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17.この世に不要とされていた人間は「あなたは生きていい」と言われた瞬間号泣する[後編]

スタジアムの照明が落ちて低音が轟く
いつのまにか肩に力が入り、ステージを凝視する。
女性のシンガーが一人でてきた。

新音イフじゃない。

MONSTER DADAのコンサートにオープニングアクトとして出演する日本のシンガー「新音イフ」を観に、遥々San Joseにやってきた。

「MONSTER DADAのオープニングアクトは2組も出演するのか....ハンパないな」と呟く。後に知ることになるがMONSTER DADAのオープニングアクトは3組で計2〜3時間だった!!!

そのシンガーが退場すると、なにやらステージが慌ただしい。
これは新音イフのセットをスタンバイしてるんだな。

アメリカでのアリーナツアーに日本のアーティストがオープニングアクトを務めているんだという実感が急に湧いてきた。MONSTER DADAの体調不良によるキャンセルを乗り越え、新音イフの出番が迫ったこの瞬間にも得意の心配性で「自分の曲が急遽セットリストから外れていたらどうしよう」と最後の最後まで自分の曲が演奏されることを信じられないでいた。

でも、新音イフは歌いはじめた。


2曲くらい演奏してお客さんは物珍しそうな反応。
客席もメインアクトまで埋まっている訳ではない。

日本を離れ遠いアメリカの地で、一生懸命踊り歌っている新音イフの姿を観ていると込み上げるものがあり、いつのまにか心の中で応援しはじめていた。

「がんばれ、がんばれ」「お客さん、もっと観てくれ、注目してくれ」と。


そして....いよいよ聞いたことのあるイントロが聞こえてきた。

札幌の部屋で何度も何度も....繰り返し聞いた自分の曲だ。


6畳の狭い部屋で作った曲が、何万人規模のアリーナに轟いている。
日本人の作った曲がアメリカの地に鳴り響く。

イントロから感極まり、動画に撮った方がいいのか
自分の目で観た方がいいのか。混乱したまま曲が進行していく。

ずっと、客席を見回していた。4階のスタンド席、アリーナ、スタンディングゾーン、隣の席。

おお!

自分の曲のリズムに体を揺らしてくれている人を見つけた。
正直、棒立ち、無反応でもおかしくないと思った。
極東の名も知れない作曲家が作った曲。
仮想世界の歌姫が懸命に歌っても。

色々な場所で踊っている人を目に焼き付けているうちに新音イフが客席に向かって語りかけた「Clap your hands!!」

新音イフの英語でのMCは伝わったのだろうか。


間奏が終わり曲が始まると、前の方のお客さんが手を叩いてくれていた!!!!!!!!!よくよく見ると光る棒を振っている人もいる。


さらに驚くことに曲が終わった瞬間。拍手が起こったのだ。
大喝采という訳でないけども、少なくない数の拍手。

日本から来て懸命に演奏した新音イフへの労いの拍手かも知れない。
曲ではなくシンガーに対しての拍手だと思う。


それでも。


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