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ひよこでもわかる男着物入門

はじめに

 本記事は近年絶滅しかけているのか、増加しているのかわからない着物男子のために、着物歴10年以上の筆者の着物の着方をまとめた入門記事である。
 着物は高級で特に男着物は手を出しにくいというイメージがあるかもしれない。しかし最小限のものを最低限の出費で入手するなら5000円でおつりをもらって始めることも可能である。
 また着物は寒い、苦しいというイメージもあるだろうから、寒さ対策や苦しくない着付けの方法についても記載した。
 なお本記事の記述は個人的体験をもとに書いているので少しカジュアルな着こなしにはなるかもしれないが、ぜひ男子諸君に着物の魅力を知ってほしい。着物男子は希少動物だから女子にモテるぞ!(多分)


着物ルーキー編

 まだ着物や関連用品を1つももっていないという方は、最低限それをそろえることから初めていただきたい。著者の推奨するやり方であれば5000円もかからないから安心してほしい。
 最低限必要なのはまず着物本体いわゆる長着か浴衣だ。そしてワンタッチ帯。これだけあれば着物は着れる。
 ワンタッチ帯が嫌な方はコーリンベルト(きものベルト)と角帯を用意してほしい。因みに浴衣と単衣と呼ばれる長着は主に夏にしか着ないため、それ以外の季節には袷(あわせ)と呼ばれる生地が二重になった長着を購入することをおすすめする。
 少なくともこれらだけならばAmazonや楽天市場、ヤフオク、骨董市、リサイクル着物店などを駆使すれば格安で入手できる。

 さてここではコーリンベルトと角帯を使った着物の着付けについて解説しよう。まずは浴衣の場合は素肌に着ても涼しいが、化繊の長着などは素肌に着るとあまり気持ちよくない。
 なので下着(パンツ)は普通に履こう。もし手持ちにあればロングパンツやステテコ、レギンスなど丈の長い下着がおすすめだ。
 上は普通にTシャツで構わないが、おしゃれをしたいなら秋冬はタートルネックのシャツも良い。組み合わせを上手くやるとなんとなくSTAR WARSのジェダイっぽくなる。
 あとは長着を羽織ってから腕を入れ、右を先に身体に巻き付けてから左を巻き付け、コーリンベルトで固定する。着物ルーキーは上の方で固定しがちだが、もっとも苦しくなく着崩れない位置は腰骨のあたりか腰骨のやや下あたりで固定する方法だ。
 コーリンベルトならこの位置でも着崩れしにくいので安心である。あとはコーリンベルトが隠れるように角帯を巻き付け、好きな締め方をすればいいし、ワンタッチ帯を使ってもよい。

 履き物はサンダルでも靴でもブーツでもいい。ありものをとりあえず履いておこう。ただブーツは素材や形状によっては長着の裾を痛める危険性があるので、高価な長着を着用する場合は要注意、である。


着物ビギナー、おしゃれに目覚める

 さて、一応前章で最低限着物を着れるようになる方法をお伝えした。次に家にあるものでさらにおしゃれに着物を着るビギナーおしゃれさんを目指してみよう。
 前章では肌着や下着の上から直接長着を着るようにいったが、肌着の上に洋服を着ることで着物の襟元からその洋服が見えておしゃれになる。またその他の小物を合わせることで寒さ対策とおしゃれ対策の両方が可能だ。
 しかしこうした着物の着方を邪道とする着物警察もいるので注意してほしい。


タートルネックセーター

 前章でタートルネックシャツを着る話をしたが、より寒い日にはタートルネックセーターがあるといい。ジェダイっぽさはそのままに結構温かい。

マフラー

 これは大抵の人がもっているだろうし安価での入手も簡単だろう。タートルネックと合わせれば結構な寒さ対策になる。

ストール

 最近は男性も使うようになったからもっている人も多いだろう。なければユニクロなどでも簡単に入手できる。軽い防寒になっておすすめだ。

ワイシャツまたは詰襟シャツ

 普段スーツを着る方はワイシャツを何枚ももっているだろう。それを肌着の上から着て着物を着ると、なんとなくキリッとして見える。
 実際お寺などで働いている人の中には着物の下にワイシャツを着てネクタイを着けていたりする。着物にワイシャツとネクタイ、革靴でちょっとしたおしゃれの完成だ。
 詰襟シャツは、以前は入手が難しかったが最近はあちこちで販売しているのを見かける。これは一枚あると後に語る書生スタイルが可能になる優れものだ。洋服にも合うのであって困るものではないだろう。

帽子

 筆者も普段ハットやキャスケット帽を着物のときに着用するが、これでぐんとおしゃれさがあがる。夏場は日除けになるし、冬場は温かい。おすすめだ。ただしこれも着物警察の中には嫌うものがいる。


着物中級者になるぞ!

 ここまではできるだけ既にお持ちの可能性が高いものを利用した着付けやおしゃれを解説してきた。ただ少し着物に慣れて来て、もうすこしお金をかけてみてもいいかなと思えたなら、次の順番に着物グッズを増やしていくと良い。

羽織&羽織紐

 まずはなにより防寒をしないと冬が辛いので、まずはスーツのジャケットにあたる羽織と、それを止める羽織紐をゲットしよう。2つ合わせて2000円くらいで入手可能だ。
 羽織は長着の上に羽織って長着の袖をしっかり羽織の袖に入れる。その後襟を折り返して羽織紐を乳(ちと読む)に引っ掻けるだけだ。簡単だが、これにマフラーだけでも寒くない地域なら問題ない。
 なお羽織紐はふさふさが付いたものから石で出来たものまでいろいろあるが、普段着ならお好みや予算にあわせていただいてかまわない。


襦袢

 次にほしいのは襦袢だ。落語家さんとかの着物の襟元を見ると、長着の下になにかを着ていることがちらりと見られるだろう。これは半襟と呼ばれるものが見えているのだ。半襟は長襦袢、半襦袢、半襟付き肌襦袢、襦袢シャツなどについている。
 長襦袢は長着よりやや短いが足下まで生地があり、半襦袢はその半分で上半身までしかない。そしてどちらも肌着の上から着用する。半襟付き肌襦袢は肌着なしで着用できるのがメリットとなる。襦袢シャツも肌着不要でTシャツのように着れるが半襟の位置調整が難しいので長着の襟元から綺麗に半襟が見えないリスクがある。

 上記のことからビギナーから中級者を目指す段階でのおすすめは、半襦袢か半襟付き肌襦袢だ。とくに入手しやすいのは半襦袢で、1000円くらいで買える。
 また2個目のコーリンベルトがあると着付けがしやすい。まず肌着の上から半襦袢を長着のように着用し、コーリンベルトで固定する。この際半襟が首にしっかり密着し、少し苦しいくらいにすると良い。
 あとは前述のように長着と羽織を着用すれば落語家さんや七五三で旦那さんが着る着物くらいにはなる。ただ初心者は半襟が着崩れてカッコ悪くなりがちなので練習が必要である。

 半襟をきれいに魅せられるようになれば君も中級者だ!

履き物と足袋

 最後は足下だが、まずは履き物を選ぼう。履き物は少しかかとや小指が出るくらいがちょうどよく、初心者が歩きやすいのは雪駄や右近の下駄である。
 ただし雪駄は雨に弱いので注意が必要だ。雨対策に関しては別途記載するが、下駄は比較的雨に強いとされている。
 なお雪駄は通販などでも購入できるが、足に合わせて細かく調整してくれる下駄屋で購入するとなおよい。調べてみるとあちこちに老舗があり、知っている範囲では品川の店を行きつけにしている。
 因みに通販もあるのでおすすめだ。

 雪駄をはじめ履き物は裸足でも履けるが、慣れるまでは痛みを伴うことがあるので足袋があるとなお良い。足袋は足袋ソックスで代用してもいい。
 いわゆる普通の足袋をということなら白足袋が一番安価に入手できるが、汚れやすく、また「着物警察」が妙なこだわりを振りかざしてくるリスクがある。
 なので本格的な足袋を購入する場合は色足袋(黒や紺など)や柄足袋がおすすめだ。ただし色足袋や柄足袋はやや高いものが多い。筆者は少しでも安くするために骨董市などのイベントで安い新古品を買いだめしている。

 ここまでそろえればいっぱしの着物ユーザーを名乗れるだろう。だが着物おしゃれ道に終わりはない。次章ではさらに上級者を目指す場合について解説する。


目指せ上級者! 着物ファッションの本気

 前章までで普通に着物を着こなせるようになったわけだが、さらなるおしゃれを目指したい人もいるだろう。ここではそんな向上心旺盛な君のために上級者を目指すためのアイテムを紹介する。次のアイテムを入手することで自分なりの着物スタイルを確立していければ幸いである。

 羽織と長着に袴を追加すると羽織袴となって着物の格式が少し上がる。また羽織を着ないで袴だけを履けばお侍さんだ。袴も中古なら1000円くらいから試すことができる。
 因みに袴には行灯と馬乗りの二種類がある。行灯はスカートタイプなのでトイレにいきやすいというメリットがあるが、着物ユーザーの多くは馬乗りを好む。
 やはり足さばきに差が出るようだ。因みに馬乗りはズボンのように二股に別れている袴なのだが、ズボンのように簡単にトイレにいけるわけではない。
 そのため馬乗り袴のときのトイレは我慢すべしというつわものもいる。ただ筆者の経験上トイレはできるので教えておく。

 まず小をする場合は、袴の片足をまくりあげて股間を露出することで排泄が可能である。

 大の場合は2パターンあり、股の分かれている部分が浅い場合は片方の穴に両足を押し込み、まくりあげればお尻が露出され排泄可能だ。
 しかし股間すれすれまで分かれ目が来てしまっている場合はこの方法は使えない。
 あとの着付けでも説明するが袴は前と後で2回縛ることになる。この内前で縛っている紐をほどくとお尻が露出されるので、あとは着物をまくりあげて下着を下げれば座って排泄可能である。

 さて馬乗り袴の着付けについて解説しよう。まずサイズがあったものを選ぶのが大事だが、一応多少の大小ならカバーできる。
 長着の着付けまで終わったらズボンを履くように袴に両足を入れ、そのまま袴の前の部分を持ち上げよう。この持ち上げる目安は帯が隠れる具合、または帯が少し見えるくらいなど各ユーザーによって好みがあるようだが、歩きやすさを優先するなら足首が少し見えるか見えないかまで持ち上げると良い。
 あとは左右の紐を帯の下に巻き付けるようにしてから背中側で結んで固定する。結び方は蝶結びや片蝶結びで良い。

 続けて背板を帯より少し上くらいまで持ち上げて、後に余分な空間ができないようにする。持ち上がったら左右の紐を前に回し、背中で結んでいる紐に絡ませるようにしてから結びつける。結び方は適当でかまわない。余った紐は適当にからげておしまいだ。

 これはお茶席での袴の着装の仕方を手本に筆者がやりやすいように改良したものなので、あくまでも普段着用の袴の着装と考えてほしい。
 なので公式な儀式などに出る場合は別途十文字結びが必要なのだが今回は省略する。また、一つ注意してほしいのが、階段を上り下りする際には袴を手で軽く持ち上げて裾を上げた方がよいということだ。
 上りは前側を持ち上げ、下りは後ろ側を持ち上げるようにするのである。そのようにしないと、長着よりも裾を引きずりやすかったり、裾を踏んでつまづいたりする恐れがあるため気を付けてほしい。

書生スタイル

 袴をマスターすると書生スタイルに挑戦することができる。書生スタイルは襦袢の代わりに詰襟シャツ(書生シャツ)を着用して、袴を着けることで完成する。
 一部でコスプレ呼ばわりされることがあるが、胸ポケットにスマホを入れたり、着崩れしにくかったりと多くのメリットがある。襦袢を使わないのでコーリンベルトも1本でかまわない。

コート

 基本的には羽織とマフラーだけでも防寒はできるが、コートがあるとより上級者感が出る。おすすめはやはりトンビコートやマントだ。これらはどちらもマントタイプなので男の子の夢を叶えてくれる。この他着物に合わせた角袖コートもある。
 ただやや高価なので購入は慎重に。またインターネットのショッピングサイト以外ではあまり入手できないが、上野や浅草なら入手できる場合がある。

雨対策

 雨の日は着物を着ないのも一手だが、雨の日の着物散歩も乙なものである。とりあえず傘はありもので済ますとして、雨用のコートがあると着物を大分ガードできる。
 雨用コートが高くて入手しにくい場合には、100円ショップでも手にはいるレインポンチョが役立つ。履き物はレインブーツやサンダルでもよいが、Amazonなら4000円くらいで雨用雪駄も購入できる。

 突然の雨対策には100円ショップ(セリア)で足首までの雨カバーを購入できる。こいつは履き物を覆ってカバーしてくれるので鞄に忍ばせて置けば安全だ。

おわりに

 いかがだっただろうか。本記事は着物に興味はあるけど敷居が高く感じている方が、まず何からどのくらいの予算で買い揃えていけば自身の理想とする着物ライフを満喫できるかを前提にいろいろな着こなし方を提案してきた。
 その分、いわゆる着付けの仕方に関しては最小限にとどめた。これは着付けの仕方に関しては活字よりも動画で視覚的に観た方が分かりやすく、すでにYouTubeやインターネット上に溢れているからだ。
 もし本記事を読んで、わからないことや相談したいことがあれば筆者に連絡していただければと思う。
 それではよい着物ライフを!

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