始め、お子さんが中学生になる頃に埼玉に家も建てて、今は、埼玉と起業した会社の事務所がある名古屋を行き来する生活を送っています。


「地元に貢献したい」という想いで、ずっと走り続けている矢上さん。
地元を離れてみて、地元(名古屋・愛知県)が恵まれていたことに気づいた。地元を離れたからこそ、地元のいいところに目を向けてみようと思うようになったそうです。

ただ若者が東京に出て行ってしまう現実。意欲のある女性ほど、東京に出てしまう。
女子大学生からの相談では、「起業をしたいと考えているが、起業したら結婚はできるのか?」と相談を受ける。
また、留学についても相談を受けることもあるが、女性で留学したいと相談してくる方は、だいたいが単身で留学をしている。

なかなか周りには話にくく、理解されない気持ちを矢上さんのところに相談にくることが多いのだそう。

矢上さんが運営する、女性/ママのためのコミュニティスペース“学び舎mom”では、【コミュニティ運営】×【人材育成】×【jobマッチング】を柱に、ママになっても、自分らしさを軸に、能力を生かし、挑戦できる土台作りを一緒に伴奏し続けている。



今回、矢上さんと対談し、私自身も同様に幼少期から感じていた【ジェンダーの壁】の部分ではとても共感しました。
私自身は、祖父母がいる大家族で生まれ育ち、4人兄弟で唯一の女であり、幼少期には、男兄弟には何も言われず、女の私だけが家事を手伝わなくてはならなかったことにいつも疑問を抱いていたし、女の私には「大学進学」という道は、選択肢すらなかった。(それでも、女性でも手に職があった方がいいと介護士の資格が取れる専門学校に行かせてくれましたが)

「なぜ私だけ」と抱くことが多かった幼少期を過ごしたからこそ、自分の道は自分で変えていかなくてはという気持ちが強く芽生えました。
その点を、矢上さんとお話しするなかで、改めて気づくことができました。

また、いくつもの【ジェンダーの壁】にぶつかりながら、悩みながら道を開いてきた矢上さんだからこそ、悩みを抱えた女性や若者の悩みにも寄り添い、助けられた人も多いと思いました。
1,000人規模のイベントを取り仕切ることができる矢上さん。
名古屋や愛知県には、まだまだ地元の中小企業が多いエリア。そして、【ジェンダーの壁】は、まだまだあります。矢上さんこれまでの経験を生かして、志ある女性や若者と企業をつなぎ、双方にとって成長を導き出す役割が矢上さんにはできるのではないかと思いました。

こうして、女性の起業相談を事業として仕事にされている方と、初めてお話させていただきました。私自身、自営業に身をおいていますが、似ている悩みを抱いていたり、新しい気づきの発見ができたり、とても有意義な対談でした。

読んでいただいた方の中で【ジェンダーの壁】について何かの気づきになれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?