『ブルシット・ジョブ』よ、かかってこい
ドラクロワの時代にブルシット・ジョブはあったのだろうか?
今日は『ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか』を読んで。
話題沸騰の「ブルシット・ジョブ」とは
今日ご紹介する新書は、最近話題のデヴィッド・クレーバー著「ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論」の訳者による入門編かつ解説書である。
元となるデヴィッド・クレーバーの本の分厚さとお値段に驚かれた人はまずこちらの新書から読んでみるのもありかもしれない。
また、農系ポッドキャストの雄「ノウカノタネtheWorld」でも熱く語られているので雰囲気を知りたい方にはオススメ。(余談だが、よりこの労働の世界シリーズ通して聞くことをお勧めしたい。)
ブルシット・ジョブの定義
本書もかなり読みにくいと感じたが、定義も分かりにくい。
<定義を分解して考えると>
仕事の存在自体が正当化しがたいほど無意味で、でたらめ
その仕事をする人にとって精神的苦痛をともなう
それでもそれに対して比較的良い給与が支払われる
そのため、苦痛に耐えて、その仕事が有意義に存在するかのようにとりつ
くろわなければならないように感じる
まだ分かりにくいが、問題はない。
ブルシット・ジョブの基本類型
ブルシット・ジョブ(以下BSJ)には5つの基本類型があるので、自分の仕事と照らして考えてみてほしい。
取り巻き:カバン持ちやおべっか使い、秘書業務
脅し屋:無駄にリスクをあおる企業弁護士、魅力的でないとわかっていて売り込む広報的業務
尻ぬぐい:組織内外の調整役
書類穴埋め人:誰も読まない書類の体裁を整える
タスクマスター:企業における管理業務全般
他にも類型があるとのことだが、上記だけでも何かしら思い当たるところがあるだろう。
私の仕事は、ほぼすべてがBSJだということになった。
逆にそこまで無意味で有害だと言い切られるとすがすがしい。
ブルシット・ジョブはどうして増えるのか
本書では、BSJがなぜ精神的な苦痛を生むかや、BSJがなぜ増えるのかなどについて歴史的、社会的背景から読み解いている。
それには資本主義やその特徴である成長主義が大きく影響している。
確かに、経済指標として株価以外にも失業率や、米国雇用統計などがある。
より多くの人が仕事についていることが、経済成長につながるという考え方がBSJを増やす要因となっていると感じる。
労働の価値は市場価値で数値化されることが当たり前になっている。
しかし近年、コロナ禍でのエッセンシャルワーカーの存在や、ジェンダー格差の議論の中で、家事労働の価値が見直されることで、労働の価値は再び社会的価値への回帰を促している。
結論として、本書も原作者のデヴィッド・クレーバーも、労働の本質的価値やベーシックインカムの議論を展開して、BSJに対する打開策を示そうとしているのだろう。
読んでみて
BSJは、現代の労働の価値を見直すきっかけを、バズワード的に社会の注目を集めて、問いかけたという点で価値があると感じている。
ただ、その本質は資本主義の起こりや、時間に関する価値観などを丁寧に読み解く必要があり、容易に理解できるものではないということが分かる。
大切なことは、2つあると感じる。
BSJも複雑な社会活動の中で、偶然生まれたものであるということ。
ひとりひとりが理想の労働の価値を考えること。
働き方や仕事は人それぞれ。その受け皿となっている社会も多様化している。
たとえ今の仕事のすべてが、BSJだと言われても、それがすべてではないし、選択肢は私自身にある。
最後は、自分が大切だと思う生き方、働き方をしっかりやりきることが重要だろうとぼんやりと思う。
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