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社会課題×生成AI×デザイン──メンタルヘルス課題を解決する生成AIソリューションは、どうすればデザインできるか?【イベント開催】

こんにちは、BIOTOPEの山田です。

BIOTOPEは共創型戦略デザインファームとしてクライアントの皆さんの「意志ある道をつくり、希望の物語を巡らせる」お手伝いをしていますが、実は社員それぞれのメンバーも自分たちの「意志ある道」としてのパッションプロジェクトをやっていたりします。

そんなわけで、今回は僕のパッションプロジェクトのご紹介です。

なぜこのイベントが始まったか?

皆さんは「今日の日本で最も重要な社会課題は何か?」と聞かれて何を思い浮かべますか?

実は僕自身同じ質問を、僕の母校であるイリノイ工科大学デザインスクールの学長のアニージョさんが2024年3月に来日した際、移動の合間のタクシーのなかで投げかけられました。

2024/3月に来日時に行われたAnijo Mathew氏・佐宗対談。「AIの進化で変わるこれからのデザイナーの役割とは?」【日経デザイン】

改めて聞かれてみると色々と思い浮かんでしまい、「うーん…」と答えに窮してしまいました(頭の中には、少子高齢化から始まり、エネルギーの脱炭素、企業競争力の低下などなど、いろいろな単語がぐるぐると思い浮かびました)。

それでも実は最初に思い浮かんだのは、シンプルに「メンタルヘルス」という言葉でした。

ただ、僕自身心療内科に通った経験がなく自分事のイシューと言えないなかで、ただ単に周囲にメンタルヘルス不調に苦しむ知人がたくさんいる、というだけで、果たしてこんなセンシティブな話題を語る資格があるのだろうか、と思い、言い淀んでしまったのです。

ですが、僕の幼馴染や学生時代の仲間など、メンタルヘルスの不調に苦しむ知人は片手で数えられる人数をはるかに超えていることだけは事実でした。

それでもアニージョ学長は実は学長になる前、僕が留学していた時代のメンターであり、比較的親しく話ができる間柄だったこともあり、思い切って「メンタルヘルス不調だと思う」と返答しました。そして、僕の目から見えていた、

・企業組織内の日々強まる生産性プレッシャーによるバーンアウトの問題
・依然として残るパワハラ・セクハラ等のハラスメント問題
・中高大受験による多大なる教育プレッシャー
・心の病をオープンに語れない社会的タブー・スティグマの問題
・結果としての自殺の問題

などなどを説明しました。

アニージョ学長は興味深そうにうなづきながら、「もし生成AIが社会に実装されると、それらの問題は悪化すると思う?」と質問を重ねます。

僕はここはあまり迷いがなく、「Yes」と答えました。

コロナ後にリモートワーク環境になり、デジタル化する働き方が当たり前になり、コロナ前後で僕らの働き方と生産性が段違いに上がる中で、どんどん生身のヒトのキャパシティリソースにレバレッジがかかり、どんどん疲れが溜まっていく悪循環が脳裏に浮かび、その頃ちょうど使い始めていたChat-GPTやClaudeの便利さが同じようなフレームで捉えられたからでした。

アニージョさんは「そうだよねぇ」と言い、こう続けました。

「この時代を生きる僕たち(広義のデザイナー)は、この技術(生成AI)を使っていかに社会の課題を解決したり、緩和できたりするか、そのためにデザインができることは何か、考えていかないといけないと思うんだ。

もっと言えば、かつては馬蹄職人が車の登場で、タイポグラファーがPDFの登場で、それぞれ職を奪われたように、生成AIがアイディエーションやプロトタイプができるようになる時代において、生成AIはデザインのあり方を根底から考え直させる存在だとも思う。

だからこそ、広義のデザイナーが、どのようにデザインとして活用できるのかを考えることはデザインコミュニティにとってのビッグチャレンジであり、それが私たちID(イリノイ工科大学デザインスクール)の最近の最大のテーマと言ってもいい」

そして彼は彼の肝入りの野心的な企画、SHAPESHIFTグローバルイベントシリーズについて語り出しました。

それは、「生成AI」と「デザイン」の掛け算の力を使って、世界各地に存在する社会課題を解決する(広義の)デザイナーたちがチャレンジをしてみたらどんな知が生まれるか、そしてその知を集め、生成AI時代のデザインプロセスとしてまとめたら何が起こるか、という趣旨の企画でした。

「今、インドではガバナンス、ニュージーランドでは原住民との融和問題、ニューヨークではメディアの責任というテーマで生成AI x デザインでイベント・ワークショップをやろうとしているんだ。東京でもこの企画で何が生まれるかやってみてくれないか? もちろん課題は、メンタルヘルスで ──」

それが僕が今やっているパッションプロジェクトである「社会課題 x 生成AI x デザイン:メンタルヘルス課題を解決する生成AIソリューションを、どうすればデザインできるか?」というイベント・ワークショップに携わることになるきっかけでした。

3つのこだわり:システムデザイン、共創プロセス、集合知の力

イリノイ工科大学デザインスクールの卒業生だったBIOTOPEのCEO佐宗と僕の二人で、どのような形でこの議論を組み立てると意義深いかを考え始めたのが24年7月のことでした。

僕たちはこのイベントを開くにあたって、いくつかのこだわりを持って進めてきました。

  1. シスミックデザインの力を借りて、まずはメンタルヘルスの課題を構造として掴む

  2. 「社会環境を共有財の視点でリデザインする」パーパスを掲げる共創プラットフォーム、日建設計PYNTと共創することで、共的にこのテーマに取り組む

  3. わからないことだらけだからこそ、助けてもらう

最初の「シスミックデザインの力を借りて、まずはメンタルヘルスの課題を構造として掴む」は、僕自身がイリノイ工科大学デザインスクールで学んだ手法をフル活用して、個人の問題ではなく社会システムの欠陥・故障としての病理としてメンタルヘルスを捉えたいと考えたことです。そうすることで、1:1対応で生成AIのソリューションを一足飛びに考えるのではなく、より再現性とインパクトの大きなソリューションの議論が可能になるのではないかと仮説しました。

具体的には、有志メンバーで集い、10/4の本イベントの前にプレシステム分析ワークショップを行いました。そこで、システミックデザインの手法で、メンタルヘルス不調に苦しむ患者さんの仮想のケーススタディを出発点として、その情報をコアメンバーで分析・統合し、システムダイナミックスマップ(SDM)を作成していきました。

更にそのSDMの議論プロセスに、今回イベントでも基調講演をご依頼した「メンタルクエスト」等の本の著者で心療内科医でもある鈴木裕介先生にスプリント形式でその場でコメントをしていただき、メンタルヘルスの不調とトラウマの関係性という視座をいただきました。

拡大して見たい方はこちらへ。PDFあり

そうしてできたのが上のSDMです。このプレワークショップの最大の学びは、トラウマとメンタルヘルスの再生産がなされる悪循環を中心として捉え、そもそものトラウマの発生源と、社会としてのトラウマの癒しの仕組みの不在・喪失、という2つのレバレッジポイント(介入点)を見出すことができたことです。イベントではこの学びをベースに議論を進めて行こうと思っています。

こだわり②は「社会環境を共有財の視点でリデザインする」パーパスを掲げる共創プラットフォーム、日建設計PYNTと共創することで、共的にこのテーマに取り組むことです。

例えば、上のSDMづくりのプロセスで決定的に重要になったのが、メンタルヘルス患者の方の仮想ケーススタディなのですが、それはPYNTのメンバーであるメンタルヘルスNPOのCOMHCaさんにご協力いただきました。さらには、トラウマの視座を与えてくれた鈴木先生もPYNTを通じて巡り合うことができました。最後に、システム図へと構造化していくところでは、やはりPYNTメンバーの図解総研の沖山さんも急遽手弁当でサポートに入ってくれました。

PYNTで開催した本イベントの準備のためのプレワークショップ参加メンバー

これは、BIOTOPEだけで活動しても絶対にできないことです。人材と想い、そしてノウハウが集まっている場であるPYNTだからこそできた共創プロセスでした。そして、イベントには、まちや都市のデザイン、建築設計の専門家など、アイデアをさらに大きなインパクトに繋げるレバレッジを持つ皆さんが参加し議論に加わってくださる予定です。

まちの未来に新しい選択肢をつくる共創プラットフォーム:PYNT

こだわり③の「わからないことだらけだからこそ、助けてもらう」は、実は懺悔のような話です。実は僕自身、生成AIはいわゆる一般ユーザーレベルで、ほとんど知見がありません。もっと言えば、実はメンタルヘルスの知識もこのプロジェクトを始めるまではほぼ皆無と言って良い状態でした。

そんな僕がこのイベントをアレンジすることはこの記事を書いている今も気後れする気持ちがないと言ったら嘘になります。ですが、場を開くこと、そして、「どうしたら良いかわからないので皆さんに教えてもらいたい」と質問することは可能です。

複雑化する社会課題に対して、全ての解を持っている人はおそらく世界中どこを探してもいないでしょう。だからこそ、僕のような無知な人間が、わからないなりに少しのパッションとわくわくを頼りに手探りで行動していくことで、一人では到底埋められないたくさんのブラインドスポット(盲点)を、共的に、皆で、さまざまなリソースを持ち寄ることで埋めていき、結果として新しい答えを、知を、生み出せるのではないか、と密かに期待したりしています(そこにはどんなものが生まれるのかわからない、セレンデピティの楽しみもある。しかも話題は広大無辺な可能性を秘める生成AI技術 x デザインの話でもあり)。

そんなスタイルがある意味では、今の時代らしい、集合知の塊でもある生成AIの時代らしい、アプローチなのかもしれない、とも思います。

イベントでお会いしましょう

というわけで、10/4(金)に皆さんで「メンタルヘルス」「生成AI」そして「デザイン」について話をする場を開かせていただきました。

テーマは「メンタルヘルス課題を解決する生成AIソリューションを、どうすればデザインできるか?」です。

③の通り、実はまだまだ「わからないことだらけ」です。ぜひ皆さんの知見を共有しあい、一緒に学び合いたいと考えています。少しでもご興味を持っていただいた方、Peatixをぜひ覗いてみてください。そしてもし可能であれば、当日お話をできればと思います。


イリノイ工科大学デザインスクール主催:メンタルヘルス課題を解決する生成AIソリューションをどうすればデザインできるか?

日時:2024年10月4日 13:00-17:30
場所:日建設計東京本社ビル3階PYNT(東京都千代区田飯田橋2-18-3)
定員:50名
参加費:5000円
申し込み:下記Peatixより


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