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時間の大切さを学ぶための教材として、これほど相応しいものはないという話。

こんばんは。「腱引き」「つるた療法」の別府湯けむり道場です。

武術教室を運営していた頃、練習後に映画や撮影したイベント映像、大会などの上映会をしていた時期がありました。みんなで寝転がって観るという行為それ自体が他に例えようのないくらい楽しかったこと、今でもよく覚えております。

そんな中、とある回では、ひとりの生徒さんから「これは絶対に観てくださいね!!」といつにない念押しをされてお借りした映画を観ました。私はこの時点で非常に嫌な予感がしたのですが、そこまでおっしゃるならと古株メンバーを(強引に)誘って一緒に観ることにしました。

 その映画のタイトルは

『恐怖! キノコ男』

といいます。

ストーリーは以下の通りです。

あらゆる生物を凶暴化させる恐怖の液体を開発した科学者。静養のため郊外のペンションを訪れた彼は玄関で転んでしまい、バッグからこぼれた液体が白いキノコに流れ落ちる……。

ペンションには科学者以外にもレスラー、セールスマンなどが集まっていた。そこへキノコ男になったキノコたちが襲い掛かる!

人類の存続をかけた戦いが、今始まる。

今だから言いますが、少なくともこの「キノコ男」を名作と評してしまうことは目の前に札束を積み上げられたとしても無理な話ですし、たとえそうしたとしても頭の中身と構造と人格と品性を疑われること間違いありません。こういった場合、名作ではなく「迷作」とする場合がほとんどですが、この映画は「迷作」とおくのももったいないくらいフォローが難しい類の作品なのであります。

それでも百歩譲って今までの上映会はカンフーに縁のある映画であったからこそ言い訳ができたのですが、「キノコ男」は微塵も関係ないので、どこかしらのシーンを「動きの参考として」心の片隅に留めておくことすらできません。というかしたくありません。

どうしても言うのなら、作中の登場人物であるプロレスラーや不動産会社社長、自称軍人、そしてペンションの女管理人がキノコ男とドリフのチャンバラよろしく木の棒で殴り合うシーンくらいは反面教師として記憶しておいてもいいかもしれません。

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また、武器だけでなくボクシングや関節技も駆使して主人公たちを苦しめてきます。何を言っているのかわからないでしょうが、わたしも何を書いているのかわかっておりません。

この映画の鑑賞後にインターネットでレビューを読んだのですが、どこのサイトも大体書いていることは同じで、「Z級映画」「時間の無駄」など表現の限界に挑戦するがごとくのありとあらゆる酷評がなされておりました。これまでにもそういう酷評ばかりの映画はいくつか観てきたものの、他の映画と違うのは、マイナー志向であるわたしをもってしても「そんなことはない!」と反論することが不可能である点くらいです。

ストーリーもアレですが、それにもまして編集技術や演出効果の面から見ても映画としてどうなのかと素人目にも分かるほど稚拙で、それらをいちいち列挙していては記事が書き終わりません。

例を挙げるならば、冒頭で目的地に向かうために車に乗るのですが、おそらくはカーステレオから流れているであろうアップテンポな音楽とは裏腹に車の速度がえらくノロイなどは序の口。

あとはキノコ男の被害に遭った男代わりのマネキンの出来が……。

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「70年代の映画なら仕方ないかなあ」と思ってみていたのですが、2005年に製作されたと知り、それもまたビックリです。そういえば随所に初代プレイステーション或いはセガサターンのようなCGが挿入されていました。あげく、出演者は全員家族です。

一緒に観た古株メンバーは「今までキャシャーンやデビルマンを駄作だと思ってたが、今ではそれらすべてを名作と感じることができる」という珠玉の感想を述べてくれました。また、「これを貸してくれた人に色々と話すことがある」とも言っており、おそらくはわたしの知らない所で話し合いが行われたのだと思います。あくまでも穏便に、仲良く、万事仲良く。

 私のこの映画に対する感想は、基本的には駄作の一手に尽きますが、一方で「『MUSASHI-GUN道-』のダメな所だけを抽出し実写化したら、こんな感じになるかもしれない」とも思いました。ファンの方にそれを言ったら怒られてしまいそうではありますが。ただ、先述のメンバーの言葉にもあるように、「他の駄作を駄作と感じなくなる」という点においてのみこの映画の有用性があり、そこは否定できません。

「悪い所よりも良い所に目を向け、そこを伸ばしていこう」という言葉は教育現場でもよく耳にすることですが、それはあくまでも理想論であり、「物事には往々にして限界というものがある」という真理をくまなく教えてくれた、「キノコ男」はそんなありがたい映画です。

ぜひ一度、ご覧になってみてください。

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