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働きながら放送大学を卒業する

 働いていた時期、働いていない時期がまざっているので、タイトルは必ずしも正確ではありませんが、少なくとも2019年度は一人暮らしをしながらフルタイムで働いていました(月の労働時間は平均して180時間前後)。その経験から卒業までの過程を記してみたいと思います。入学を検討されている方の検討材料になれば幸いです。

単位取得の経過

 前半では、まず、私の単位取得履歴を示しながら、卒業までに考慮しなければならないことについても触れていきたいと思います。
 私は高校卒業後一浪して入った大学を2年終了時に中退していました。そのため、2年生として編入学することになりました。どうして2年終了時に辞めたのにもかかわらず、3年次編入でないのかというと、元の大学の2年次秋学期は休学していたためです。ひとつめの大学では、約50単位ほど取得していましたが、放送大学から持ち越し単位として認められたのは31単位でした。なお、何単位持ち越されたかどうかは、入学時の科目申請段階ではわからず、1学期の途中で明らかにされます。

受講した科目のテキストの一部

■ 2019年度:20単位取得(計51単位)

1学期:放送授業4科目(8単位)
2学期:放送授業6科目(12単位)

 放送授業だけなのは、有給を取れないような職場で労働していたため、なかなか取りたい科目に合わせて休むのが難しかったからです(とは言え、この段階では問題を先延ばしにしたに過ぎないのですが)。2019年度終了時で、取得単位数、51単位(残り73単位)というところです。
 通学の必要がないとは言え、テキストを読み、中間テストにあたる通信課題と期末テストにあたる単位認定試験をクリアするというのは、それなりに日常生活に負担を強いるだろうと予想し、まずは4科目(8単位)から始めました。4科目では多少の余裕あったため、2学期には6科目(12単位)に増やしました。

1学期あたりの単位の目安

 ここで私の体験記から外れてやや一般的な話をしますと、放送授業については1学期あたり6科目というのをひとつの目標にすると良いかと思います。124単位を4年で取って卒業する場合でシミュレーションしてみましょう。まず1年あたり必要なのは124 ÷ 4 で31単位です。さらにこれを2で割って、15〜16単位が1学期あたりに満たすべき単位数であるとわかります。放送授業を6科目取れば、12単位です。これに面接授業(※1)かオンライン授業(※2)を3〜4単位分加えれば、15〜16単位となります(働いていて面接授業に行くのが難しいという人もいるかもしれません。ご心配なく、どうにかなります。この後で説明していますのでこのままお読みください)。

(※1)放送大学では放送大学の教授や他大学の教授、あるいは非常勤講師などが対面での授業を行います。それを「面接授業」と呼んでいます。
(※2)授業、課題提出すべてがウェブ上で完結する授業のことです。ちなみに、放送授業はかならずしもTVやラジオで聴かなければならないというわけでなく、オンライン上ですべて視聴することができます。放送授業のオンライン受講も可能というわけですが、それと「オンライン授業」は別のカテゴリーであることに注意してください。

 繰り返しになりますが、放送授業で12単位(6科目)+面接授業かオンライン授業で3〜4単位というのを8回繰り返せば卒業となります。こう考えるとかなりシンプルに感じられ、1回でもこの15〜16単位取ることに成功すれば、あとはそれを繰り返すだけなので、卒業の見通しが立って、だいぶ精神的にも楽になるのではないのでしょうか。ただ、私の場合はだいぶそれとは違う極端なルートになりましたが。
 なお、学費についてですが、放送大学は1単位5500円(税込み)で計算できますので、16単位分申請するには、88000円必要となります。学期が始まる前に、一括で振り込みます(入学の際には入学金が追加でかかります)。ですので、普段から月に15,000円を学費として貯金しておく必要があるでしょう。月額15,000円のサブスク、と考えると高く感じるかもしれませんが、卒業に必要な合計金額が70万円というのは、理系の私立大学の半年分の学費よりも安いです(つまり8分の1以下)。

■ 2020年度:62単位(計113単位)

1学期:放送授業21科目、オンライン授業3科目(47単位)
2学期:放送授業6科目、オンライン授業2科目(15単位)

 1学期の単位数を見てこれはおかしいのではないかとお思いになった方、あなたがそう思ったのは間違いではありません。とは言え、私の記述にも間違いはありません。2020年になった時点で、私は当時働いていた職場を辞め実家へと引っ込み、4月からはひとまず単位を取れるだけ取ろうと計画していました。1月に辞表を出し、3月に退職しました。コ口ナ禍はこのあいだに始まります。とりあえず学業に専念するにあたり、急いで100単位に乗せたいと言う思いがありました。50単位分登録しましたが、面接授業がコ口ナ禍により、中止になったこともあり、100単位には届きませんでした。なお、在学生の読者に向けてやや弁解めいたことを申し上げれば、科目を登録した時点では、単位認定試験を自宅で行うというアナウンスは出ていませんでした。
 2学期についてですが、ほぼ100単位取得済みとなったことで、ゴールが見えて来ました。実は夏の段階で、私はそのまま院試を受けようと考えていた時期があります。しかし、制度上それが不可能であることがわかりました。というのも、124単位をどれだけの早さで取得しようが、全科履修生であるかぎり、4年は在籍しないといけないからです。つまり、私の場合、2019年度の2年次編入だったため、2021年度に4年生になるわけで、最短でも2022年3月の「卒業見込み」になるしかなかったのです。というわけで、2学期中に124単位に届かせる必要がなくなり、放送授業6科目、オンライン授業2科目を登録し、計15の単位を取得しました。
 また、上のことに関連して、放送大学の全科履修生入学を少しでも迷っているのであれば、とりあえずは籍を入れておきましょう、ということが言えると思います。私の場合、極端ですが、2018年に1単位分だけでも登録して入学しておけば、2020年度で卒業が可能でした。単位は急いで取ることはできますが、在籍年数は時の経過を待たなければいけません。ただ在籍しておくためには、1学期あたり5500円の出費となります。しかしこれは、各種学割であっという間に元が取れますし、さらには「電子ブック・電子ジャーナル」なども考慮すれば、体感的には数万円の黒字にすらなります。

「授業形態にかかる卒業要件」を満たすために

 ここでオンライン科目について触れておきたいと思います。なぜ2020年度からオンライン科目を登録し始めたのかと言うと、これは「面接授業」の代わりです。詳しくは大学のここのページを見ていただきたいのですが、学士号のための計124単位の構成を間違えると、学士号をもらえない(卒業できない)ケースが出てきます。その構成に関わる規定が、「科目区分にかかる卒業要件」と「授業形態にかかる卒業要件」として2種あります。このうち、「授業形態にかかる卒業要件」が何を言っているかというと、124単位のうち、放送授業で最低でも94単位、オンライン授業と面接授業を合わせて最低でも20単位は取っておけよ、あとの10単位は好きにしなよ、ということを規定しているのです。
 すなわち、コ口ナ禍で面接授業の先行きが不透明だからといって、面接授業を受講しないままだと、卒業できないのです。けれども面接授業の開催可否が不明な状況には代わりなかったため、オンライン授業で代替した、というのがこの2020年度からオンライン授業も取り入れた理由です。仕事のスケジュールと面接授業の日程が合わないと言う人も、オンライン授業をメインに単位を稼げば、卒業のための20単位を稼ぐことができます。それでも、面接授業がまったくない、というのは寂しいと思います。私は結局、面接授業を1つしか受講できませんでした。それがちょっと心残りです。こうして、2020年度終了時には、113単位取得済みとなり、残すところ11単位というところまで来ました。
 ここで、2021年度に移る前に、「科目区分にかかる卒業要件」にも少しだけ触れておきます。これは、自分の所属コース(※3)に関わる科目でちゃんと単位を取っているか、ということに関わる要件です。入学するにあたり、どの所属コースにするか迷われるかと思いますが、とりあえずこれかなって思うところに入っちゃって全然問題ないです。なぜなら、コース変更は書類提出で簡単に済むからです。本当に簡単に済みます。なので、とりあえずは自分の関心と重なるコースに入れておきましょう。私は「社会と産業」コースで入学しましたが、自分の登録する科目が「人間と文化」が多くなってきたのを見て、「人間と文化」に移動しました。

※3 放送大学における学部のようなもの、とお考えください。現在は「生活と福祉」「心理と教育」「社会と産業」「人間と文化」「情報」「自然と環境」の6つがあります。放送大学は入試がありませんので、自分が希望するコースにそのまま入ることができます。。

■ 2021年度:11単位(計124単位)

1学期:放送授業4科目、オンライン授業2科目、面接授業1科目(11単位)
2学期:なし

 ここまで来ると、あとは卒業要件にかかわる調整段階です。1学期に私は慰め程度に面接授業を1科目だけ受けました。面接授業、どんな感じかなと思って少し期待して行った部分もあるったのですが、やはりと言うべきか、市民カルチャー講座っぽかったですね。それじゃつまんないなと思って、授業の直前に読んでいた森嶋通夫の『日本はなぜ没落するか』の43頁(岩波現代文庫版)に感化されていたのもあり、リアクションペーパーでイキったりしました。生意気だと思われたらCとかつけられる可能性もあったなか、結果としては最高評価もらえました。というか、これは心の広い先生——「「偶然」の思想」の馬場智理先生——に感謝です。最後の授業の終わりには向こうから話しかけて下さり、20分ほど授業の内容に関連して話し合うことができました。ただ、そのせいでこちらから声をかけようと思っていた隣の学生に話しかける機会を失ったのですが。
 先に「カルチャー講座っぽい」と、若干難癖つけましたが、卒業研究のゼミだともう少し雰囲気は違うのかもしれません。卒業研究のゼミに所属するためには、前年の夏季休暇中の短い時期に申請を済ませなければならないので注意してください。私は卒業研究を検討していましたが、申請時期を普通の科目申請と同時にすればいいと思ってしまっていたため、申請を行うことができませんでした。

 2学期には授業を受けず、124単位を取得したいまは、卒業を待っているという状況です。ここまでがこの記事の前半にあたります。これより後では、受講に際して工夫にした点を書いていきたいと思います。

成績はA以上が並ぶに越したことはない……

確実に単位を取るための工夫

すべての講義を視聴しない

 ここで、かなりぶっちゃけたことを申しますが、私は科目登録した授業のすべての講義を聴いておりません。中には、単位でA◯をもらっておきながら、一度も聴いていなかった科目もあります。これは個人的な理由とそうでない理由の2つがありますので、説明します。
 まず、個人的な理由として、私は耳から入ってきた情報というのを処理するのがあまり得意ではありません。本当に腰を据えて自習というものをするようになった高校3年までの成績は壊滅的でしたし、1浪して最初の大学に入った後も、教室の授業というものは苦痛であることが多かったです。これはいわゆる発達特性的なものとお考えください。放送大学の放送授業を聴かずに単位を取る、というのは大学本部からクレームが飛んできそうな事実を私は表明したことになりますが、いちおうそうしたエクスキュースがあるため申し上げます。
 2つ目の、個人的でない理由についてですが、これは放送大学のテキストと放送授業の関係に由来します。すべての授業がそうではないのですが、放送授業の内容というのは、おおむねテキストの内容と変わりません(対話形式にしたり、ゲストを招いたり——飯尾潤氏の授業を見ていたら受講時に首相だった菅義偉代議士(なお授業収録時は首相在任時より前)がいきなり登場してびっくりした——色々工夫はされていますが)。中にはほとんど教授が読み上げているだけのような授業もあります。よって、わざわざ放送授業を聴かずとも、履修した科目の講義内容の全体をテキストのみで把握できるようになっているのです。このことに気づいてから、私は放送授業を律儀に聴かなくなりました。ただし、注意は必要で、放送でしか述べられていないことをベースに試験問題が作られることが稀にあります。この見極めが不可欠となりますが、通信課題の設問やテストの過去問から、それが読み取れるようになっていますので、申請が通った科目については早めにその見極めを行うと良いでしょう。
 以上のことを白状することで要は何が言いたかったのかといえば、放送授業のための時間を必ずしも確保する必要はないということです。1科目あたり全ての講義をちゃんと聴こうとすると、全15講、各45分ですから、675分(11時間15分)かかります。しかも、単位を取得するためには、聴講時間意外にも、テキストを読む時間、通信課題を解いて提出する時間、単位認定試験の準備をする時間、試験を受ける時間などがかかります。放送授業を受けること自体は、単位に関わりません(一部のオンライン授業を除きます)ので、これは削減できるなら削減したいところです。というわけで、私はかなりの部分を削減し、テキストを中心に学習してしました。私は読むのが遅いのですが、それでも1講あたり(テキストの1章分あたり)、マーキングしながらでも30分で済ませていました。授業を律儀に受けて、テキストを読んで、という仕方の半分の時間で済むのです。フルタイムで働いている場合、生活のこともありますから、なるべく外部要因に時間は削られたくないわけです。なので、わざわざ言わなくてもいいことかと思いますが、律儀に全ての放送授業を受けようとしないでください。これは別のところでも触れるかもしれませんが、放送大学のテキストというのは、良くも悪くも、かなりうまくまとまっており、それさえ読んでおけばいい、というようになっているのです(付言すれば、この気づきが私の中での「資格としての学位」という割り切った考え方を強化しました)。

単位認定試験で「持ち込み可」の講義をうまく取り入れる

 コ口ナ禍のため、試験方式は大幅に変わってしまいましたが、本来であれば放送大学の期末試験は、各々の学習センターを訪れて受けることになります(ちなみにですが、所属学習センターと試験を受ける学習センターを分離することは可能です)。この辺は各種検定試験や、入試などと似ているわけですが、放送大学の単位認定試験のなかには、テキストやノートを持ち込み可としている授業がそれなりに多くあります
 持ち込み可であることによって、むろんテストの負担はかなり減ります。本来であれば暗記しなければいけないところでも、テキストの「アタリ」をつけられるようにしておくだけで、だいたいは解くことができるからです。とは言え、油断しないでいただきたいのは、「持ち込み可」であっても、それなりにテキストを読み込んでいなくては、本番中に問題を解き切ることはできないということです。ぜんぶ視聴しない代わりにテキストを熟読する、というのは先にも述べましたが、問題文を読んで「アタリ」をつけるためにも、やはり熟読は避けられません。
 試験方式が変更になってしまった今では書いておく意味があるのかわかりませんが、来るべき新型コ口ナ「明け」のために記しておくと、「持ち込み可」か否かを判断する方法をお教えします。何と言うことはありません。放送大学では、ポータルサイトWAKABA上にて過去2、3回分までの試験問題が公開されています。「持ち込み可」か否かは、試験問題の扉のページに書いてありますので、ここを見て判断すればいいわけです。この点に関して、新規導入科目については、過去のリソースがないため判断がつきません。どうしても受けたい新しい科目は、基本的に「持ち込み不可」なのだと思って受けるしかありません。

 先に紹介した目標単位数、「放送授業で12単位(6科目)+面接授業かオンライン授業で3〜4単位」というのは、あくまで卒業に必要な単位数を8で割って算出した理論値でした。しかし、この目標は、現実的な目標ではあると思います。私自身の2019年度を思い出してみると、働きつつ、一人暮らしの生活を維持する中では、6科目(12単位)が限度だったと思います。限度というのは、どういうことかと言うと、日常生活や仕事に少しだけ支障が出てくるレベルになります。言える範囲でのことで言うと、たとえば、睡眠時間を削るとか、夕食が雑になるとか、そういう小さなことではあるのですが、こうしたものもチリも積もればで、やがて「ああ! 単位とかもうバカラシイ! 学位とか知らん!!」とか「うおお! こんな仕事やめたる!」とならないとも限りません(学業との両立の困難さが直接的な理由でないにせよ、結果として仕事はやめたのですが……)。なので、フルタイムで働く以上は、生活の方を優先するのがよいでしょう。4年で卒業する必要が必ずしもないのであれば、124を5か6で割ることも考えて計画を立てるのが良いと思います。私自身、セルフマネジメント的なものは苦手で自分の生活には甘めの、ぼーっとしがちな人間です。しかも睡眠時間は最低でも7〜8時間ないとキツイです。ただそれでも、TVなし、ゲームなし、SNSなし、レジャーなし、というハタから見れば一見ストイックな生活を送っていました。それでも、期末テスト(単位認定試験)のある放送授業は6が限度かなと思います。

GPA(成績評定)を気にするかどうか

 ここで最後に、重要な論点について触れておきます。成績についてです。私が「放送授業で12単位(6科目)+面接授業かオンライン授業で3〜4単位」と言うとき、登録する科目については成績評価ですべてA以上の評価を取ることを前提としています。私の場合、どうしてもこの点にこだわりました。これは最初の大学で、GPA(Grade Point Average、日本語だと「評定平均」と呼ばれるもの、多分)というものを強く意識させられた名残りです。
 私は最初の大学を2年終了時に中退しています。2年終了時で中退しているくせにGPAもあったもんじゃないだろうとお思いかもしれませんので説明しますと、私のいた学部というのは、2年次途中からの留学が強制の学部でした。この際の留学先は、2年次春学期までのGPAとTOEFL iBTで所定の成績を満たしているかどうかで出願の可否が決まって居ました。そのため、入学したての春学期から、やった大学生だ受験から解放されて遊べるぞなどと思うことは許されず、GPAについて真剣にならざるを得なかったのです。GPAというのは、基本的に取り返しがつきません。一度付いてしまったら、一生残り続けるといってよいものです。TOEFL iBTで68点だったから次は80目指していつか100点台に、というものとは違うのです。こうした意識を植え付けられていたため、私は受講した科目についてはA以上は取らなければならないと強く思ってしましたし、いまでも成績表を見返して、BかCの科目を見ると残念に思います。加えて、私が学士号(大卒資格)を欲しいと思った主なのひとつは、大学院に行こうと思った時に、勉強して院試に合格すれば行ける状態にしておきたかったからでした。大学院の可能性をも考慮していたために、私はGPAを非常に気にしました。
 しかし、もしこれを読んでいるあなたが、本当に学士号さえあればいいと思うのであれば、C以上の単位が取れる程度の成績でいいと割り切ることで、より多くの科目を取得できる可能性はあると思います。この点に関しては、自らのケースと相談して決めるのがよろしいかと思います。「Cでもいいからとりあえずは単位を稼いで学士号を取りたい」というのであれば、「放送授業で12単位(6科目)+面接授業かオンライン授業で3〜4単位」のハードルはむしろ低いと言えます。

振り返って

 2018年の冬に、大学に入り直そうと決めたとき、卒業までのロードマップを描くわけですが、先の長さに途方に暮れ、絶望的になりました。編入学はできそうであっても、どれだけの単位が認められるかはわからなかったですし、仮に20認められとしても、124単位を満たすには、1年に24単位(12科目分)を取れたとして、5年近くはかかるわけです。早くても卒業できるのは2023年3月の予定でした。結果としては、失業直後の2020年の半ば狂気にも近い大量受講が作用して、1年早まりましたが、決意してから4年はかかっているわけです。
 思い出話をするのを許してもらえば、最初の大学を辞めたのは2012年の冬でした。大学を辞める届出を出して、フランスに2週間旅行に行って、ニースのホステルの食堂にあったPCで大学職員と連絡をとって中退を確定させ、帰ってきて3日後くらいに東京マラソンを完走し、その3日後くらいに東京事変の閏日の解散ライブを武道館で見て、というような2月——こちらも半ば狂気にも近い——は、もう10年も前になるのです。ああ、10年間!! この10年間何があったのかと言えば、もう私には虚無しかないと思われます。完全な真空です。真空に何がないと言えば、それは距離で、真空パックに閉じ込められたサラダチキンとプラスチックの包装のあいだには、いかなる距離もないのです。距離がなければ時間もないので、つまりは、この10年間はあっと言う間でした。その間の4、5年というのもまたあっと言う間であり、要するに、入学を迷われているあなたが気を病んでいるその後の4、5年というのは大した時間ではないのです。私たちは絶えず、この「今」を生きつつ、多少の意志と意志に基づいた計画を携えて、時折、過去が真空としてしか存在しないことを嘆くことしかできないのです……。
 と、まあ、饒舌めかした筆致はここでやめておきましょう。とにかく、入学を躊躇っている暇があったら、まずは1科目だけ受講して籍だけ入れておきましょう。どうせあっという間に過ぎてしまうのなら、飛び込んでしまったほうがいい。

最後に

 これまで主に卒業のための単位の習得、という観点から延々と述べてきたわけですが、正直なところ、単位とか二の次だと思います。いや、もちろん、私も「資格としての学位」ということを明確に意識して、単位取得に固執してしましたのは事実ですよ。
 でも、やっぱり肝要なのは、出会えるかってところだと思うのです。それは学友かもしれないし、先生かもしれないですが、とにかくその人と出会えさえすれば、これを読んでいるあなたにとって放送大学が「最初の大学」、つまりは中退して数年後に別の大学を卒業する、というのでもいいんです。
 私は最初の大学で出会えました。できれば、その先生が名誉教授として名を残す元の大学を出たいと思っていました。未練があったのですね。私が放送大学に入った2019年というのは、中退してから7年後。これは、再入学の資格が失効する年だったのです。包み隠さず言えば、2019年に編入学に踏み切った最終的な決断はこの点によるところが大きかったです。
 「放送」大学に限らず、いまはコ口ナ禍のため、ほとんどの大学で直接会うことが難しくなっているという状況ですが、やはり自分から、特に若ければ若いほど、そうした人を求めて欲しいと思います。そういう意味では面接授業は多く取った方がよいでしょう。私はかなり割り切っていたので、放送大学で知り合った人ゼロで卒業します。もちろん、侘しさがあるのは否めません。

 1万字を超えるまでになったこのタイミングでひとまず終わりにします。この記事に関わることで、何か質問があればお答えしますので、ご自由にコメントください。  

 筆者の学問的関心については、本note上の連載「仮定法とは何か」に集約されておりますので。英語や英文法、あるいは外国語教育としての英語に関心がございましたらよろしければそちらもお読みいただければと思います。

2023年1月23日追記

その後、大学院を受験をし、合格しましたので、そのことについても書きました。よろしければお読みください。


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