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働いている業界が、世界第2位の環境汚染産業でした。

こんにちは
Bioworks 広報の山家(やまか)です。

国連貿易開発会議によると、わたしが働くファッション産業は「世界第2位の環境汚染産業」だそうです。

自分が身を置く業界のことなのに、不都合な事実は知らぬ存ぜぬではあまりにも無責任なので、まずは知ることから始めたいと思います。


ファッション業界が環境汚染産業と呼ばれる『7つの要因』


ファッション産業の『環境汚染』について調べていくと、以下の7つのワードがあがってきました。

■ 大量生産


■ 大量消費

■ 大量廃棄

■ 枯渇資源の使用とCO2排出

■ 水リスクと河川汚染

マイクロプラスチックによる海洋汚染

■ 農薬による土壌汚染


その他にも「労働環境」や「動物愛護」など、様々な課題を抱える産業だということがわかりました。

今回はファッション産業が環境汚染を引き起こす要因と、その課題解決に向けて弊社Bioworksが取り組む事業について紹介したいと思います。

服が新品のまま廃棄されている!?『衣服ロス』


小島ファッションマーケティングの調査によると、2018年の国内のアパレル製品(衣料品)の年間供給量は約29億着

そのうち半数以上の15億着が売れ残り、余剰在庫は保管にコストがかかるため、その多くが新品のまま廃棄されているそうです。

余剰在庫が生まれてしまう背景には、

ファストファッションの台頭によりアパレル市場の価格競争が激化

一着あたりのコスト削減のために大量生産が行われていてる

価格を下げての再流通はブランドイメージの毀損につながる為、メーカーやブランドが再流通に消極的。

などの要因があるようです。

また国内のアパレル製品の98.5%は輸入製品であり、エネルギーを使用し輸送されています。しかしながらそのほとんどが消費者の手に届かず、焼却・埋め立て処分されてしまっているのです。

この課題は『衣服ロス』『ファッションロス』と呼ばれ、アパレル産業における環境課題の大きなテーマにもなっています。

ここでいきなり問題です。

Q. 「生産した服を廃棄してはいけない」という、在庫廃棄に関する法規制に踏み切った世界初の国はどこでしょう?




________ 答え:❶ フランス

フランスでは「衣類廃棄禁止令」が2022年に施行され、違反した業者にはおおよそ200万円ほどの罰金が課せられるようになりました。

他にも「製品の生産背景を消費者に情報提供しなくてはならない」「服や靴を修理すると費用の一部がもどってくる」など具体的な策がすでに施行されています。

ファストファッションの流行とリサイクル


ファストファッション』という言葉を耳にするようになってから、どのくらい経つでしょうか。流行のスタイルを安価で提供するマーケットが成長し、消費者は手軽にトレンドファッションを楽しめるようになりました。

一方その背景で、大量生産、大量消費大量廃棄という課題が浮き彫りになっています。

環境省の2022年の調査によると、日本の衣服消費・利用状況は、1人あたり年間で約18枚購入し、約15枚を廃棄。35枚が着用されずクローゼットに眠っているそう。

年間の廃棄量よりも購入数が上回り、国内における供給数は増加しています。その一方で、衣服1枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模は下降しています。

国内のアパレル市場規模は、バブル期の約15兆円から10兆円に減少する一方、供給量は20億点から40億点と倍増しています。

これは大量生産・大量消費が拡大しているとも言え、衣服のライフサイクル短期化による大量廃棄への流れが懸念されています。

ファッションの短サイクル化は、より多くの服を生み出すことにつながっているのです。


衣服の廃棄方法についてもみていきましょう。

まずは国内におけるリサイクル状況についての問題です。

Q. 日本国内の廃棄された衣服のうち何割が3R(リサイクル・リユース・リペア)されているでしょうか?





________ 答え:❷ 34%

2022年の環境省調べによると、日本における衣類の3R(リユース、リサイクル、リペア)率は34%で、66%が焼却処分か埋め立て処分されています。

これはペットボトルやアルミ缶のリサイクル率約80%と比べるとかなり低い数字です。

衣類のリサイクルは、副資材(ボタン・ファスナーなど)の分別や、2種類以上の繊維が混ざっている混紡繊維の分離が困難とされています。

これらの課題に対して、混紡繊維を分離させる技術開発が国内外で進められています。


2022年3月に欧州委員より発表された『EUテキスタイル戦略』でも、域内で売られる商品は「耐久性が高く、リサイクルが可能で、人権や環境に配慮したものづくりであること」が条件として定められました。

ファッション産業は、リサイクルを見据えた製品作りと回収の仕組みの整備、混紡繊維の分離技術の開発と普及が求められているのです。


水資源枯渇リスクと水質汚染


エレン・マッカーサー財団調べによると、ファッション産業は毎年930億立方メートルの水を使用しているそう。

想像できない単位なのでもう少し身近にすると、、

Tシャツ1枚をつくるのに必要な水の量は2720リットルで、これは1日の平均飲料水を一人あたり約1.5リットルとすると、約5年分の水が使われていることになります。

また世界の工業用水汚染の20%は、繊維の染色と処理に起因してるといわれています。

衣類の染色と仕上げの工程で生じる廃水が、河川を汚染し、地域の人々の飲み水を奪ってしまっているのです。

水資源への悪影響は、生産が行われている地域で真っ先に起こるといわれ、中でも天然繊維である綿花栽培は、水資源の枯渇リスクが高いエリアで作られる割合が、他の農作物の中で最も高いと指摘されています。

オーガニックコットンの積極的な使用が求められていますが、オーガニックコットンの綿花の種は、遺伝子を操作した種より採れる割合が少ないといわれています。

また植えたうちの7~8割しか基準に見合う品質の種が取れないなど、多くの課題が山積しています。

収入増加につながらないことが農家の有機栽培転換への足枷となり、オーガニックコットンは綿花全体の1%に満たない割合となっています。

オーガニックコットン:生産者の労働環境も守りながら、3年以上農薬を使用していない農地で、農薬や化学肥料を使わずに作られた綿。

石油が枯渇してしまう!?


世界的な人口増加にともなって供給量が増えていくとされる合繊繊維(ポリエステルなど)は、枯渇資源である石油の使用や、製造工程でのCO2
排出
が課題となっています。

石油の可採年数は残り53.5年といわれています。

ただしこの年数は、新たな石油が発見されなかったり、石油を掘り出す技術が進歩しなければの話で、地下探査により石油が新たに見つかれば増加し、一定に減少していくものではありません。

しかし新規に発見される石油は条件が悪く、今後はコストが高い石油が市場の中心となると予想され、石油の値段は徐々に上昇するだろうといわれています。

遅かれ早かれ、石油を含む化石燃料依存からの脱却が求められているのです。

またエレンマッカーサー財団の2015年の調査によると、アパレル産業の温室効果ガス(GHG)排出量は合計12億トンのCO2に相当し、国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量となっているそう。

地球温暖化という喫緊の課題に対し、カーボンネガティブ素材の採用や、製造工場のクリーンエネルギー化などの対応が早急に迫られています。

BIoworks|環境課題への取り組み


私たちBioworksが研究開発する新素材PlaX™️は、これらの環境課題に対してさまざまな面からアプローチできる次世代の繊維です。

PlaX™️が環境課題に対して貢献できる素材の特長は以下のとおりです。

・混紡繊維のケミカルリサイクルが可能。
・綿と比較し、製造時の水使用量を90%削減
・原料はサトウキビやトウモロコシなどの植物から作られている。
・石油由来のポリエステルに比べ、CO2排出量を41%削減。
・微生物の働きにより土中で水と二酸化炭素に分解される。

_____ ポリエステルの代替を目指す新素材


PlaX™️はその製法や風合いから、石油由来の合成繊維ポリエステルを代替する素材として世界的な普及を目指しています。

環境負荷低減のポイントとして、ポリエステルに比べPlaX™️は、枯渇資源である石油を使用しないこと、糸製造時までのCO2量排出を41%削減することがあげられます。

これはポリエステル2万トン(ポリエステル年間生産量の0.03%)をPlaX ™️に置き換えた場合、杉の木425万本が1年間で吸収するCO2量(59,477t-CO2e)を削減する換算となります。

ポリエステルの年間生産量の0.03%(2トン)をPlaXに置き換えた場合の、CO2排出削減量。

425万本を植えるとなると、その面積は「山手線の内側」全体が杉の木でいっぱいになります。

スギの⽊1本の占有⾯積は12㎡/本|山手線の内側はおよそ63k㎡


最後に


今回の記事では、ファッション産業が環境負荷をかけている要因と、課題解決に向けての取り組みにふれてみました。

しかし生活者の視点から、普段の暮らしの中でこれらの事実を目の当たりにすることはほとんどありません。

水リスクにいたっては、水資源が豊富な日本で暮らしている私たちにはなかなか「自分ごと」にしづらいのではないでしょうか。

それでもSDGs17の目標で「つくる責任・つかう責任」があるように、企業はこれらの課題に対して、「なぜサステナブルな事業活動に取り組むのか」という背景をしっかりと発信する『知らせる責任』があり、生活者には『知る責任』があるように思います。

個人でできることは限られていますが、自分が関わる業界の課題について少しでも知見を深め、視野を広げられるよう、今後も発信をつづけていけたらと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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