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名盤と人 第1回 サザン・ロックへの誘い 「Brothers and Sisters」 オールマン・ブラザース・バンド

音楽と人が好きだ。ミュージシャンとミュージシャンとの出会いから別れ、成功と苦悩を名盤を通して書き連ねるシリーズ企画。

リーダー的な存在のDuane Allman亡き後、Dickey BettsとGregg Allmanの間で勃発した主導権争い。
「Brothers and Sisters」でChuck Leavellが新メンバーとして加わり、何とか危機を打開する。
バンド最大のヒットとなるが、長くは続かなかった。

Brothers and Sisters

「サザン・ロック」
もはや死語となったこのワードは「サザン・オールスターズ」というバンドの語源とも言われている。

1970年代にアメリカ南部でブルースを基調にしたバンドが多く登場し、それらを総称して「サザン・ロック」と名付けられた。その代表が今回紹介するAllman Brothers Band(オールマンブラザーズバンド)であり、最も商業的に成功したのがアルバムがこの「Brothers and Sisters」である。

1973年に発表された「Brothers and Sisters」はBillboardで初の1位獲得を成し遂げ、後にはプラチナディスクに認定されている。シングル「ランブリン・マン」(Ramblin' Man)もBillboard Hot 100で2位を記録するなど、アルバム志向の彼らにとって最大のヒット曲となる。

自分がサザンロックを聴くきっかけもこのアルバムで、ラジオから流れる「ランブリン・マン」の親しみやすいメロディにまず心奪われた。
カントリーポップ調のこの曲はギタリストのDickey Bettsの作でボーカルも彼が担当している。
商業的に成功、と強調したのは、後世の評価では彼らの最高傑作は1971年の『At Fillmore East』(フィルモア・イースト・ライヴ)と言われており、結局彼らはこの商業的な成功を頂点にその後は下り坂となって行くのは皮肉なものである。

オールマンブラザーズバンドの実質的なリーダーであったDuane Allmanが71年に事故死、その後はセカンドギタリストのDickey Bettsが主導権を握り、また鍵盤奏者のChuck Leavellが新メンバーとして加わることでこのバンドは新しい局面を迎え、そしてこの「Brothers and Sisters」がリリースされた。
ツインギター、ツインドラム、ベース、キーボードの編成が、ツインドラム、ツインキーボード、ベース、ギターに様変わりする。
Dickey Bettsが4曲も提供し、Duane亡き後の新たなリーダーとしてのポジションを確立した。

そして、「ランブリン・マン」と同様にDickeyが作曲し、Chuck Leavellのピアノがフューチャーされるのが「ジェシカ」(Jessica)である。
これまたブルーズと言うよりジャズ・フュージョン・テイストのインストルメンタルナンバーで、今ではテレビ番組等のBGMの定番としてもお馴染み。Chuck Leavellはその後にRolling Stonesのツアーメンバーとして抜擢され準メンバー的に活躍する存在となる。彼のピアノがリード楽器として活躍するのもこのアルバムと特徴となっている。

アルバムはブルーズ一辺倒ではなくカントリー、フュージョンなど多様な音楽がミックスされており、入門編としてサザンロックに触れるには最適な作品でもある。

そもそものリードシンガーであるGregg Allmanボーカルの曲もあるが、Dickeyとの確執や麻薬によって精神的には落ち込んでいた時期らしい。
むしろそれが良かったのか、コテコテのブルーズと言うよりポップでライトなブルーズナンバーが多く、サザンロック入門者である自分にも入りやすく、当時の愛聴盤になって行った。

今でも最も好きなのがGregg作の「Come and Go Blues」。
この作品の中ではブルーズ色の濃いナンバーだが、Duaneのいた時代の緊張感溢れるものではなく、Greggを象徴する「レイドバック」感のあるリラックスしたテイストがたまらなく良い。
彼らの売りであるツインドラムを生かした変則的なリズムとうねるベースを背景に、Chuckのピアノのソロが躍動し、その後にギターソロが展開、一体感のある成熟したオールマンの演奏が満喫できる。
再結成後も彼らのライブでの定番となる。

初期の彼らはDuane Allmanのスライドギターを主軸にインプロビゼーションを打ち出した長尺の曲が多く、ブルーズに馴染みのないリスナーからはハードルが高い存在でもあった。
聴きやすさと言う意味で歌と演奏のバランスが良く、バラエティに富んだ曲が並ぶ「Brothers and Sisters」からまず聴き始めるとサザン・ロック理解の導入になるだろう。

「サザンロック」はオールマンの人気が巨大化することで膨張し、民主党カーター大統領の支援に参加するなど政治活動にも関与し、レイナードスキナード、ZZ TOPなど多くのバンドが乱立し一時代を築く。

その後はメンバーの対立などで脱退・解散を繰り返しながら、オールマンは消滅し、やがて「サザンロック」も時代から忘れられた存在となる。

サザンオールスターズの結成が74年で「勝手にシンドバット」でデビューが78年と言うから、まさにアマ時代に「サザンロック」の洗礼を受け、その憧れから命名したのだろうが、今では誰もその由来は知らないだろう。

参加ミュージシャン
グレッグ・オールマン - ボーカル、オルガン、リズムギター
ディッキー・ベッツ - ボーカル、ギター、スライドギター
チャック・リーヴェル - ピアノ
ベリー・オークリー - ベース(on #1, #2)
ラマー・ウィリアムズ - ベース
ジェイ・ジョハンソン - ドラムス
ブッチ・トラックス - ドラムス
ゲスト
レス・デューデック - リードギター(on #2)、アコースティック・ギター(on #6)
トミー・タルトン - アコースティック・ギター(on #7)

「Brothers and Sisters」
 The Allman Brothers Band

Side one
1.Wasted Words(Gregg Allman)
2.Ramblin' Man(Dickey Betts)
3.Come and Go Blues(Gregg Allman)
4.Jelly Jelly
Side two
1.Southbound(Dickey Betts)
2.Jessica(Dickey Betts)
3.Pony Boy(Dickey Betts)





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