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#64 家の中に居場所がなかった

こんばんは。id_butterです。
人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の64話目です。

びっっっっっくりした、いや本当に。

現在、家の中を片付けている。
控えめに言って、どうみても汚い。
荷物が溢れかえっている。
断捨離が必要なのは数年前からわかっていた。

で、やっと重い腰を上げかけている。

捨てなくてはいけないもの、それはわたしの服だ。
同じような服がたくさんある。
2年前の黒いTシャツ、3年前の黒いTシャツ、4年前の黒いTシャツ、、続く。

片付けをしながら、一年前の自分がかわいそうで泣けてきた。
この家にはわたしの居場所がない、ということを実感したのだ。

服の置き場所がもともとない。
タンスとかクローゼットとか、わたしの場所がない。
(服だけではない、すべてにおいてこの家にはわたしの場所がない。)
だから、椅子とか鴨居とかにかけておくことになる。
そうすると、部屋が片付かないと夫はその服たちをダンボールにしまう。
次週、夫による模様替えによりそのダンボールごとなくなる。
翌日、同じような服を買う。

この模様替えが曲者だった。
頻繁に行われ、その度にダンボールが動くため地層は入り乱れる。
2017年の下に2021年がありその下は2015年、先週のダンボールは物置の一番奥にある。

そんな風にして私のものがいつもなくなってしまう。
だから、ファストファッションとか100円ショップでしかモノを買わない。
大事なものは持ってはいけない。
という生活を送っていたことを思い出した。

昨日まで来ていた服が見当たらないまま、翌週会社に行くために毎週のように服を買っていた。
そういう悲しい思い出を思い返しながらたくさんの●ニクロとG●とGA●たちを捨てている。
20箱分くらいは捨てた気がするけれど、まだ道半ばである。

模様替えは遺伝らしい。
元夫のお母さんもいつも模様替えをしていた。
その後ろ姿を見るたびに怖かった。
模様替えをしてもなにひとつ変わらない部屋。
そういう模様替えを頻繁に繰り返す、という癖。

離婚するときに、それも理由のひとつだと伝えたけれど、本人は模様替えしたことを覚えてもいなかった。
そのたびにわたしの大事なものが消えていった。

娘たちが今でも「パパの部屋」と呼ぶ部屋がある。
その部屋には、わたしの服がたくさんある。
何回も捨てたはずの服、夫が隠していたパチンコの資料、20年前に使っていた仕事道具、、、、たくさんのいらないもの。
捨てたはずのものだ、何度も。
夫は捨てなかったのだ。

今になって元夫の心を覗き込む。
そして再度思った。
これは、やっぱりわたしにはどうにもできなかった。

一番怖いのは、高い服がひとつも残っていないことである。
わざとだったのだ、と言わざるを得ない。

いつも不思議だった。
例えば何枚かタオルがあるとして、子どもがおもらしをしたときになぜか夫は一番新しいタオルを使うのだった。
一番お気に入りの、一番高価な服が何度かいなくなって、今回の断捨離でも一切出てこない。
ちょっとは期待していたんだけどな。

高い服がわからないのだろうか、何度もそう思って夫を試したことがある。
同じようなデザインの服を二つ持って、彼に聞く。
「どっちが高いと思う?」
彼はこのクイズを間違ったことがなかった。

考えたくなかったけど、やっぱり結論はひとつだった。
夫はわたしを憎んでいたのだろう。
たぶん浮気したりしていなかったし、わたしを愛していたと思うけれど、それと憎しみは矛盾しない。

わたしがひとりでローンを組み、今も払い続けている家に、わたしの居場所がない。
今もなお、この家に歓迎されていないような、アウェー感を味わっている。

暑いとき、ものすごく暑いときにふと寒気に襲われる、そんな感じ。


不思議で怖いことを思い出した。

この家に引っ越してくる前、川の向こうに住んでいた。
そんなに遠くない、自転車で10分ほどの距離に前の家はあり、今の家はそこからイオンへの通り道にある。
だから、この家の近くをよく通った。

そのころ、元夫は何回か幽霊?を見た。
一度目は夜の公園だった。
今の家から子どもの足でも5分かからない公園で、足のない男性が夫に笑いかけ、手招きしながら「おいでよ」と話しかけたらしい。
二度目は別の近くの公園の広場で、同じように足のない人がずっとこっちを見ているというが、わたしには何も見えなかった。

最後は、今の家に引っ越してきてからだ。
一度目の公園の前を通り過ぎようとしているときだった。
その公園を通ったとき、耳元で後ろから「よかったね」と声がしたらしい。
怖すぎてふたりで必死で自転車を漕いだ。

あのひとはなんだったのだろう。
別に害はなかったので大して気にしていなかった。
むしろ、そのあとに長女を授かり、いいことの前兆にすら思っていたのだ。

けれど、こうなった今無性に気になる。
あのひとは誰だったのか。

オチはない、ただ悲しいまま終わりたくなかっただけ。
子供のころ稲川淳二さんの怖い話が好きだったな。

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