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ラクロッサーの危ういトレーニング風潮

今回は私が危惧しているラクロスのトレーニング風潮というお話です。
某協会が主催するセミナーに出てきたので、そこでの個人的な感想も踏まえて書きます。内容自体は素晴らしいものだったのですが、なんか腑に落ちない。。結論から言うとフィジカルトレーニングとピリオダイゼーションを駆使して、数値的評価でパフォーマンスの最大化、観える化を図ればパフォーマンスは向上する。。というところです。そして、トレーニングを考えたときに身体関係のみに焦点を当てた考え方も疑問だということです。その辺を詳しく書いていこうと思います。

受講しての感想

2名の講師の方が説明してくださったのですが、どちらとも素晴らしいものでした。ちなみラクロス関係者とラクロッサー(学生と社会人)のみが受講できた。有料級の内容だったので受けてよかったと思える内容でした。感謝です。特に後半の先生の内容は個人的に興味深く、スポーツ選手における体力の構成要素についてわかりやすい図が非常によかったです。

しかし、私としてはどちらも腑に落ちない。違和感しか覚えない。
なぜならば、評価バッテリーを使い数値化することでパフォーマンスの最大化を図るとしていたからです。そこには『質』が抜けている。

言いたいことはわかる。研究していくうえで数値化することは非常に重要だし、数値はモチベーションにもつながりやすい。どちらの先生もラクロスというスポーツの構成要素(動きの部分のみ)を抽出し、運動構造に落とし込み必要なパワー、スピード、のトレーニングを最終的に提案していた。

時間内だからバランス能力やコーディネイション、柔軟性、スプリント、メンタルや持久力についてはさわり程度で筋力トレーニングに9割フォーカスした内容に感じた。メニューの提示のみで、どの動作で主に使われ、どうのうようにメニューを行ったほうが良いのかまでは到達できなかったのが残念でした。そこまでの時間はないからしょうがないとそこは納得。それでも違和感が残った。

違和感の正体

上記で述べた通り、内容の9割が筋力トレーニングにフォーカスされた内容になっていることが非常に違和感だった。私も筋力トレーニング自体は肯定派だ。ケガの予防でもハードウェアに相当する身体の強化はなによりも重要である。

しかし、今回の内容は選手に誤解を与えたのではないか?と違和感を覚えた。事実、選手から出た質問は筋力トレーニングに偏ったものが中心になった。結局、ケガの予防もパフォーマンスを上げるのも筋トレと評価による数値が上がっていることが大事と誤認識を与えたように思えた

ある時期に合わせて、初期の数値をとっておき、ベストを出したい時期に再度数値を図るからそれまでにトレーニングして上がるように頑張ろう。みたいな感じに選手は思っただろう。私もそう感じた。
筋トレによる項目(握力やベンチプレス、スクワット)といった項目の数値の向上=パフォーマンスが上がっていると学生に誤解させていると感じた。

しかし、本来は数値はどうでもよいのだ。ラクロス選手は重量挙げの選手ではない。

(まぁ、確かにやっている選手とやらない選手では雲泥の差がでるのは間違いないし、男性は重量があがることにモチベがあがる傾向が強いが。。)

シュートが早くなればいいし、クロスを使ってでのスプリントが早くなればよい。ダッジがキレキレになれたらうれしい。大事なのは選手自身が動きの質が向上して、思うがままにプレイができる、プレイの幅を広げられる、ひいては理想像に近づける。

これが個人のパフォーマンスの最大化である。

そして、この個人のパフォーマンスをより複数人で構成したときに個人のパフォーマンスを落とすことなく、相乗効果を得られるようにしていくことが本来コーチが提供する練習メニュー(組織練習)にあたる。

トレーニングの考え方(大枠)

トレーニングを考える上でまず、大前提として必要なのは競技構造の把握である。その中には二つに分解できる。
1.内的環境
その競技特有の動き方、体の使い方、アウトプット傾向、それをアウトプットするのに必要なハードウェアができているか。
2.外的環境
道具の有無、道具の特徴、グラウンド環境、競技人数、ルール、コンタクトのあるなし、ポジションなど

この競技構造をしかりと洗い出すことが何よりも重要である。これがないと競技や動作に身体を適応させるという本質を欠いてしまう。

次に選手の理想像です。

多くの選手がこれを持っているはず。ここにどれだけ近づけることができるかがトレーナーやコーチのお仕事ともいえる。
この時に大事なのは、この理想像にすべて身体的動作だけが上がってくることが多い。
始めはそれでも良いかもしれない。しかし、1-1コーチングをしていく中で、それを達成するために必要なマインドセットや生活習慣、服装、コミュニケーション、といったことまで含めて理想像として落とし込むことが大事です。できれば、現在の延長線上ではない理想像。非常に高いエフィカシーを持ってほしい。

後は現状の把握。

パフォーマンス向上=問題解決=(理想像 ー 現状)

それをどれだけ項目を出すことができ、そこに取り組めるか。

ここでまで来るとなんとなくわかってくると思うのですが、トレーニングにおいて重要なのは筋トレじゃないってことです。

重要なことは3つ

1.動きを作ることをトレーニングする
2.理想像に必要な出力があれば十分である

→例えば、対人競技でコンタクトあるならば、それに必要な動作の中で筋力トレーニングを行うべきである
3.外的な認識が必ず必要となる、内的イメージだけに囚われるな
→例えば、ラクロスならボールダウンに対する反応速度になる。音(声による)反応速度。相手の身体の動きに対する反応速度が重要とか。外的認識における反応速度だけとってもこれだけ違いがある。

方法(メニュー)が重要なのではなく、本質ととらえられているか

これに尽きる。パフォーマンスの数値化は、この本質を最も遠ざけてしまうように思える

すべては選手のパフォーマンスアップのために

今のラクロスを取り巻くトレーニングの環境は筋トレありきになっている。

果たして、それでいいのか。。

この筋トレありきの要素還元主義的なマインドは20~30年前のサッカーと同じである。これがこの時代のスポーツの考え方のスタンダードであってはならないと私は思う。

悲しいことにラクロスに関わっているトレーナーの大半はサッカーも指導していますって人は多い。それにも関わらずこういった傾向が出ていることが嘆かわしい。

私が所属する某トレーナー団体はこう訴えている。

『すべては、選手のパフォーマンスアップのために』

人の心身は複雑系だ。当然、パフォーマンスも複雑系だ。本当にパフォーマンスを上げたいなら、かなり深くまでその人に入り込まないといけないことも多々あるだろう。トレーニングを指導するってそういうことだと思う。断じて、方法論とメニューそれで終わってほしくない。


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