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【読書】教養としての投資

株をやっている立場としては気になる本を見つけました。「ビジネスエリートになるための教養としての投資」という本です。

ダイヤモンド社から出ており、連載記事もあります。

著者は農林中金の投資会社で運用を行っている方です。農林中金はあまり聞きなれないですし、農業をやっていないと身近じゃないかもしれませんね。

しかし金融機関ゆえ預金などの顧客から預かったお金を運用して増やす必要があります。銀行や保険会社にとって、預金や保険料は仕入れであり、稼ぎは融資や投資での運用によって稼ぐものですから。

それでは気になるところをピックアップしてみましょう。


労働者1.0と労働者2.0

労働者1.0と労働者2.0という言葉が出てきます。あくまでも著者の定義だと思いますが、人によっては解ると思います。

労働者1.0とは

労働者1.0は多くの労働者が該当する働き方です。生活のために働いていて、やりがいや自分の目的達成のために働いているわけじゃない人たちです。

与えられた仕事をこなすのみ、社外に自分の人脈を広げない、会社に振り回されている人たちです。

これは人生の充実度という意味ではよくないのですが、残念ながらこうなることを求められる社会構造があります。

仕事とは理不尽や苦行であり、お金を稼ぐことは大変であり、会社に滅私奉公すべしという風潮が昔からあるからです。

そこで自分がやりたいことや実現したいことのために働き、社外以外にも人脈を広げ、投資も行って資産形成する方がいい人生を歩めるわけです。こういう働き方が労働者2.0です。

時代の流れは労働者2.0に向かっている

残念ながらまだまだ社会は新卒主義であり、新卒初任給ばかり上がって益々新卒が有利になっています。それゆえいい大学を出ていい会社に入ること、新卒で入った会社に長く務めることの優位性はまだまだ高いと感じます。

とはいえそれは金銭面だけ考えた場合です。20世紀まで仕事はお金や勤務先の知名度が全てでしたが、最近は段々とそうでない時代になってきています。

するといくら高学歴で有名な会社に勤めて給料を沢山もらっていても、やりがいが無かったらお金のために我慢しているだけなのです。これは労働者1.0です。

私は仕事においてはお金とやりがい、働きやすさなどのバランスが大事だと考えています。こんなこと言って「お前はバカだ!」とか「何も解っていない!」、「仕事を舐めるな!」と怒られたことは数えきれませんが。

しかし働き方改革や転職のしやすさによって、お金や勤務先の知名度だけが全てじゃない時代になってきているとも感じています。

それにもう大企業はドンドンリストラを繰り返しますし、中小企業だっていつ経営難になるか解りません。企業の寿命はドンドン短くなっています。

だったらお金のためと割り切って会社にしがみつく働き方よりも、やりたいことややりがいを感じることをやって、色々な人と仕事でも趣味でも関りを持って生きて行く方が楽しいと感じます。

投資と投機の違い

新NISAによって投資を始める人が増えたでしょう。そこで重要なことなのですが、投資と投機は違います。

本書でも投資と投機の違いを畑に例えて解説しています。そして日本人の多くは投資ではなく投機をしていると解説しています。ここも重要なところです。

投資に対する誤解

一般的に投資というと、画面にかじりついてチャートとにらめっこして、売買を繰り返すことを指します。投資術の本でも、特にプロが書いた本でも、そういうチャートを見たやり方が書かれています。

そして多くの個人投資家は勝った負けた、損切したと言っています。Yahoo!掲示板やX(旧Twitter)を見ればそんな投稿はいくらでも見つかります。

これは投機です。投機とは需要が上がりそうなものを仕入れて、需要が上がったら高く売ることです。今より需要が上がることを見込んで買うのです。

投機は短期間の取引となります。言い方を変えると利ザヤを稼ぐと言えます。

投資とは価値が増えていくものに資金や時間を使うこと

投資とは価値が増えていくものに資金や時間を使うことです。一番解りやすい例が勉強です。勉強という行為に時間や労力を使い、教科書や問題集やスクールにお金を使うことで、自分の知識が増えていくのです。

このように資金を投入すると価値が増していく、リターンが増していくのが投資です。だから畑を耕して野菜を育てることは投資と似ているのです。

一方で投機だと、最近人気が上がっている街はどこかを調べて、土地を買って、更に人気が上がったら売るのです。

実は投資の世界では、投機という行為はトレードと呼びます。つまり取引なのです。

一方でここでいう畑で野菜を育てるように時間をかけてリターンを得ることは投資(長期投資)と呼びます。

会社が売上高も利益も従業員数も、調達できる資金も増えていくことが成長です。そして成長する会社の株を買い、成長によって株価が上がることで資産額が増えることが投資です。

日本では投機が多い理由

日本人の多くは投資というとトレードを想像しており、実際に株などをやっている人もトレードをしているのです。だから株はギャンブルだというイメージがあるのでしょう。

一方で著者は、日本で投機が多い理由も挙げています。その理由とは長期的に成長する企業がないから、短期間で売買せざるを得ないということです。

せっかく競争力とニーズのある会社を見つけても、1年で成長が止まってしまってはそこで売るしかありませんから。

また著者は投機は必要とも言っています。

投機すなわち短期間でトレードする人たちがいるからこそ、ニュースが出た時に株価が高騰したり急落したりします。

そのニュースが業績の良し悪しだと問題ですが、すぐ業績に直結するわけじゃないニュース(国の製作とか新規事業や業務提携の発表など)でも株価は大きく変化します。

すぐ業績に直結するわけじゃないニュースで安く買ったり高く売ったりもできるのです。私もそうやって大きくキャピタルゲインを稼いだことが何度もあります。

長期投資に適する会社の見抜き方

本書には投資と投機に関する解説があり、著者自身も若い頃は仕事でトレードをしていたそうです。

金融機関にはディーラー部門と呼ばれる、トレードによって預金や保険として預かったお金や自社の手持ちの資金を増やす部門があります。

著者は日本長期信用銀行やディーラー部門での経験、ウォーレンバフェットの本を読んで学んだことなどを元に、長期投資でやると考えたそうです。

参入障壁が重要

長期投資の対象として適した会社の見抜き方も本書では解説されています。参入障壁という経済学的観点から金融機関の人らしいなと私は感じました。

要するに参入障壁が高いビジネスをやっている会社を選べば、簡単には業績が悪化しませんし、長期的に安定して業績を上げて行けます。

ディズニーの人気を上回るキャラクターや世界観のテーマパークを作ることは困難でしょう。

ユナイテッド・テクノロジーズの高品質・高信頼性のエレベーターは、人命が関わるものだからこそ低価格の製品で置き換えられる心配は少ないのです。

長期潮流も外せない

もう一つの観点として長期潮流も挙げられています。例えば日本の人口は減少すること、世界の人口は増加すること、新興国では富裕層や中間層が増えていくことなどです。

日本の人口が減少するなら、日本企業は生産性を上げるか海外進出するしかないですね。一方で新興国では和食や日本メーカーの製品を中間層に売るチャンスや、高級ブランドを富裕層に売るチャンスが増えそうです。

終わりに

ここでは述べませんでしたが、投資の考え方を応用して仕事に活かすことも本書では解説されています。

投資をやることで資金的な余裕を作りつつも、ビジネスも学べるのです。トレードではビジネスは学べません。

そして投資で学んだビジネス知識を仕事に活かして活躍すれば、仕事でも成果を出せてチャンスが増えるということですね。

このように本書では投資を活かしてより豊かに生きましょうという話を読めます。

投資に興味がある方、キャリアで悩んでいる方は一読してみてはいかがでしょうか?

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