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『野の医者は笑う~心の治療とは何か? 』

臨床心理士である著者が、怪しいヒーラー(野の医者)たちを取材したノンフィクション。
物事をこまごまと面白がってしまう筆者に何度も笑わされました。

たえ子さんの指示の下、私は自分の魂を呼び出すことになった。
もちろん、イメージの話だ。
私の魂はなぜか「グロージュ」と名乗った(一体誰?)

羨ましい…私もガイドさん(だったのかどうか知らんけど)の名前が知りたい。

放送大学で心理学を学び始めた当初、戸惑ったことがありました。
『心理学概論』とか基礎知識の科目で、やたらと、
「心理学は科学です !! 」
が、強調されていたのです。
何故なのかはすぐにわかりました。
アカデミアの世界で、心理学はバカにされてたんですね。
文学や哲学ではないし、医療との関連は深くとも端っこの方で無視されているというか。
今も…そういう感じはあるんじゃないでしょうか。
ただし、心理学科は増えました。
学びたい、セラピストになりたい人は多い、と。
カウンセリングを必要としている人も、本人の意志に関わらずというなら、かなり多いんだろうとも思います。
でも、特別な場合を除き、高額なので庶民には縁遠いのが現実ですが。

高額といえば!
野の医者たちのスピリチュアルカウンセリング(いろいろなセラピーひっくるめて)の方も、高額なわけです。
しかし、この本にも書かれていますが、野の医者たちは決して儲かっているわけではありません。
集客には苦労しているみたいです。
臨床心理士たちも働く場が少なすぎて厳しい状況にあり、とにかく高額ですから利用者は少なく独立は難しいようです。
似たような状況…、でも何故、野の医者たちの方は笑っているのでしょうか?
それとも、臨床心理士たちも笑ってるのかな?
東畑先生は笑ってるかもしれませんが(イメージです)。

15年ほど前、私は「何故、こんな状況に巻き込まれているのか?」の思いに駆られ、精神世界、スピリチュアルの世界に足を踏み入れました。
その類の本をたくさん読み漁ったし、野の医者たち(!)のブログ記事などもたくさん読んだものです。
目の前の苦難から逃れたい思いはあったけれど、開運・パワースポット、いわゆる引き寄せ的なことにはあまり興味が持てず、ほどなくして、(まともな)スピリチュアルリーダーたちは、視点や文章の表現に違いがあるだけで、皆、同じことを説いているのだということを理解したのです。
シンプルな真理であるために、腑に落とすまでには何冊もの本、何人もの人の言葉を必要としているのだということも。
その真理を究極に一言で表すなら、「自分の意志でこの世界にいる」に尽きます。

やがて、突然のひらめき(不思議な!)がきっかけで、放送大学で「心理学」を学ぶようになり、「哲学」もかじったり、ついでに「国際政治」なんかもちょこっと勉強したりしました。
この流れは、私にとっては自然で繋がりを感じるものでした。
というより、全部が繋がっている全体一つ、とさえ言っていいものだと思うのです。
さらに、長い歴史を持つ各々の宗教が基を辿れば同じような教えであり、結局、それこそが原理なのだから無宗教もまたOKであるという考えを持つに至ったりもしました。(「原理主義」って、ネーミングが間違ってる気が…?)

表紙の帯にも引用された筆者の言葉です。

私たちは今、軽薄でないと息苦しい時代に生きている。
だから、軽薄なものが癒しになる

はて?
野の医者たちは軽薄だから笑うのでしょうか?
臨床心理士たちは軽薄じゃないので笑えないのでしょうか?
この本を読めば、「軽薄」という言葉を囲んでいる余白にびっしりと詰まった思いを知ることができると思います。

自分と向き合う必要に迫られたとき、誰かに手伝ってもらおうと思うなら、臨床心理士を選んでもいいし、(怪しい)ヒーラーを選ぶのもありだし、散財して大騒ぎになるのもまた人生のドラマなのでしょう(個人的には巻き込まれたくないですけど)。
私は…助けを求める気持ちは多々あるのに、ずっと、一人でジタバタしながらやっています。
本当はきっと、グロージュさん的な誰かが陰ながら応援してくれていると信じたい…いえ、信じております。


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