自分へ「老害」?~ 不確実性を妨げる「成功体験」の落とし穴
先月、ミラツクの「反集中」の対談イベントに参加したときのこと。
参加者との対話を通じて、今の自分が陥っている「罠」に気づいた。
友人に共有すると、とくに同年代から共感を得られたので、整理したい。
ちなみに、「反集中」とは、NPO法人ミラツクが昨年末に出版した本のタイトル
経験を積むことでの「意識」の変化
2020年末にウガンダでの事業を手放し、次の事業の探索をして2年強。
異なる分野で、調査や事業の立ち上げに参加し、取り組んでいる。
「社会をより良い方向に変える」が起業当初からの興味の対象。
根本は変わっていないけど、今と昔では興味を持てる、ワクワクするアイデアが異なる。
その違いは、業種や業界、解決する課題のテーマという水平方向の違いもあるのだが、
それ以上に、垂直方向の違い(事業そのものより生態系や社会に及ぼす変化みたいな)も大きい。
水平方向とは、業界や業種、社会課題のテーマなので、時代の潮流によって変わっていくイメージ。
時代も変われば、社会情勢も変わり、人々の関心も、そして私個人の関心も移り替わる。
特に私自身は「人生かけて一つの分野を突き詰めたい」タイプではないので、毎回テーマが異なる。
ウガンダにいた7年間でも、前半は社会人の人材育成の事業、後半は物流・モビリティの事業。ここ1年半は、廃棄物が主なテーマ。
水平方向の変化は良くあること。
垂直方向の変化とは、世の中へ伝播する範囲や難易度の話なのかもしれない。
5年前なら興味をもったタイプの課題でも、
今は「それって、自分が情熱をを注いでまで達成したいことなのか?」「全く業界もテーマも違うが、既視感がある」と頭によぎり、
選択肢から落とすことがある。
「成功体験」が助ける無駄の排除
何かを始めれば課題はつきもの。
何度か似たような経験をすると、「過去の経験」をベースに解決していく。
特に、過去の「成功体験」は、自身に自信をもたらす。
年齢を重ねて、経験値が増えると、上手くやれることは増えた。落とし穴を予見できる頻度が上がるので、手戻り少なく、効率的に進めていける。
「事業立ち上げ」も何度か経験すると、業界が違っても、市場が違っても、国が違っても、ビジネスモデルが違っても、参考にできる経験は多い。
共通項が多そうな課題としては、
初期の自分の仮説に固執して、中立な立場でユーザーの生の声が入ってこない。
逆に仮説をコロコロ変えすぎて、始まらない。
十分なユーザー調査・市場調査を行わずに、プロダクト・サービスを始めてしまい、自分の妄想で突き進み、ピボット出来ない。
逆に調査ばかりやって、実プロダクトでお客さんの声を聞かずに、同じ位置でグルグル回っている。(螺旋を登っていかない)
初期の資本政策、座組みを安易に考えて、取り返しがつかない
逆に資金調達に時間ばかりかけて、事業活動に時間を使えず、投資家受けするキレイな資料が積み重なり、中身がない。
労務、税務、法務、会計手続きなどアドミンを甘く見て、エイやで起ち上げ、後から問題続出。後手後手の対応で、せっかくの勝機を逃す。
(特に途上国で)行政機関との事前のコミュニケーションを怠り、相手にカモにされる。
などなど
何度か経験すると、事前に「落とし穴」を察知ができる。
VCなどの投資家が、シリアルアントレプレナー(複数の起業経験をしている人)を評価する理由もここにある。
起こりうる問題や課題をより早く認識できるようになり、より的確な判断を下すことがでる。また、過去の経験から得たノウハウや知識を生かすことができ、より効率的に仕事を進めることがきる。
これが経験値のポジティブな面だ。
特に、スキルや知識、進め方(プロセス)面では有用だ。
アンラーニングの重要性
一方、遠回りや後戻りが減ることで、「不確実性」と出会う機会も減っている。
一見、無駄に見える「遠回り」が、後に大きな役割を果たす。
特に、未知の領域を探索する時に、試行錯誤は必須。
その時は「遠回りだった」と思えても、後から「あれが無ければ生まれなかった」という経験は多い。
その際、アンラーニングを語る中で、「スキル・プロセス・知識」と「知恵・マインドセット」は分けて考えたい。
特に気を付けたいのは後者で、上記の「不確実性」の話は後者だ。
「スキル・プロセス・知識」のアンラーニングは比較的容易だ。「形式知」ともいえる。
世の中、ちゃんと目を開いてキャッチアップしていれば、どんどん新しい技術、ツール、手順が出てくる。
日常業務に追われてないように余白を作り、新しいものを試していけば、自然とアップデートされる。
今、頭に浮かんだ範囲でも、1年前と比較して、仕事のやり方は変わっている。
資料作りも、パワポからCanvaやMiroを使う機会が増えた
アイデアブレストのたたき台も、ChatGPTを上手く使えば観点出しには有効だ
私のように非エンジニアでも、簡単なプログラムなら、ChatGPTで書いてくれる
1-2時間の外国語のカンファレンスも集中して全て聞かなくても、スマホで音声入力(Group Transcribeなど)して、Chat GPTで要約して、DeepLで和訳すれば良い。
書籍を纏める際も、電子書籍の画面スクショをOCR化してテキスト化する
ローカル言語のユーザーインタビューをする際に、オンラインでインタビューとして、通訳(英↔ローカル言語)にオンラインで入ってもらい、Google Doc上にインタビュー内容を英語で書いてもらう。こちらは回答に対して英語で質問を記載する。(通訳の手間が省けて、ローカル言語だけで会話が進む)
この記事を書く間にも、Open AIがGPT4をリリースした。
少し触ってみたが、色々応用できそうだ。
忙しくて自分で探す余裕がない時は、新しいもの好きの友人をフォローするでもよい。
たまに声をかけて、話を聞くのも良い。こちらがオープンにしていると、色々新しいものを紹介してくれる。その都度試していくだけでも色んな動向が入ってくる。
「不確実性」の機会を奪う成功体験
アンラーニングで難しいと思うのは、過去の経験で得た「知恵」「マインドセット」など、中々人に説明しづらい暗黙知の部分だ。
思い返せば、確かに無駄なのだけど、その無駄があるからこそ、新たな出会いや気づきが生まれる。予定調和にならないチャンスやヒントが生まれる。
自身の経験を振り返っても
人生に脈絡はないし、あれこれ動く中で次が見つかる。
あの時「こんなんやっても意味がない」と活動を止めていたら、今に続く道はなかった。
賢く、上手くやろうとしない。せっかくの機会を奪っているのではないか。
いや、今でも、過去の経験を活かして「上手く立ち振る舞おう」とは思っていないはずだ。
ただ、普通に過ごしていれば、人間なので過去の経験を参照して「わざわざ同じ失敗を繰り返す必要はない」と経験を活かす。
過去の経験を活かしつつ、不確実性のタネを潰さない、塩梅が分からなくなっているのかもしれない。
自分への「老害」
上記に関連した話で、「課題に陥り、一見先がないと思った時に、どうモチベーションを維持していたのか?」
あの時は、全く先が見えない中で、何をモチベーションに道を切り開いていたのか?
周りの20代後半から30代の友人(自身のプロジェクトや事業を立ち上げている人)と関わる中で、「がむしゃら」に突き進んでいる姿を目にする。
いつも話を聞くと、その姿を見ると、元気を分けてもらえると同時に、
「あれ?自分はそこまでやっているのか?」と焦りを感じることもある。
そしてふと、過去の記録を見返すと、「自分も同じようにがむしゃらにやっていたな」と思う。
あの「がむしゃらさ」で突破できたことも多い。
「あれ?今は俺はもっとスマートにやろうとしていないか?」と。。
そして、ふと気づく。そうじゃない。。
いまの自分に、昔のような「がむしゃらさ」を重ねるのは違う。。
ただのノスタルジー
あの頃と体力も違う、経験も違う。取り組む課題の難易度も上がっている。同じやり方は通用しない。
そうそう。こういう時に、過去の自分と比べても、周りと比べても意味がない。。
上記の話を、同年代の友人に話したところ、「わかる!若い人への老害以上に、自分に対して「老害」になっているよね。過去の自分が、今の可能性を潰している。。」と言われた!
おー、、自分のチャンスを潰していると思うと、心が痛い。。
一見、経験値で近道をしているようで、「先回り」して芽を摘んでいる。
有効な対処法はあるのか?
まだ自分でも答えはないが、一つの気づきを紹介したい。
多様性のある友人関係を維持し、聞いてもらい、ストーリーを参考にする
他人に話を聞いてもらうこと。そして他人の話を聞くこと。
他人と言っても誰でも良いわけではない。
大前提として、考えの違いがあって、尊敬できる人
色々苦言はしてくれるが、根底に安心感のある(信頼関係ともいえる)関係性のある友人
例えば、
・起業家でも異なる全く異なる志向で事業を立ち上げている人。
・1-2世代若くて、自分では想像もしない方法でプロジェクトや活動を立ち上げている人。
・逆に、2世代くらい上で、自分よりもずっとアップデートを続けている人。
・異なるセクター、異なる分野、異なる年齢層、異なる国や人種、異なるジェンダー、異なる倫理観、、、、
多様性を持つ友人たちに話を聞いてもらう。
そして、彼らの「物語」をちゃんと聞く。
互いに相談しあい、議論して、バカ話を言いあえる関係性がとっても大事。
自分では想定もしない、斜め上の回答がたくさん返ってくる。
それをそのまま受けとる。
否定も肯定もせず、その場で判断して分かった気にならず受け取る。
メモして温めておく。
そして、心の余裕ができたときに、温めたメモを読み返してみる。
偏った「知」の強さ
独りじゃ解決できなくても、友人の力を借りると一歩進むよなーと考えていた矢先、
先日、人工知能の未来を語る番組を鑑賞した。
こちら、2回に分けて実施しており、1回目が延長込みで7時間半。2回目も7時間半と超長動画になっているが、ここ数か月盛り上がっている生成系AIの生い立ち、直近2年の動きなどわかりやすく解説している良動画だ。
以下など関心あれば観てみると良い。
動画では、技術的および哲学的な観点から「知能」「知性」について語られている。
要約すると、
偏りのある固有の知が相互依存しながら、互いに反目し合い成長していく。そこに創造性の本質がある。
つまり、「知性」とは、クリエイティビティ(創造性)であり、「知」の多様性から生まれる。
普遍的な「知能」など存在しない。
この見解には大きく共感した。
進化とは多様性の結果であり、何かに収れんしていく話ではない。
そんな事を考えているうちに、言葉にすると何てことない結論に落ち着く。
「結局一人で悩んでいても仕方ない。」
最終的には「友人って大事だな」という当たり前の話に落ち着いた(苦笑)
以上です。
もっと示唆に富んだ気づきが得られたら更新します。
※ちなみに、トップ画像(サムネイル)は、以下のキーワード(英単語)をStable diffusionに突っ込んで出てきた画像。
特に意味はないが、腑に落ちたイメージだったので使ってみた。
※読んでいただけたら、よかったら「スキ」「フォロー」をつけていただけると嬉しいです! 今後の励みになります~!
記事を読んでいただきありがとうございます!サポートしていただけると、より良い記事の励みになります!