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ジャガディアの病院

 我々のインドでの故郷はインド西部に位置するグジャラート州にあります。何年かぶりに訪れたグジャラート州は道路や街が綺麗になっており、人々の情熱や活気は以前にも増して自信と誇りに満ち溢れているようでした。そんな人たちを見たり、彼らの話を聞いたりしているとワクワクしてくるものです。そしてそのワクワクの中に自分達も入ってみたいと思うものです。

 わずか3日間の滞在でしたが、多くの商売をされている方々や社会貢献をされている方々に会うことができました。どの人も場所も印象的だったのですが、特に心に残っているのがグジャラート州の南部の村ジャガディアにある病院を訪れた時です。

 大きな街から車を走らせること2時間。バナナ畑、スパイス畑、豆畑の間を駆け抜けたどり着いた場所に病院がありました。ピンクのパステルカラーと白に近い黄色で塗られた外壁。外に取り付けられた階段や中庭に座っている人々、風が流れるように設計された建物。病院独特の重たい空気は感じられず、その日のグジャラート州の空のように真っ青で澄んだ空気が流れていた。お会いする職員の人々、お医者さん、生徒に先生、どの人々も笑顔が素敵で柔らかさがあり、誇りを持って働いているようにみえた。

 SEWA Rural (Society for Education, Welfare and Action–Rural)と名付けられたその病院は1980年に地域の人々の力によって建てられた病院である。グジャラート州の中でも特に貧困層が多く、識字率が低い地域でもあるジャガディアにとって病院ができたのは大きなことであり、多くの村で若くして亡くなってしまう確率がものすごく減ったそうである。SEWAruralが行なっているの医療だけにも留まらず、その地域の村の人々が手に職をつけられるようにと洋裁や医療などその場所でも自宅でも働くことができるように勉強や研修ができる施設も運営をしている。仕事ができるようになったらその場所で働くこともできるし、自宅で働くこともできる。多くの村の女性たちの活躍の場を作ることにも大きく貢献をしているのだそうだ。そして村の女性たちが職業を得るために勉強や研修をしている時に子どもたちも一緒に来ることができる。子どもたちは同じ施設で運営されている学校で勉強することができるのである。

 学ぶことが、働くことにつながり、働くことが自信につながり、人々の輪や土地、環境をより良いものにしているのを目の当たりにすることができた。そしてどんな貧困に悩んでいる人でも救っていこうという強い意志と行動がその場所の澄んだ空気感を漂わせているのかもしれない。

 マハトマ・ガンディーやスワミ・ビベーク・アナンダの教えや考えを軸とした施設運営。柔らかさと凛と引き締まった雰囲気がとても心地良く、私もその一員でありたいと思えるような場所であった。

 彼らは仕事をしに来ているのではなく志事をしに来ているのであろう。

 教育と福祉、そして行動。そこで作られているパパドはとても美味しいのである。

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