44話 月とカレーライス

カレーやのカウンターには

うす暗い光が

灯っていた


月の大きな夜だった


大きなカレーの皿を

注文すると

わたしは手紙をかいた


カレー食べてます

お元気ですか


次の言葉を探している間に

カレーライスは

もう

できあがっていた


手紙をよけて

カレーを頬張った


カレーを半分、食べ終えると

わたしは再びこう書いた


やがてやってくる

いろいろな

なにか

それは

なにかは

わからないけれど

生きていかなければ

ならないと

強く

思うのその一瞬の

むなしさみたいな

空箱の中の

空箱のような

空洞


そうゆう

なにかが


ときどき

こわくもあります


なにを書いたらよいか

わからなくなった


少し残った

ライスを

小さくすくって

一口食べては

ペンをにぎり

皿に目をうつして

スプーンを

なめる


白い皿に残った

ルーのあとを

ゆっくりとつたいながら


手紙を

読み返した


カレー食べてます

お元気ですか?

最近寒くなって…


ほんとうの気持ち

というのは

一体

どこらへんから

でてくるものなのだろう



こんなことを、

かいていると


カレーライスは

なくなっていた



カレー屋を出ると

まだ月は

大きく

空に

浮かんでいる


誰にあてた

手紙かも

わからぬまま

夜道を歩いて

家に帰る


大きなカレーライスが広がった

夜空に

秋の月が

煌々と

輝いている


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