飼育員は研究職のはず、と憤った思い出
下は先日、ブラウザが勧めてきた記事。東京動物園協会運営の野生動物保護センターと岐阜大学の共同で行われた、ゴールデンターキンの繁殖についての研究の成果が論文として発表されるというもの。
良いですね。動物園が野生動物の研究、とりわけ保護や繁殖に関わる研究に関わっていることが知られるのはとても良いです。
これで思い出したのは10年近く前、高校生のグループがカクレクマノミがイソギンチャクに刺されない理由を特定した、というニュースが流れた時のこと。グループのメンバーの「水族館の飼育員になりたい」といコメントに対して、「もったいない」「ちゃんとした研究者を目指せばいいのに」というコメントがニュースサイトの記事にいくつも付いていたのですね。
いや、水族館の飼育員は研究職だろう、と憤りを感じたものです。
僕は動物園や水族館の関係者ではなく、ただのファンでしかないので、そのつもりで以下の文章を読んで欲しいのですが、現代の動物園、水族館は19世紀めいた見世物としての動物園、水族館の延長であってはならず、娯楽施設であると同時に、教育機関であり、野生動物の保護繁殖施設であり、研究機関でもあり、時に自然保護、野生動物保護の広報をも担う存在です。
教育機関であり研究機関である以上、その活動には研究活動も含まれなくてはなりません。現状、必ずしもそうはなっていないとしても。
現状、動物園で動物の研究をしている方のことを調べようと「飼育員は研究職」で検索すると、一番上に出てくるのはのんほいパークのサイト内にあるこちらの記事。こちらでも「国内では珍しい」と書かれています。
誤解してほしくないのは、飼育員になりたいなら大学院くらい出てから来い、というようなことを言いたいのではないのです。むしろ高卒だろうと中卒だろう(現在どうなっているかわかりませんが、昔、高卒で一般の公務員試験から市職員となった方が、飼育員として動物園に配属されたという話も読んだ記憶があるので)と、動物の飼育に関わる方が自らの知見を論文の形で共有してくれるなら学位が認められるべきだし、飼育員のお仕事は学術的にも意味のあるものだと認識されるべきものだと考えているのです。
一昨年、東山動植物園は高知大学と共同で、今までヤマトサンショウウオと同種だとされていた愛知県産のサンショウウオを新種のオワリサンショウウオとして記載しました。
国立大学ですら研究費の不足に喘いでいる昨今、道のりは厳しいとは思いますが、このような動物園の研究機関としての側面が知られるニュースをたくさん目にすることができるようになれば、と願っています。
広報やイベントについて経営学的な論文が出たっていいですしね。
とここまで書いて下書きにしていたところ、こんなニュースが流れてきました。
大学と2つの動物園が学術誌を立ち上げ、動物の飼育に関する知見を論文の形で共有することを目指すという記事で、正に「得たり」という感じで、この記事を書きながら「こうなったらいいな」と考えていたことがそのまま実現している感があります。3者は既に2020年から共同研究を続けているとのこと。
このような活動がもっと世間に知られるように、動物園が研究機関でもあるという認識がもっと一般的になるように、心より願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。
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