執筆から出版へのいきさつ
「ケアの本質」から「まずはケアの話から始めよう」へ
2019年12月にゆみる出版から刊行された拙著「まずはケアの話から始めよう」の話を少し。ゆみる出版といえば、あの有名な「ケアの本質」(ミルトン・メイヤロフ)を世に出した出版社です。
今回は「私がなぜ本を書いたのか」という、いわばメイキング的な話です。
いきなりぶっちゃけた話になりますが、私は自分で書いたものを本にするというつもりは一切ありませんでした。私はメイヤロフの「ケアの本質」の新訳を出したかったのです。
最近、よくある、いわゆるアレです。
難しい哲学書なんかを一部の専門家が自分の研究のために読むものではなく、平易な、現代的な翻訳に替えてみたり、構成を大胆に編集して読み物として編みなおすことで、これまで届かなかった読者層にも身近に感じられるようにして出版する…まあ、ざっくりいうと、そういうことをしてみたかったんです。
それというのも、私はすでに翻訳出版されているメイヤロフの「ケアの本質」がとても好きで、この内容は現代を生きる、多くのひとの役に立つものだと信じていて、できるだけ多くのひとの元に届く…そういうことに携わりたいと思ったんですよね。
それで原著(英文)を取り寄せて(そもそも英語が得意ではないもんだから、二年間ほど時間をかけて)新訳を試みたのです。
で、ここではたと考えました。「これをどうすれば世に出せるのか?」と。翻訳権を持っているゆみる出版にアプローチするしかない(ダメもとで)という思考に至りました。
そんなに楽天的なタイプではないので、無名の自分がいきなりアプローチをしたところで相手にされないだろう…ということは予測していましたし、原稿を出版社に持ち込む方法とか、翻訳権や著作権についても自分でいろいろググってみたりして。
でも、もう一人で考えていても仕方がないというところまで考えて、最終的には勇気を振り絞って、電話をかけてみたんですね。怪しまれるであろうことは承知の上で。
その一本の電話がこの本が出版されるまでの、すべての始まりです。
まずは電話で自己紹介をし経緯を説明した後、自分で意訳した翻訳版と経歴書を出版社に送ってみました。
すると、意外な反応が返ってきました。
「あなたにはきっと書きたいことがあるのだろうから、翻訳という形ではなく、一から自分で書いてみたらどうか」と。
もちろん、この時点では原稿を依頼されたわけではないし、出版を確約されたわけでもありません。
それでも「メイヤロフの“ケアの本質”へと続く門戸」が私の目の前でゆっくりと開いたのです。
メイヤロフの「ケアの本質」を下敷きにしてもかまわない、という許可もいただきましたし、これで心おきなく引用できるとも思いました。
それからおよそ三年を経て、拙著「まずはケアの話から始めよう」ができあがったわけです。
一本の電話をかけたあの日に想像していたところとは別のところに着地したわけですが、もしも「まずはケアの話から始めよう」を読んでくださったことがメイヤロフの「ケアの本質」にたどりつく、その一助となれば、私としては当初の目的を果たしたともいえるわけです。
こんなに幸せなことはありません。
というわけで、みなさん、拙著「まずはケアの話から始めよう」とメイヤロフの「ケアの本質」をよろしくお願いします。
対で読んでいただけるとすごく嬉しいですが、もし一冊しか買う余裕がないよ…という人はメイヤロフの「ケアの本質」をお買い求めください。
以上、メイキング・オブ・「まずはケアの話から始めよう」と「ケアの本質」への熱烈なラブレターの話でした。
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