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「人間・始皇帝」感想。〜摘読日記_71(キングダムのネタバレ気にしない方にはおすすめです。)

先週、キングダムの実写映画第4作を映画館で鑑賞し、堪能しました。

原作を知っているのに感動できました。

その後キングダムを読み返したりしつつ、やや積読気味だったこの本も読了。

2015年初版



今週は、この本の感想を書いてみたいと思います。



「人間・始皇帝」、漫画のネタバレ気にしない人におすすめです。


秦国・始皇帝嬴政えいせいの生涯、中華統一の道、また死後の出来事、それらに対する後世の議論をまとめつつ、改めて「人間・始皇帝」の姿を浮かび上がらせる内容となっています。

正直、これを読んでしまうと、漫画の方のキングダムのこれからが大筋分かってしまうので、まっさらで漫画の続きを読みたい方にはおすすめできないのですが💦

私はちょいちょいこの本を読む前にも、漫画の主人公の李信将軍や、他の主要人物の生涯が気になったときなどにWikipediaなどを見てしまったので、本書も読んでしまいました。


史実を知った上で気になる漫画の行方。


*以下、秦の中華統一について、ネタバレ含みますのでご注意を。

本書「人間・始皇帝」を読み進め、やはりいちばん気になってしまったのは、漫画の方の登場人物の最期でしょうか。


丞相・李斯の最期がかわいそう。


特に印象に残ったのは、丞相・李斯りしのむごい最期でしょうか。

権力闘争に敗れ、最後は叛逆罪に問われ、胴体を斬られる腰斬という極刑に処されたということです。

李斯は、本書にもたっぷり描かれていますが、統一前後、特に統一後の活躍、功績が多大にも関わらず、悲惨この上ない最期です。

(ただし、始皇帝の死後の出来事なので、漫画の方では、おそらく統一が為された年で連載が終わる気がするので、描かれないだろうと思います。)


嬴政の子を産めなかった女の最期。


あとは、これは具体的な名前が出てくるわけではないのですが、始皇帝の後宮で子ができなかった者は多くが殉葬させられたそうです。む、むごい・・。

漫画の方で後宮の女性で「陽」という存在感のある女の子が出てくるのですが、嬴政の子はどうやら産まないようで、史実に照らし合わせると殉葬させられてしまうわけですが、まあ、これも漫画の方では描かれないと思います。

ちなみに、史実では26人子どもがいたという嬴政ですが、漫画では陽の親友の向という女の子が懐妊したほか、もう一人懐妊した事がさらりと描かれるだけで、それ以外の子どもは今のところ出てきてないと思います。

漫画では嬴政は「向を大事にする男」として描かれています。この辺は、一途な男として現代の読者に受けがいいような設定のように思います。

主人公・李信のその後。


あとはやはり、主人公・李信のその後が気になります。

史実では統一戦争の最後の方はそれほど活躍していないようで、漫画で信と同世代で一緒に成長していく蒙恬もうてんの方が、歴史に残っている功績は大きいようです。

蒙恬は、嬴政の信頼がかなり厚かったようで、統一後の匈奴との戦争でも30万の軍隊の将軍を務めたそう。

史実上では趙や楚との最終戦争で活躍が乏しい李信が、漫画の方で今後どう描かれるのか、思い切った書き換えがされるのかは、楽しみなところです。

(個人的には思い切り振り切って欲しいなと期待です)。


中華統一の難しさ。


最後に、本書を読み強く印象に残ったのが、「中華統一」の難しさです。

秦の中華統一は為されたものの、嬴政の死後三年で秦は滅亡してしまいます。

六国を滅ぼして統一を宣言しただけで中華全体に統一の事実が浸透し受け入れられるわけではありません。

嬴政は統一を果たした後、病で死ぬまでの12年間、皇帝の威信を各地方の民衆に直に伝えるための地方巡行を5度行い、一方では、国としての一体感を高めるため、北の匈奴や、南方の百越との戦争にも挑んだそうです。

そして、5度目の巡行の途中で病に倒れ死去します。

巡行ルート。
本書は、地図や史料が多いのも嬉しいです。


嬴政亡きあと、策謀で李斯を葬り丞相となり、二世皇帝を自殺に追い込むなど暗躍した趙高という人物がいます。(漫画の方ではかなり改変され出てきます。)

しかし、策謀家の趙高は、始皇帝の生前からよく仕え、”始皇帝の死をだれよりも身近で受け止め、始皇帝亡き後の秦の政治の行方を動かすことになった(p.204より引用)”人物だそうで、何とも皮肉なことだと思いました。

趙高は、二世皇帝よりも死んでしまった始皇帝を中心とした帝国の建設を目指し、始皇帝の廟を歴代の秦王たちの陵墓や廟の中心に配置するなどして神格化し、秦帝国の崩壊を防ごうとしたそうです。

嬴政の後継者である二世皇帝や子嬰しえいを立てて、中華統一という大事業を継続させようと図るものの、結局は彼に忠誠を誓う将軍や軍隊はおらず、最後は自らが立てた子嬰に疑惑の目を向けられ、殺されてしまいます。

嬴政の死後は、内政も外交もがたがたで崩壊してしまうわけですね。

中華統一という大事業の難しさ、それに挑んだ嬴政や臣下たちの強烈な意思と行動力に改めて感銘を受けました。


長くなってしまいましたが、本書を読んだことで、漫画の方もますます続きが楽しみ。(もちろん映画の続編も。)

同じ著者で、最近出たばかりの新書もあるようです。

もうネタバレを気にしていない私は、これも読んでみようかなと思ってます。

キングダムの原泰久先生推奨で、帯の推薦コメントによると、「ネタバレ必至です!(汗)」だそう。

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