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疲れに染み渡る、あのチーズケーキを買いに行く

「さぁ、ケーキを買いに行くから、車に乗って!」
そう言って子ども達を車に乗せて、シートベルトを締める。
こども達は、いつもなら、一緒に買い物に行くことを嫌がる。でも、最近は仕事場にしか移動していないからか、ケーキが欲しかったのか「ケーキ買いに行こう」と言ったら、すぐに「いいよ」と返事をくれた。
ケーキを買いに行くお店まで、車で30分。こども達を乗せて、いつもと違う道へと車を走らせる。


「今日は絶対に絶対に絶対に、あのチーズケーキを買いに行く」
そう昨日の夜から、決めていた。

小学校の休校に伴い、学童もお休みし、家でみることになった息子と、普段は保育園に通っている娘を家庭でみることになって、もうすぐ1ヶ月になろうとしていた。

我が家は家族で仕事をしているので、みようと思えば子どもを家庭でみることが出来る。子どもも7歳と4歳になり、親にべったりの時期は過ぎ、二人で遊んでくれるし、義父母も夫もみてくれる。田舎なので敷地内を走り回ったりもできる。ありがたい環境だとは思う。

それでも「子どもと一日一緒に過ごす」というのは、疲れる。

それは「こどもといることが疲れる」とか「一人の時間が欲しい」とかそういうこともあるけれど、「子どもを一日無事に生かす」ということに、神経を使っているからだと思う。

生活リズムが乱れないように朝起こし、それなりに栄養バランスを考えた朝食を用意する。片付けて、家事をしながら、家庭学習を見る。勝手にやらせたら楽だけれど、見ていなければ、書き順もバラバラで文字を書き、問題文も読まずになんとなく答えを書いたりしてしまうから、やはり見ておかないといけない。
はみがきや着替えもさせて、「仕事場に行くよ」とせかし、車に乗せて、仕事場に向かう。
お昼には昼食を作り、食べさせ、子どものタイミングを見て、午後の家庭学習に誘う。そしてまた食器を片付け、夜ご飯の仕込みをする。
夜になれば夜になったで、ご飯を食べて、お風呂に入れ、歯磨きをさせて、布団に入る。

なんてことはない毎日だ。

それでも「栄養が偏らないように」「好き嫌いが多い娘でも食べられるメニューを」と、食事だけでも考えることが多い。

「免疫力が下がらないように」と思うと、夜は早く寝せて睡眠を取れるようにしたい。でも、「嫌だ」「眠たい」とごねたりする子たちをなだめながら、ご飯を食べさせ、お風呂に入れ、片付けと歯磨きをさせて布団に入らせるだけで、頭がパニックになったりしている。

今週から始まった息子の家庭学習だって、慣れないから、本当にこれでいいのだろうか? 楽しく勉強できているだろうか? と、毎日うーん、うーんと分からないままこなしている。

予定も何もないので、毎日この繰り返しで、少しずつ疲れは溜まってきていた。それに、家と仕事場の往復だけの(たまに私は買い物に行くけれど)、毎日の繰り返しや、先が見えない状況にも少し疲れていた。

こうやって、疲れてくると、食べたなるケーキがある。
それが、ル・ヴァカボンさんのホワイトチョコのチーズケーキだ。


「わっ、本当に封鎖されている……」
車を走らせながら、目に飛び込んできた光景に思わず声が出る。

ヴァカボンさんへは、湖岸道路を通っていく。滋賀県には「湖岸道路」と呼ばれる、琵琶湖沿いをぐるっとめぐっている道路があるのだ。

その湖岸道路沿いに、GWや夏場にバーベキューで人が賑わう公園があるのだけれど、駐車場は封鎖され、遊具にはテープが巻かれ使用できなくなっていて、更には警備員まで立っているという光景が目に入ってきた。

滋賀県が昨日「県営都市公園および自然公園園地の駐車場等の閉鎖」を決定していたのは知っていた。

しかし、ここまでとは……。
こんなこと、滋賀県に引っ越してから10年になるけれど、初めてだ。いつもと違う光景を見ながら、湖岸道路を進んでいく。

30分のドライブを経て、ヴァカボンさんに到着。
ショーケースに並んでいたケーキは6種類。しかし、お目当てのチーズケーキはなんと、ホールサイズしかない……。諦めようと思ったのだけれど思い切って、人数分の家族のケーキの他にチーズケーキをホールを購入! チーズケーキは大人でちびちび食べようと思った。

ヴァカボンさんのケーキはどれも美味しい。でも、その中でも私はチーズケーキが一番好きだ。濃厚で、どっしりしていて、一口食べるたびに、口の中にため息がもれるような味わいが広がるのだ。疲れている時は、特に効く。一口一口が、疲れた細胞に染み渡るようなのだ。あぁ、疲れた気持ちがすっかり癒され、また頑張ろう……そう思えるようになるのだ。

本当は、店内で過ごしたい。
ケーキやランチが美味しいのはもちろんだけれど、ヴァカボンさんのお店は居心地が抜群にいいのだ。

店員さん(店長さんなのかな? いつも大体一人で営業していて、昼間にはもう一人いたりする)は、カウンター越しに話しかけているお客さんとは話しているけれど、こちらから話しかけなければ、話かけてくることがない。なので、一人でぼーっとしたり、予定を書きだしたり、思考を整理したりするのに、すごくいい場所なのだ。

正直、車で30分というのは、私からしたらすごく遠い……! 遠いけれども、それでもここに月に2回は通いたい! と思うほど、大好きなのだ。早く、またヴァカボンに通える日常が戻ってきてほしいなぁ……。

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家に帰って、みんなで食べたケーキはもちろん美味しかった。
娘は好き嫌いが激しいのだけれど、ヴァカボンさんのケーキは完食。沢山のカラフルなフルーツが乗ったタルトは、子どもたちの気持ちも一瞬で虜にし、濃厚なおいしさのケーキは、大人達にも好評だった。

そして、子どもが寝てから、こっそりと、ホールのチーズケーキを切り分けて、頂いた。

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……はぁ。

明日からもまた毎日を頑張ろう。
そしてまだ明日もチーズケーキを食べられるという幸せがある。

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