【映画感想】『オッペンハイマー』~ノーランによる査問会映画、誕生~

 クリストファー・ノーランの最新作『オッペンハイマー』を観た。本年度のアカデミー賞最多部門ノミネート&受賞、ということで知っている人も多いだろう。

 ノーランといえば、今や押しも押されぬハリウッドの巨匠監督だ。そして、そんなノーランが今回、テーマに選んだのが、原子爆弾開発の中心人物・理論物理学者・ロバート・オッペンハイマーだ。

 公開前から随分と話題をさらっていた本作だが、この映画を観た感想を一言で表すと「査問会映画」である。

 査問会。非公式な場における、取り調べと裁判を合わせたようなこの存在は、多くの映画やドラマで描かれてきた。

 著名なSF作家であり映画評論家でもあった伊藤計劃氏は「査問会フェチ」なる用語について、次のように解説している。

「査問会フェチ」とは何か。それは会議室で査問と称して人を裁く場面に興奮をおぼえる性癖である。それが濡れ衣だったり組織内権力闘争の結果であったりすると、完璧である。公権力による司法裁判ではないところがポイントで、これは失敗した刑事、あるいは濡れ衣を着せられた刑事が、内務調査班の訊問を受けたりする場面や、民間会社内での権力争いの過程として行われる「ヒアリング」も含まれる。突然入ってきた使者による「耳打ち」などあろうものなら大興奮であり、その結果査問が「休会」などしようものならもう辛抱たまらない。

魔法少女小夜 - 伊藤計劃:第弐位相 (hatenadiary.org)


 オッペンハイマーへの聴聞会を軸に展開するこの映画は、そんな「査問会フェチ」な人たちにはたまらない作品だろう。

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