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モルディブフィッシュと鰹節

スリランカと日本。ともに海に囲まれていて魚やイカ、エビなどをよく食べる。毎朝のように魚市場では獲れたてで新鮮な魚たちが並んでいる。魚が並んでいる横に少し見慣れた形状のものが並んでいる。「鰹節」である。スリランカでは古くからモルディブ諸島より鰹節を輸入したり、製造したりしている。スリランカで売られている鰹節は「モルディブフィッシュ」や「ウンバラカダ」と呼ばれ、生のカツオの内臓を取りのぞき、頭を切り落とし、皮を剥いだものを塩水で茹でて日本で生利節と呼ばれている状態のものを作り、それを燻煙し数日間天日で乾燥させる。ここまでは日本で荒節と呼ばれているものと似ている。日本ではこの荒節にカビ付けなどをしてさらに風味をよくしている。そのことによってより長期間保存できるらしい。

使い方も少し異なり、モルディブフィッシュは細かく刻んでスパイスの一種のように調理に活用していく。何にでも入れるわけではないようだが野菜料理にはよく使われているような気がする。最近よく作っている人参のサンボルという刻んだ人参、ココナッツファイン、青唐辛子にカレーリーフなどを和えたものに加えてよく混ぜ、ライムを絞って入れるとこれがまた美味しいのである。鰹節に含まれるイノシン酸と言われる旨味成分がライムの酸味、ココナッツの甘味、青唐辛子の辛味、素材の苦味そしてスパイスを引き立たせる塩の塩味に加わり、五味+旨味となりスリランカ料理を美味しくしてくれているのであろう。そして「旨味」つながりの日本ではじわじわとスリランカ料理が人気になっているのも納得である。

モルディブ諸島やスリランカの鰹節(モルディブフィッシュ)の歴史は古く14世紀ごろまで遡ることができる。16世紀ごろから鰹節が使われるようになった日本にももしかしたら海を渡ってスリランカから伝わったと考察している人もいるそうである。陸のシルクロードのように昔、東南アジアからインドの南を通りアフリカまでを通る海のシルクロードならぬ海のスパイスロードというのがあったと言われている。シナモンや胡椒などはそのスパイスロードを通り、様々なところに渡っていったと言われている。もしかしたら鰹節の文化も海のスパイスロードを遠り、はるか遠くの様々なところに渡っていったが現在では日本とスリランカでのみ残っているのかもしれない。周りを海で囲まれ、海の幸、山の幸をともに楽しむ文化が鰹節を受け入れ、独特で深い食文化を形成していったのかもしれない。

第2次世界大戦後、日本と国交を結んだ最初の国の一つであるスリランカ。1951年にサンフランシスコで当時のセイロンの大統領ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナは「憎悪は憎悪によって止むことはなく、愛によって止む」というブッダの言葉を引用して日本に対しての賠償請求を放棄し、日本の国際社会の復帰を求め訴えたと言われている。

お互いの食文化からつながる交友関係。美味しいものは幸せな時間を生んでくれると信じている。


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