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Vol.3 形から入るも、アリなんじゃない?~いつのまにか実践しているアーユルヴェーダ~

古代の叡智でとどめてしまうにはもったいない、現実的なくらしのメソッドにあふれるアーユルヴェーダ。そんなアーユルヴェーダが今後も生き生きと存在していくために必要なことを考えてみた回から、さらに、無秩序に話が広がっていきます。

「なんか違う」を感じるために

さき: 吉本ばななさんの昨年出版された著書『違うことをしないこと』で、一般的なルールとかではないけど、自分の中で「なんか違うな」っていう感覚だったり、その人の言ってる内容はおかしくないんだけど、なんかひっかかるってことに気づく力は、生きていく上ですごく大事だよ、っていう話があるのだけれど…。

たま: 違和感のこと?

さき: そうそう、根拠はすぐにはわからないけれど、自分の中で感じる違和感っていうことだよね。そういう「なんか違う」をしないために必要な力を、アーユルヴェーダは鍛えてくれると思う。「なんか違う」を感じる力って、本当に自分をニュートラルにして、先入観をとっぱらったときにしか感じられないものだと思うんだよね。

ふだんは、理性や周囲の環境から逆算して「そうなこと(OKなこと)/違うこと(NGなこと)」を判断していると思うの。でも、自分の中で「なんか違う」を感知できる力は、その人の生命力と直結してると思う。

たま: マハト・チューニングの話もそうだけど、自然のリズムと呼応して、自然の一部になってる感覚がある人は生命力が高いんだろうね。だから、直観力も含めた、あらゆる感覚が研ぎ澄まされてて、「これ、良さそう」とか「これはちょっと」とか、パパっと感じていくことができるんだよね。

 たぶん、そういう感覚を養うのって、空手でも楽器でも、何かに本気で取り組むことで高めていけるんだろうけど、アーユルヴェーダもその一つだということだよね?

さき: うん。華道でも茶道でもいいし、畳み職人でもいいんだと思うの。どの道からでもそこに行けるんだけど、アーユルヴェーダは目的自体がそれだから、直結してる。生命力を高めることそのものを狙っていくからさ。

たま: 生命力が弱ってると、弱いところを突いてやろうとするものが、すり寄ってくるじゃない?健やかだと、そういうのを軽やかに避けられるんだろうし、そもそも寄ってこなくなるんだろうね。「光がまぶしい」みたいな。で、アーユルヴェーダで生命力を高めていくためには、どこから始めたらいいの?

さき: アーユルヴェーダ医学という枠組みの中でいうとすると、「お白湯と早起き」。これに尽きる。蓮村先生も、講演会で「結局、お白湯と早起きだ」って話ばかりをしていたよ(笑)。

たま: それは、どんな体質の人でも?

さき: うん、どんな体質の人でも。朝日が昇る96分前に起きて、エネルギーいっぱいの太陽の光を浴びて、お白湯で身体の中にあるいらないものを流して、マインドもクリアにして。それだけでね、相当元気になる。

たま: 96分ってどういう意味があるの?

き: アーユルヴェーダの時間の単位※なの。ただ、夏だと日の出の96分前が3時台になっちゃったりするから、その辺は少し調整してもいいと思う。

※1ghatika/ガティカ=24分。
アシュタンガフリーダヤサンヒターという古典には
「健康な人は朝早く起床すべきである。朝早くとは、日昇の4ghatika前である」と書かれている。
(ちなみにその時間をブラフマ・ムフールタと言います)

※早起きで増えすぎたカパを調整し、めくるめく変化を遂げた方のエピソードはこちら

たま: わたし、すごい夜型だから、5時に起きるのちょっとつらいな。でも、生命力高い状態味わってみたいから、がんばってみるね…。

さき: わ!じゃあ、もしよかったら山形ビンナーレ2020のプロジェクト※に参加してみて!参加者の方々に、10日間早起きして朝日の写真を撮ってもらうの。そのみんなの朝日の写真を、毎日HPにグリッドで積み上げていき、映像作品として残していくというプロジェクト。

 日の出96分前の空気はね、ほんとにね、「取り入れることで生命を保護する」と昔から言われている良いプラーナ※がいっぱいなの!でも、プラーナっていうと、怪しいとか、取り入れるのはちょっと嫌だなとか、いろんな感じ方あると思うから、背後の説明は置いておいて「早起きして、朝日の写真を撮って、送ってください」という企画にしたの。朝日の写真を撮ることで、いつの間にか魔法みたいなことがその方の身に起きたらいいなーーって。きっと起きるよ!ふふ。

 ※プラーナ:アーユルヴェーダでいうところの、気やエネルギー、空気のようなもの。
呼吸法のことをプラーナヤーマという。

※参加者の方々には、10日早起きを続けることでの心身の変化も記録してもらい、気になった人にはインタビューを実施します。
また、ビエンナーレ最終日の9/27にはインドのアーユルヴェーダ医師のトークイベントも予定!ぜひご参加ください。

形・型が心身を整えてくれる

たま: すごく良い企画~!やっぱり、形から入ることも大事だよね。

さき: うん、形、型(かた)みたいなものって大事なんだなー、ってよく思う。くらしの中の型。

たま: 型に従ったり、形を整えたりするだけで、その奥にある意味や効能を知らなくても、勝手に気持ちや行動や調整されていくっていうのはあるよね。この動きをしてるとなんか元気になるとか、この姿勢をずっととっていると暗い気分になるとか。お掃除や整理整頓も形を整えることだと思うし、言葉遣いや作法とかも、そこをきちっと押さえることで、自分と空間が変わっていく。

さき: それが型のすばらしさだよね。健康になるために何かするときに、どんなワンクッションを置いたら、楽しくなるのかなっていつも探している。

健康って本質的な「快」。だから、外からの動機付けやペナルティなどではなく、”「快」を求めたからこそ、健康になっていくという仕組みづくり” をしたいなって思ってるの。

たとえば、わたしはゲームはしないんだけど、ポケモンGO※とか、すごいなあ!って思う。「ポケモンを集めたくて、気づいたら何時間も外を歩いてた」という人がたくさん現われたように、楽しさに夢中になっているうちに、結果として運動していた、身体が健やかになっていた、もっと言うと、実際に外を歩くことでいつのまにか社会的な繋がりを得ていた、という人が世界中に増えた。

エンタメと健康を組み合せて、面白いうえに、やればやるだけ元気になるようなものっていいよね。わたしもそういう仕組みづくりがしたい。正しいからやりなさいっていうような、権威みたいなものはもういいかなって思っている。

※ナイアンティック社がwell-beingの考え方(健康によりよく生きる)をベースに、「位置情報と連動させる」という技術を通じて展開したサービスの一貫

たま: 早起きやポケモンGOのように、楽しくやってたら、知らない間にアーユルヴェーダ式健康法を実践してたっていう仕組みづくりね。楽しみ。
そういった仕かけのためにも、アーユルヴェーダをどう表現していくかってことが、ますます大事になりそうだね。

「これがアーユルヴェーダです」って、丸ごとバーンってぶつかっていくのも素敵だけど、「この場面ではこの角度が良さそうだから、そこ強調していこう」っていうような表現も求められるんだろうな。間口さえ広ければ、アーユルヴェーダに出合う人も増えて、深めたいって人の数も増えていくだろうしね。

さき: 医療って何だと思う?現代医学は科学そのものだと思うんだけど、医療ってさ、字に癒やしの意味が入っているでしょ。だから、科学プラスアルファなんだと思うの。

わたしのなかに、科学は人を癒やすためにあるものではないから、科学からはみ出てもいいやって思う部分と、現代医学は科学のもとで発展してきたものだから、そこをリスペクトしていこうって気持ちが共存しているんだよね。人が癒える、リカバリーしていくっていくための、プラスアルファの部分はアーユルヴェーダが得意とするところだから、科学との良い配合を見つけて、次の時代に生き残っていきたいな。

たま: プラスアルファの部分も、種類や濃度に幅がありそうだよね。これも話すことたくさんありそうだから、また別の機会にじっくりおしゃべりしたい。今回は、こんなところで。

photo by Satoshi Osaki

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