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デブ・病原菌・鉄、そして美しさ。|weekly vol.086

今週は、うでパスタが書く。
当分のあいだ、うでパスタが書くかもしれない。理由は秘密だ。

異常なぐらい太ってきた。
「異常なぐらい」というか、人生最高水準だということを認めるならばこれは留保なしに異常なのだ。
もっとも読者のなかにだって「過去一年で劇的に痩せた」というひとがほとんどいないことは私もフェルミ推定で分かっていて、優しさもまじえて言えば、これはパンデミックにより長期化する「ステイホーム」習慣の影響である。私はフェルミ推定をよく分かっていない。

一般にプログレッシブとみなされるひとびとはいまも「女性の美しさ」を既成概念の拘束から解こうとしていて、たとえばもっとも物議を醸すジャンルでいうなら「デブもそれなりに美しい」ことを当たり前にしようとしているが、たとえばもともとデブ専と呼ばれる嗜好のひとたちにとってそれはもとより当たり前だし「余計なことを言うな」という思いすらあるかもしれない。あとは女性もそうだけど、「太っている男性をどう思いますか?」と質問すると本質的な答えが返って来たりしないだろうかという気もする。

しかし何しろこうしたムーブメントが女性から見た問題として発生してくるのは、これは歴史的・社会的状況から切り離して考えることができないので、まだいちども実現していない「男女平等」の見地から昨今の男性社会が守勢一方であることに抗議するというのは私はあまり好きではありません。
我々自身が女性であれ男性であれ(あるいはそのどちらでもなかったにせよ)、確認可能な範囲でも過去数千年にわたって守勢一方だった女性側の立場を押し上げていかなければならないことには議論の余地がないわけですから、ここは本来性別を問わず共同して取り組んでいかなければなりません。
よってだからこそ活動家の皆さんにもどうかいまいちどご理解をいただきたいのは、現代を生きる同時代の男性だってこれはこれである種状況の産物に他ならず、折に触れて「男らしくしろ」とか言われて否応なくタフに育ってきているわけですから、ここはひとつ敵するのではなく同じサイドに立って過去を背に未来を見つめて肩を並べようではないかと、こういうことなのであります。

以前にも少しだけ言及した「ボーイズ 男の子はなぜ『男らしく』育つのか」という本があって、これはアメリカ人のレズビアンカップル(というか法的な夫婦)が養子に迎えた男の子が、両親を取り巻く多様な性の皆さんに囲まれて育ったにもかかわらず気が付くと友達の前では実に男らしいそぶりを見せようとする正真正銘の「男の子」に育っていたことに衝撃を受けた、その親のかたわれが取材・執筆したという日本のツイッター界隈へ放流されれば多くの人間が三日はそれで白飯が食えるぐらいの一冊です。

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