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人生はすべてネタである

外食が大好きだ。

朝、コーヒーとサンドイッチを食べながらボーッとできるカフェも、ランチについ立ち寄ってしまうラーメン屋さんも、そしてなにより、季節ごとのおつまみを食べながらお酒を飲む居酒屋さんも。

けれど、このところ私は、自分で料理をつくることが増えている。

理由は簡単だ。お金がないのである。

きょうのお昼は「かき玉にゅうめん」だった。材料は、そうめんとめんつゆ、玉子と刻みネギ。冷蔵庫の中に3個だけ残っていたプチトマト。おそらく、材料費に100円もかかっていないと思う。


コロナ禍になってから、飲食店は客足が遠のいているから大変だろうという想いと、大好きなお店が潰れてしまっては困るという想いで、外食をし続けてきた。

外出制限が緩和された6月頃からほぼ毎日、外食生活は続いた。当初は少し貯えもあったし、給付金ももらった。細々ながら仕事のご依頼もいただいていたから、「このままなんとかなるだろう」と思っていた。

ところが、なんともならなくなった。

9月の仕事は、たった1件。1件でもあればありがたいのだが、収入は激減である。

このままの状態が続けば、私は2021年を迎えることができない。

「どうしよう……」

悲しくなって、しばらく落ち込んでいた。食欲がなくなって、大好きな外食にも行けなかった。


そんなとき、とある作家さんの言葉を思い出した。

その作家さんは、主に恋愛小説を書く女性で、ご自身も恋多き方である。時折り、ラジオ番組に出演されるのだが、声にもツヤがあってとても素敵な方だ。

その作家さんが、数年前、ラジオ番組の中でご自身の近況を話したときに、こんなことを仰っていた。

「私、つい先日、お付き合いしていた方とお別れしてしまったんです……。とっても悲しくてツラかったんですけど、それも自分の作品のネタになってしまう。小説家って因果な商売ですよね」

当時、私はすでにフリーのライターだったが、ビジネス雑誌の記事をメインに仕事をしていた。自分が書く文章はほとんどが誰かを取材した内容で、自分のことをネタに書くことなどなかった。

だから、その作家さんの言葉を聞いても「ふ~ん……。文章を書くという意味ではおなじ仕事だけど、小説家の方は自分のプライベートもネタにするって、大変なんだなぁ」と、完全に他人事であった。

その後にちょっとしたことがきっかけで、私は積極的にブログやnoteを書くようになった。ブログやnoteには、自分の身に起きたことをネタにすることが多い。過去に経験した仕事のこと、失業したときのこと、ライターになった経緯……。

恋愛や失恋のことも書いたから、あの作家さんの気持ちがほんの少し、わかったような気がした。とはいえ、私のブログやnoteは、お金になっていないのだが。

そうやって自分の経験をネタにして、積極的にブログやnoteを書いていたのは、コロナ禍になる前のことである。


コロナ禍になって、世の中の状況が一変した。

時をおなじくして、私の身体に異変が(詳細はnote「腐ったおっぱい」参照)起きた。そして、私はブログやnoteを書けなくなった……。

数か月間、仕事以外で「書く」ということがなかった時期を経て、8月から私は再びブログやnoteを書きはじめた。コロナ禍で、自分の身になにが起こったのか記録しておきたいと思った。

コロナの影響で仕事が減ったから、時間はたっぷりある。でも「書けない」と思う日もある。書けないと思う日はどんな日かというと、自分が落ち込んだ日だ、ということに気がついた。

いや、待てよ……。

あの作家さんの言葉を借りれば「とっても悲しくてツラかったんですけど、それも自分の作品のネタ」なのである。それを、私は思い出した。

だから今、こうしてnoteを書いている。

「お金がない」ということも、立派なネタなのである。書く仕事とは、まことに因果な商売なのだ。


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