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『地球星人』村田沙耶香著

何かの契約の何かの返礼なのか、我が家に「QUOカード 1万円分」が届いた。

私は契約関係が苦手でなんなのかよくわかんなかったが、来たものはありがたく使うことにした。
調べてみると、QUOカードが使えるのはコンビニと書店、あとは飲食店がいくつか。
スーパーとかは使えないらしい。
ドラッグストアはマツキヨだけ使えるそうだった。

まず本を数冊買って、残りはマツキヨで使い果たした。
調子に乗って値段も見ずに、ちょっと良いシャンプーとかポンポン買ったらマツキヨだけでなんと1万円超え…。
現金で4千円くらい払った。
ただただ後悔した。


今日はその謎のQUOカードで買った、
村田沙耶香さんの「地球星人」についてレビューします🌍😂

①あらすじ

恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生の頃、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた二人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて……。芥川賞受賞作『コンビニ人間』を超える驚愕をもたらす衝撃的傑作。
(新潮文庫本裏表紙より)

主人公の奈月は幼い頃から、自分を「ポハピピンポボピア星人」だと思っており、
いつか母星へ帰れるのだと信じていた。
見た目は真っ白なハリネズミのぬいぐるみである、「ピュート」というポハピピンポボピア星の使者もいつも一緒だった。

物語のはじめ、奈月の子供時代が子供目線で語られる。
冒頭はおばあちゃんちがある、自然いっぱいの田舎の原風景を思い起こさせる。

魔法少女も宇宙人というのも、子供の妄想みたいだなあ。

なんて軽く見ているとかなり痛い目をみる作品だった。
「常識」とか「共通観念」が覆されるような
衝撃作。

②感想

小学生の奈月は母と姉に虐げられている存在で、家庭内ではモラハラ発言ばかり浴びせられている。
通っている塾では、大学生の先生に猥褻行為を強いられ、
それでも「大人の言うことは正しいはずだから、私がおかしい」という考えが奈月にはあった。
この辛い現実から逃げるために、自分に魔法をかけ続けていたのが辛かった。

唯一、奈月が心を許していたのが従兄弟の由宇だった。
毎年の夏休みにしか会えないが、二人は精神的にお互いを支え合う存在だった。
夫婦となる約束をしたあと、祖父の墓石の前で体を重ねる。

私が従順でないことを大人たちが嘆いている。そのことが滑稽だった。
大人は子供を性欲処理に使うのに、子供の意思でセックスをしたら馬鹿みたいに取り乱している。笑えて仕方なかった。お前たちなんて、世界の道具のくせに。私の子宮は今この瞬間、私のためだけにある。大人に殺されるまでは、私の身体は私のものなのだった。

自分を性処理に使う大人と、子供のセックスを知って戸惑う大人。
こんな世界で幼少期を過ごしたら何も信じられない。彼女の生きる環境を思うと読み進めるのも苦しかった。

奈月はこの頃から、
社会を「工場」、家を「巣」、子供を産むことを「繁殖」と呼んでいた。

大人になり、同じ考えをもつ智臣くんと結婚するが、自らを、地球星人に「ちゃんと洗脳してもらえなかった人」であり、ポハピピンポボピア星人であるとして生きていた。

恋をする仕組みについても、こう言っている。

世界は恋をするシステムになっている。恋ができない人間は、恋に近い行為をやらされるシステムになっている。システムが先なのか、恋が先なのか、私にはわからなかった。地球星人が、繁殖するためにこの仕組みを作り上げたのだろう、ということだけは理解できた。

今まで信じていたこととはなんだろうと考えさせられる。

私の価値観も、恋する気持ちも、社会による洗脳なのだろうか。

たしかに奈月の言う通り、地球星人が一人前として認められるには2つ。

①「工場」で働き「工場」の歯車となる
②「繁殖」をし地球星人を生産する

これをしない大人は「洗脳」されるために追手(家族など)が来る。

後半になってくると地球星人としての営みが気持ち悪いもののように思える。
なぜ、女は「結婚し、セックスし、子供を産まなければならない」のか。
なぜこれをしない人はおかしいと言われるのか。

通勤の電車に乗りながら、あー私も地球星人として工場で働いてんな、とか、イチャイチャしているカップルを横目に、生産的だな、とか思うようになっていて、
知らぬ間に「宇宙人の目」を身につけていた。

ポハピピンポボピア星人は伝染により繁殖するらしいから、伝染したかもとか思っていたのも束の間。

ラスト、奈月と由宇と智臣くんは3人でポハピピンポボピア星人として生きるのだが、
3人の「合理的」な生活にはついていけなかった…。
地球星人を馬鹿にして合理性を求めた結果、原始的すぎる生活に回帰したのは、なんだか皮肉だった。

ただただ暴力的なラストから解放された後、決して良い読後感とは言えないものの、初めての読書体験ができたような感動はあった。かも。

③まとめ

村田沙耶香さんの作品は今回が初めてだった。
性や生殖に関しての作品が多いそうで、表現の仕方は暴力的だが、捉え方は的確だし面白かった。
私は他の作品も読んでみたい。

ただ激しく人を選ぶので、決して人にお勧めできるような作品ではなかった。
だけど、新しい読書体験ができるはずなので、個人的にはオススメです…?🤣🌍

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