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ディック・フランシス「障害」を読んだ。(競馬推理小説)

イギリスの小説家で、元・障害競争の騎手の経験を持つ、ディック・フランシス

1920年生まれで、2010年に89歳で亡くなっている。

騎手としては1946年にアマチュア騎手としてキャリアをスタートし、その後プロとなり、1957年に引退。そして1962年に長編小説「本命」を発表し小説家となった

今日記事にしている「障害」は、1977年に書かれた、40以上あるフランシス作品の16作目。

・・と、以上Wikipediaを参考に書きました。


実は、ディック・フランシスの小説を読んだのはこれが初めて。

結構前から何冊か入手したのに、典型的な「積読」状態になってしまっていた。

ディック・フランシスのジャンルは、「競馬推理小説」。(このジャンル、他に誰がいるんだろう・・?)

競馬も好き、ミステリーも、まあ好き。このふたつの合わせ技、嫌いな筈がない。でも、なぜか読む優先順位を下げてしまっていた。


今回、ようやく読了できた。

きっかけで言うと、このnoteだったりする。

以前、俳優の矢崎滋さんのエッセイ「ボクの、こだわり」を読んでその読書感想を記事にしたのだが、このエッセイの中で、矢崎さんが、「ぼくはディック・フランシスも読んでない人を競馬ファンとして認めない。」と書かれていた。

別に、矢崎さんに競馬ファンと認められたいわけではないのだけど、一冊ぐらい読むか!というきっかけになったのは確か。


以下がその記事です。


「障害」。

読んでみての感想、

いや、面白かった。

小説の主人公、ローランド・ブリトンは本業は会計士で、アマチュア騎手として、時々障害レースに乗っている。そして、騎手ならではの人脈で、会計士としての顧客は競馬関係者が多い。という設定。

小説全体の、競馬の部分ーレースに出場したり、厩舎関係者や、馬主との絡みの場面だったりは、それほど多くない。

しかし、騎手であるからこそ、事件に巻き込まれるというか、騎手だからこそ、犯罪者の罠にかかってしまう仕掛けになっている。(一応、「ネタバレ」にならないように書いています。この記事を読んでこの小説を手に取る人はいないかもしれないけど・・。)


物語の核となる事件以外の部分で、騎手だったからこそ書けるんだろうな、と言う部分を引用してみる。

(レースに勝ったあと)胸の中で何かが破裂したようにわき上がってくるこの歓喜は、他のいかなることによっても味わえない気分だ。・・(中略)・・やめる気には絶対になれないだろうな、と思った。五十になっても、このすばらしい夢を追って、泥と雨の中で死力を尽くしているにちがいない。

レースで勝利した歓喜は、何ものにも代え難い、ということだろう。

また、タペストリ、という、主人公の騎手とコンビで物語の中で大きな障害のレースを勝つ馬についての描写。

記者の意見によれば、タペストリは自分の思い通りに走るのが好きなタイプの馬で、なにもしないでただ乗っているだけのアマチュアがあの馬にはいちばん合っているのだ、ということであった。・・(中略)・・その記者のいうとおりだ。

これなども、元騎手ならではの描写だと思う。

あとは・・

競走馬の調教師は、みな、組織能力、経営能力のある事業家である。

これなども、現代の日本競馬というか、世界中の競馬に通じる、調教師という仕事についての普遍的な説明になっていると思う。


初めてディック・フランシスを読んだが、物語の随所に絶妙なバランスで競馬に関わるシーン、描写が出てきて、楽しく読めた。

競馬推理シリーズ、まだ40作品以上もあるが、ひとつひとつ読んでいきたい。

1977年発行

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