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電磁誘導とドン・キホーテ

 本項は上の子との会話の記録です。

 先日のこと、上の子から「電気って何時ごろからあった?発電機がないと使えないよね」と質問を受けました。
「そうだね、電磁誘導が発見されて発電機が作られるまで、実用的な電気の利用はなかっただろうね。静電気の存在は古代ギリシャ時代から知られていたみたいだけど」と言ってから「古代」というキーワードが別の記憶を引っ張ってきました。
「違う!電磁誘導以外に化学反応から電気を得る方法があるや。つまり電池、バッテリーだよ。発電できるのはたまたまという意見もあるけど、古代メソポタミアで発見された壺が電池として使われたという話もあるんだよ」
*ちょっと検索したらこれはバグダッド電池というもので、電池だと主張する人たちは紀元前250年頃に作られたとしていますが、電池説に批判的な立場からはもっと後のササン朝時代のものという意見が出ているとのこと。古代には間違いないし(ササン朝はヨーロッパでの中世にはみ出していますが、Wikipediaだとイスラム世界の中世はイスラム帝国の分裂以降となっているので古代でいいんですかね。アッバース朝時代を古代と言うのはかなり躊躇われるんですが。)地理的にメソポタミアなのは間違いないですが、パルティア時代やササン朝時代は、普通は古代メソポタミアとは表現しないですね。

 で、なんだか微妙な顔をしているので質問の本意は別にあったかと「で、電気が何だった?」と促してみますと「古い時代を舞台にした話でも水車が出てくるのはなんでかな、と思って」
 ああ、なるほど。水車の用途として発電が思い浮かんだけど、時代と不釣り合いと思った、と。ごっとんごっとん回る木製の水車で水力発電はずいぶんのんびりしすぎではないか、と思ってしまいますが、一方でそのような常識にとらわれずに「発電をしていたのだろうか?」という疑問に思い至れる力は羨ましくもあります。「何に使っているのかは知らないけど、発電ではないだろう」は結果として正解に近くても、成長につながる態度ではなさそうです。

 さて説明。
「古い時代の水車の用途だと、一番最初に思いつくのは脱穀だね。円運動を上下運動に変えて、臼に杵を叩いて小麦や稲の皮を外すわけ。他に縦の円運動を横の円運動に変えて、石臼で穀物を粉にひくのも水車でできる。他には低い水路から高い畑に水をくみ上げるのに使うこともあるね。もっと時代が下ると繊維を糸に撚るのに使ったり、糸を布に織り上げるのに使ったり。そうだ、水車じゃなくて風車だけど、ドン・キホーテが何故風車に突撃したかとか面白いよ」

 時間がなかったのでドン・キホーテが何故風車に突撃したのか、の説明はしなかったのですが、僕の念頭にあったのは以前テレビ番組で見た「ドン・キホーテは風車の他に、羊の群れにも突撃している。風車を使った毛織物生産が発達したため、農地が羊の放牧地に変えられ農民が土地を追われたことへの風刺だ」という説でした。
 ところがこの記事を書くにあたって検索してみると、この説について述べられているサイトは全く見つけられませんでした。僕の覚え違いか、さもなくばそのテレビ番組があまり一般的でない説を元に作られたのかもしれません。
 イギリスではトマス・モアが羊が農民を食い殺すと述べたように、農地が羊の放牧地に変えられ、農民が土地を追われたのですが、スペインでも事情は同様だったのだろうと僕は理解していたのです。
 でも改めて調べてみると、イギリスとスペインではだいぶ事情が違うようです。

 またドン・キホーテに登場する風車は粉を挽くのに使われていた、と書いてあるサイトもあって・・・。

 間違った知識で、上の子に変な事を教えてしまったかもしれないと、今、けっこう焦っているのでした。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。


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