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文と理の交差点で2030を見つめる

こんにちは、のぐです。今回の書籍は、落合陽一さんの「2030年の世界地図帳」です。いつものように、本記事でご紹介する内容をA4にまとめてみました。この本は、「地政学」と「テクノロジー」の二つの切り口から、2030年の世界がどうなるか、それに向けて今歩み出す各国の戦略とはどういったものかを紹介してくれる構成となっています。最近よく耳にするSDGs、GAFAM、中国の国家主導型資本主義経済などを分かりやすく解説してくれています。2030年の世界を見通すために必要な「デジタル地政学」の考え方とは。10分ほどで読める記事にまとめてみましたので、ぜひご覧ください。

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結論

2030年の世界は、次の4つのデジタル・イデオロギーに分かれる。と筆者の方は予想しています。

- アメリカン・デジタル
...シェア文化を利用したイノベーティブな資本主義

- チャイニーズ・デジタル
...国家を後ろ盾とした、資金循環と情報統制下のイノベーション

- ヨーロピアン・デジタル
...伝統文化を重んじるブランド力によるエンパワーメント

- サードウェーブ・デジタル
...一足飛びに生まれる新種のイノベーション

そもそも、デジタル・イデオロギーとは「情報溢れるデジタル社会に対する捉え方、そしてその考え方から生まれる戦略」のことです。後ほど4つについてもう少し詳しく見ていきますが、日本にとって参考にすべき戦略はヨーロピアン・デジタルであると筆者の方は仰っています。ここで、この本での筆者の方の中心的な主張を示します。

長い歴史と伝統を温め続けてきた日本は、ヨーロッパの「法と倫理」を重んじる理念に同調しつつ、米中のテクノロジー覇権争いの中間に立つことで、新しい価値を創造する可能性を秘めている

細かな説明については後ほど詳しくお話ししますが、本書の根幹はこの考え方にあり、筆者の方はこれを「発酵的イノベーション」と呼んでいます。

発酵とは、例えば納豆菌を笑に包むことで作られる納豆のように、
様々な要素を絡めて内部で不思議な力が働くことによって新しい価値を創造できる可能性を表しています。

このような発酵の考え方をデジタル社会への考え方に適用することを「デジタル発酵」といいますが、これについては最終回の記事にてお話しすることにします。

お話を戻しまして結論を示しますと以下のようになります。

デジタル社会の捉え方は、その土地の伝統や文化、歴史的な背景から決まってきて各国によって特色がある。そのような地政学とテクノロジーを掛け合わせて、世界を見ると4つのデジタル・イデオロギーが現れてくる。その中の「ヨーロピアン・デジタル」が、日本の伝統文化を生かした戦略であり、これからの日本を支える柱となるだろう。

目的

本書の「はじめに」で語られていた目的についてまとめます。

SDGsをテーマに、デジタル地政学的にこれからの日本の戦略を考える

ここで、SDGsとは「2010年、国連サミットにて提唱された『持続可能な開発目標』」というもので、環境保護や人権保護をテーマとした目標を地球上のみんなで達成していこうという趣旨のものです。また、「デジタル地政学」とは『テクノロジーはその土地の文化によって捉え方や使われ方が異なる』という前提に立って、世界を見つめる学問です。以下にSDGsを貼ります。

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1. 2030年の未来と4つのデジタル・イデオロギー

ここでは、「テクノロジー」と「人口」をもとに世界の展望を洞察していきます。もちろん、この二つの要素だけで世界を捉えきれないのは承知ですが、これらは「未来予測におけるブレ」が生じにくいことから落合さんに選ばれました。

5つの破壊的テクノロジー

破壊的テクノロジーとは、既存の価値基準に新たな付加価値を提示することで、業界のルールを一変させるテクノロジーのことです。例えば、iphoneは「電話とアプリ」という機能しかなかったスマホに「ブランド」という新しい価値が付与されたことで注目されました。

これからの社会を変えてしまうと予想されているテクノロジーを5つ一気にご紹介します。

①AIなどの機械学習関連の技術
②5G
③自動運転
④量子コンピューティング
⑤ブロックチェーン

未来を俯瞰するためには、これらの技術を、一つ一つ断片的に考えるのではなく、より総合的に「組み合わせることによる可能性」を捉えていく必要があるようです。それでは、これら破壊的テクノロジーにより、具体的にどのような未来が待っているのかを見ていきましょう。

テクノロジーで変わる2050年までの世界

ここでは、前節の破壊的テクノロジーにより、未来がどのように予想されているのかを、「食料」「健康」「資源」「都市」「労働」の5つに分けてご紹介していきます。なお、より簡潔にするために箇条書きで書いていきます。

食料  食物の完全なコントロールが可能に

- IoTデバイスやAI予測によって生産量や流通量の最適化を行い、フードロスが解決される
- 農業も大規模な工場と化して、すべて自動で作物が育てられる

健康  AIの活用や再生医療などが進む

- ロボティクスによる精密な手術
- iPS細胞による再生医療
- AIによる医療診断(現在、大腸ガン診断の正解率98%)
- ゲノム編集による治療

資源  太陽光が巨大なエネルギー産業に

- 世界的に主流な再生可能エネルギーは「太陽光」と「風力」
- 日本は太陽光発電で勝負

都市  高密度化する大都市

- 東京への一極集中(大都市部への一極集中)
- 地方の人口が減り、空き家率30%

労働  専門職の大体が急速に進む

- 士業を中心とした資格専門職の代替(特に法律関係)
- 自動運転の普及による「ドライバー」の代替

いかがでしたでしょうか。有名な予想もあれば、ちょっと意外な予想もあって正しく未来をイメージできたのではないかと思います。それでは、次に「人口」を軸にして世界を見ていきましょう。

「人口」を軸に世界を俯瞰

こちらも箇条書きでお示しします。詳しく知りたい方は本書を手にとってみてください。データを元により具体的に説明してくれています。

- 2030年には、インドが世界一の人口大国へ
- それに伴って、2030年の世界経済の中心は「中・米・印」

2020年代を牽引する4つのデジタル・イデオロギー

お待たせいたしました。「結論」にても話題に上げさせていただきました、『デジタル・イデオロギー』についてです。テクノロジーの捉え方や使われ方は、その土地の文化によって異なるので、それぞれの土地ごとに判断していく必要があります。そのような考え方から世界を見ると4つのデジタル・イデオロギーに分かれます。順に詳しくみていきましょう。

アメリカン・デジタル

GAFAMなどのメガテックを輩出するアメリカの強みはどこにあるのでしょうか。まとめますと、

オープンソース文化が資本主義と結びつき、
シリコンバレーを中心にITサービスのエコシステムが形成される

落合さんは「貪欲に新市場を追い求め、研究開発には予算を惜しまない。そのような姿勢の帰結が現在の、搾取と格差のネットワークといえる」と仰っています。アメリカの象徴である「自由」が資本主義と結びついたとき、世界に新たな価値を提供するイノベーションの量産が可能となるといった構図が見えます。

チャイニーズ・デジタル

BATHなどの、GAFAMに並ぶメガテックはどのようにして中国国内のITインフラを整え、情報統制を図ることができたのでしょうか。そこには国家の強力なバックアップがありました。まとめますと、

国家を後ろ盾とした、資金の循環やインターネットインフラにより、
ハードウェアは世界トップレベル、
ソフトウェアもアメリカに迫る勢いとなった

チャイニーズ・デジタルを理解するキーワードは「統制」です。13億人という巨大な国内市場を生かした戦略と言えます。

ヨーロピアン・デジタル

ヨーロッパのデジタル面の強みは、あまり耳にしません。では、どの分野で世界経済を主導しているのでしょうか。その答えは、「伝統文化によるブランド力」です。まとめますと、

ヨーロッパの伝統と文化を背景にしたブランド力によるエンパワーメント。
技術面にあらわれない価値を見出し、顧客とのエンゲージメントを強くしていく。言ってしまえば、SDGsと相性抜群の戦略

ここで、エンパワーメントとは「増強、力をつける」、エンゲージメントとは「信頼関係や絆」という意味合いです。ヨーロピアン・デジタルを理解するキーワードは「ブランド」「伝統」「顧客との信頼関係」です。

サードウェーブ・デジタル

インドのタタ・モーターズが開発した自動車「ナノ」は一台22万円で売られていて破格の値段となっています。開発途上国には、このような従来の枠組みに囚われない挑戦が新たな価値を生み出す可能性があります。まとめますと、

前近代から近代を経ずに、一足飛びで現代へと到達してしまった。つまり、近代の先入観が一切ないまま、新しいテクノロジーを使う若年層が多数いる中で、欧米が思いもよらなかった新たな価値が生まれるかもしれない可能性を秘めている

サードウェーブ・デジタルを理解するキーワードは「一足飛び」「可能性」「リバースイノベ」です。「リバースイノベ」とは、近代のインフラ資産がほとんどない環境だからこそ、最新テクノロジーを導入すれば、先進国に新たな価値がリバースして全世界に広がることです。

次回予告

本記事では、1章の部分を掘り下げてみました。テクノロジーという理系の知識と地政学という文系の知識を兼ね備える落合さんならではの考え方に心を惹かれました。『デジタル地政学』の虜になった方も多いのではないでしょうか。次回の記事では、いよいよSDGsに踏み込んでいき、「貧困」「教育」「環境」「資源」という地球規模のテーマをご紹介させていただきます。


最後に、本記事をご覧になった皆様の今後のご多幸をお祈り申し上げます。
それではまたの出会いを楽しみにしております。

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