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⑤2005年1月、北京で美容師


2005年1月、いよいよ北京の美容室で働く事になりました。
初めての北京での生活と仕事で感じたことを書きたいと思います。


北京へ

成田空港から北京へ出発する日、両親も空港に見送りに来てくれたが、とても心配そうにしていてなぜか両親がとても小さく見えた。

飛行機で約3時間半で北京首都空港へ到着し、直接お店に来るように言われていたのでタクシーで向かった。
空港からタクシーに乗るのは初めてで、並んで順番を待っているのに割り込んでくる人がいてなかなか自分の番にならない。
やっと自分の番になり乗り込んだタクシーは、車内が汚く荒れていてタバコを一気に一箱吸ったのか?と聞きたくなるような臭いがした。

行き先の書いた紙切れを渡したらまず、
「チッ」と大きな舌打ちをされ、鼻の穴をおっぴろげてなにか大声で私に言っているが全く分からず…とりあえず動き出したので到着すればいいやと思った。

運転は荒くカーレースでもしているのかのような速さだったが、無事に目的地に到着し100元札しかなかったので運転手に渡した。
また盛大な舌打ちをされなにか言っていたがわからないが、中国語がわかるようになってから推測すると、空港では行き先が思っていたよりも近くそんなに近いのか!という舌打ちで、目的地に到着してからは100元札しかないのかよ!さっきも乗せた客も100元出してきてお釣りないよ!またお釣りのお金作らなきゃいけないよ!だと思われる。


働く美容室にて

美容室に到着し一緒に働く日本人2人とも初顔合わせを済ませ、現地にいる中国人の少しだけ日本語が話せる社長に今後のことを確認した。
しかし日本で日本人の社長に確認してきた内容といろいろ噛み合わないことがあり、初日から大丈夫なのか?と思った。

噛み合わない点
①寮があると言っていたのにない。
②就労ビザに切り替えると言っていたのに切り替えない。
③給料の提示額が違う。

こんなかんじではあったが、もう既に北京に来てしまっているのでもうやるしかない。

その日は日本人の女性が一人いたので、その女性の住む家にお世話になるように中国人社長から言われたが非常に申し訳なかった。

次の日の朝は一人でタクシーに乗り出勤したが、何故かその日は運転手と隣の席に乗ってしまい信号で停まった際に急に頭を撫でられ、お金も払わず気持ち悪くてそのままタクシーを飛び降りた。
今なら間違いなく後ろに乗るし、そして怒鳴り散らして怒る。
当時はそんな度胸もなかった。

違うタクシーに乗り換え到着すると、すぐにお店でカットすることになった。
幸いお店に通訳の方がいてくれたので助かったが、最初の半年間は何を言っているのか本当に分からず、お客様とのカウンセリングでそれを通訳してもらいながら少しづつ中国語を覚えていった。
空き時間は中国人アシスタントが何人もいたので、物の名前がわからないときは指を指して「这个叫什么?」とよく聞いて教えてもらっていた。


帰らないお客様

働き始めて1ヶ月ほどした頃、女性のお客様が来店され私が担当することになった。
日本のヘアカタログを見ながら、こんな感じにしたいという写真を選び髪質と顔の形が全く違うのでパーマをかける必要があること、かけたあとに自分でセットしないと写真のようにはならないことを説明し施術することになった。

施術が終わりお客様本人が気に入らなかったのか、「私が選んだのは髪型ではない!!」と言い始めた。
私はこっちの髪型が良かったんだ、なのにこんな髪型になって!!など文句を言い始め、通訳の方も困り始め今度は通訳とお客様が揉め始めた。
当時まだ来て1ヶ月で何を話しているかわからず、あとで聞いたら思っていたよりもパーマが弱く自分でセットしなくてもいいくらいのキツめのパーマだと思っていたそう。
その後5時間ほど居座り、「ラオゴ~ン」と電話し始め、1時間ほどして旦那さんが店に到着。
旦那さんがパーマをかけ終わったお客様を見て、「すごくいいじゃん!!」と言った途端、お客様は手のひらを返したように、やっぱり気に入ったパーマもこのくらいでやっぱりいいと思うなどと言ってやっと帰っていった。やっと帰った…と通訳の人と胸を撫で下ろした。

このあと北京で何年か美容師をしてわかったが、日本人美容師にカットしてもらえばその後自分で何もしなくても雑誌やヘアカタログのようになると思っている人は一定数いた。

2005年当時日本のような緩めのパーマは北京ではあまり受け入れられず、日本と同じようにパーマをかけるとだいたい「かかっていない」と言われて何度か揉めた。
正直何度かこういったお客様が続くと精神的にやられ、謎の偏頭痛が続いたりした。

半年ほどして美容関連の中国語で、お客様がなにをいっているか大体わかってくると、なにが気に入らないのかもハッキリ言ってくれるし、最終的に気に入らなくても気に入るまで帰らないため、そのあと必ずと行っていいほどリピートして指名して来てくれるようになった。
1年経つ頃には,通訳なしでカウンセリングできるようになりお客様も一ヶ月で100人ほど指名して来てもらえるようになり少しづつ自信がついていて、仕事が面白く感じていた。


反日デモ

働き始めてから何ヶ月かしたころ、北京で大規模なデモがあった。
当日も普通に仕事だったが店頭に中国の国旗を掲げており美容室は無事だったが、中国人の方が経営するような日本料理屋などもドアなど壊され店内も酷く荒らされたりしていて心が痛かった。
东三环沿いをゾロゾロとデモの人たちが歩いていくのを見たが、中国に来て初めて危険だと思った瞬間だった。


次回は2006年以降のことを書きたいと思います。
読んでくださりありがとうございました。









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