人格障害をはじめ全ての精神病名は虚像に過ぎない
【読書感想文】Amazonレビュー
人格障害論の虚像―ラベルを貼ること剥がすこと
高岡 健 著
たいへん素晴らしい本だ。
輸入一辺倒の日本の精神医学を批判的に考察し、人格障害とは、社会や家庭の問題を個人の問題に還元することによって、社会や家庭の責任を免責し、個人に責任を負わせるという構造を示し、みごとにぶった切っている。「人格障害」が原因といわれている猟奇殺人や凄惨な殺人がなくならないのも、いつまでも問題を個人の病気という因子に背負わせて深く考えようとしない浅はかな社会の方向に問題があるのではないか?
最近では人格障害という概念は廃れ、発達障害や自閉症スペクトラムが中心となっている。
これらも、症状や問題を社会や家庭が担うのを回避させ、個人因子に背負わせるという点で、人格障害の診断と同じ構造になっている。親は育て方の間違いから解放され、社会は個人の病気だというレッテルを貼ることで「医学」の問題に矮小化しているに過ぎない。
たとえ、「人格障害」や「発達障害」が個人の因子と断定されたところで、治療モデルでは治す術はないし、根拠のない投薬治療が行われて、薬害や副作用で人格や発達が崩壊させられているのが今の現状である。
本書の後半では、米国の精神医学が、精神分析学が、時間がかかり「科学的根拠び乏しい」という理由で廃れていき、代わりに遺伝などをデータ的に解析した、ともすれば優生思想にも至りかねない遺伝子決定主義が跋扈し、日本に輸出された(そもそも日本では精神分析はされていないが)というくだりがありなるほどと思った。
いずれにせよ、本書は「人格障害」の概念と診断の仕方、考え方がリアルに書かれており、それが個人の人権や犯罪の防止、問題の解決に役に立っていないことが繰り返し書かれていることに意義がある。そしてそれは、人格障害にとどまらず、発達障害をはじめ、最近のなんでも統合失調症、双極性障害など精神医学の考え方、診断そのものが虚像であり、都合よく利用され、個人の人権が抑圧され、多くの事件を発生させていることを十分に感じさせる内容となっている。
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