獲る命と頂く命
かなり遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。皆さんは2023年、良いスタートダッシュを切れましたでしょうか?僕はと言うと、年末にコロナになり高熱になりましたが、年明ける前に何とか回復したので良いスタートを切れました。
さて、2023年1発目の投稿のタイトルは、全くもって新年の爽やかさにそぐわない内容のタイトルですが、移住したての頃から常々興味があった「狩猟」に行ってきた体験を書きたいと思います。
まず初めに、なぜ狩猟に興味が湧いたのか?
それはもしこの先個人事業主としての仕事がなくなったとしても、持続可能な生活の礎を築ければ、家族全員が安心して生活していける。
そのためにはどうするか?「自分たちで食べる分の食料をまかなう」これが問題を解決する1つの手段になります。
そのために
「畑を耕し野菜を育てる」
「タンパク源を自分たちで確保する」
この2つが重要になるのではないかなと思いました。
野菜は自宅の小さな畑で育てることができますが、タンパク質となるとブロッコリーだけでは事足りないので、やっぱり最初に思い浮かんだのが、肉を得る為の「狩猟」でした。
移住当初から狩猟に興味があったわけですが、どうやって参加するのかも分からず、色々な人に会うたびに狩猟に興味があることを話していました。
そのお陰もあってか、ある日娘たちと同じ保育園に子供たちを通わせている家族と仲良くなり、飲みの席で狩猟の話をしたところ、パパ友のユウタロウ君が「実は僕は猟友会に入っているから、一緒に行きますか?」と誘ってくれました!
まさに渡りに舟とはこの事。「1月にいきましょう」と日程を調整し、ようやく念願だった猟友会のセッションに参加させてもらうことになりました。
ドキドキワクワクしながら日曜早朝にパパ友に迎えに来てもらい、猟友会メンバーが集まる駐車場に合流。
挨拶を済ませると、猟友会の支部長がサクサクと作戦を決めていきます。
今回行う「巻き狩り猟」は、
・立間(たつま)=銃を持っている撃ち手
・勢子(せこ)=獲物を立間のいるポイントまで追い込む人
この二手に別れて猟を行います。
僕の場合は連れてきてくれたユウタロウ君が散弾銃を持っているので、今回は「立間」に振り分けられました。
立間と勢子に分かれた15名が、獲物の鹿を狙います。
駐車場から全員でポイントに向かって各自の車で出発し、9時頃に山の中腹付近に到着。
メンバーは準備を済ませ、駐車ポイントから獣道に入り、黙って尾根まで登っていきます。鹿はアンテナのように左右の耳を動かして音を察知するので、少し喋っただけでも気取られて逃げられてしまいます。
尾根まで上がる道すがら、立間の人たちが各ポイントに1人づつ散っていきます。
その途中で黒いコロコロした物体を見つけました。猟師の人に聞くと「鹿のウンチ」とのこと。
段々と獲物に近づいていく緊張感と共に、そこに確かな生命があることを感じます。
僕とユウタロウ君はベテランの猟師の方の後ろに続き、急斜面を登り自分たちのポイントに到着。
ポイントに到着したら、散弾銃を取り出し勢子(せこ)が獲物を追い込んでくるまで、ひたすら待ちます。
無線では勢子の人たちが「どこどこの穴の近くに向かう」とか「あの谷の下のポイント」など、地形を理解していない僕には全く分からないワードが飛び交っていて意味不明でしたw
まだ獲物は現れない。
マイナス8度以下の天候の中、ひたすら待ちます。
足先と指先が冷え切ってきたので、2人でスクワットを静かに行い何とか体温上昇を図ります。
太陽の光が雲で隠れると寒さは一層強まり、スクワットの速度も早まります。
寒さが限界に来たその瞬間。「パーーーン」と銃声が空に響き渡る。
無線を聞くと「シロ(猟犬)が血を追っている」とのこと。
僕らは支部長の指示があるまで待機して、約30分後経過したところで「戻ってこい」と指示があり、尾根の急斜面を恐る恐る下りて、メンバーたちと合流。
車を駐車していた道路の雪の上には赤い鮮血が滴り落ちており、血を辿っていくと息絶えた鹿がそこに横たわっていました。
オスの鹿。
体重は約60キロ。
出身は信州。
名前は分からない。
数分前まで動き回っていた生命が、そこにただただ横たわる。
人間たちは何気なくスーパーでパックに包装されたお肉をお金を払って買いますが、肉となる動物は当然のことながら自然の地で生み出された生命です。
僕たちはどこからその肉が来たのか?
どのようにしてこのような形になったのか?
あまりにも無知であり、強欲なのかもしれません。
でも生きることとは、己の食欲という欲望に従うもの。
僕は絶命した鹿を見ても「かわいそう」とは思いませんでした。湧き出した感情は「命を奪ってゴメン。でもちゃんとあなたの命を頂きます」
「かわいそう」と思う人はベジタリアンになると思いますが、野菜や植物にも命がある事を忘れて欲しくないです。
僕らは命を奪うという現実を受け入れて、食べたものをちゃんと自分の血肉として、彼ら動物のエネルギーを取り込んでしっかり生きていくことが重要だと思います。
撃った鹿は解体場に運び、皮を綺麗に剥ぎ取り、内臓を傷つけないように肉を切り分けていきます。
・背ロース
・もも肉
・すね肉
・ハツ
あと名前の分からない部位などに切り分けます。
耳もペットの餌になるらしく、切り出していました。
鹿のツノは犬の骨しゃぶりとして使われていたそうですが、鹿のツノは硬く犬の歯が縦に割れてしまうため、農林水産省から辞めるように推奨されているようです。
解体作業を興味津々で見学していると、支部長から「お疲れ!一番うまい背ロースを持っていけ」と言われたので有り難く頂きました。
ユウタロウ君が経営する
「蕎麦と旅籠 三引屋MITSUBIKIYA」に
Instagram: https://www.instagram.com/mitsubikiya/
肉を持って帰り、厨房でトリミング方法を教わり家に持って帰ります。
さあ、お待たせしました!
ここからが「命を頂く時間」です。
今晩のご飯は鹿の焼肉パーティです。
「鹿さん、有難う。あなたの命を美味しく頂きます」
まずは味付けなしでそのまま。
とても柔らかく、深い赤身肉の味が溢れ出てくる。これはうまい!滋味あふれるとはよく言ったもんだ。
他の味付けもどんどん焼いていく。僕のお勧めはハーブソルトとオリーブオイル漬け。鹿は脂身がほぼないので、ラードやオリーブオイルで油分を足してあげると絶品です。
子供たちも「これって写真の鹿さん?美味しい!」と言ってパクパク食べていました。
これぞ食育。食べるものがどこから来て、どうやって食べられるのか。これからも機会があれば教えていきたいと思います。
余談ですが、よく研がれたナイフで自分の指をパックリ切ってしまいました。結構深く切ったので、傷跡が残るかもしれないですが、この傷を見るたびに「俺のことを忘れるなよ!」と鹿に言われているような気がすると思います。
この経験を忘れずに、今回頂いた命を自分の血肉にしてしっかり生きていかなければ。