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Anthony Faber氏による2024年の期待すべき新作ゲーム(My most anticipated games of 2024)

本記事は、Anthony Faber氏が2024年2月13日に投稿した「My most anticipated games of 2024」の翻訳である。

久々にAnthony氏のブログの更新があったので翻訳することとした(現在、彼のポッドキャストの定期更新も止まっている。)。私の本業がかなり忙しくなかなか翻訳が進まないが、ひっそりと続けていこうと思っている。

記事の内容はタイトルそのままである。昨年度の同趣旨のリストの印象は、意外と日本語版のリリースが発表されているというものだったが、今年度は1作品も日本語版のリリースはない。"新作を追う"とか"新作を追う人を見る"とかという行為には疲弊感が伴うことが多いが、まとまった文章という形であれば、そういう疲弊感が低減されるという人も一定数いるだろうと思われる。

元記事は以下のリンク先を参照されたい。ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリー機能を利用させていただいた。

かつて誰かが言ってたのは、期待するってことは喜びの最も優れた形態であるということだ。このことは、このブログを半年間更新していなかったのに、私がこのリストを作成しなくてないけないと考えた理由を説明してくれるだろう。実のところ、来週には、2023年の私のお気に入りのゲームについて書く予定である。けど、既に存在するゲームというのは平凡で退屈なものだ。ということで、こうかもしれないなと考える楽しさを見ていこうか。

私のバイアスについて。このリストに掲げたゲームの箱絵からわかるとおり、私はユーロゲーム、自然、夢を好むが、何よりもかわいらしい見た目に弱い。このリストを作成した際に、ここに掲げた作品の多くが軽いゲームとなったことに驚いた。私は、元来、大箱のゲームを愛する者であるが、このリストに入ったのはたった1つだった。歳を重ねるにつれて重めのゲームをプレイする時間や忍耐力がなくなったのではなく、長々としたルールを覚えて他の人にインストする忍耐力がなくなったというわけだ。私の友人に購入に至らせて、長いルールを覚えさせて教えてもらうように騙すのが上手くなっているわけだ。

最後に。私のどのリストにも再販やリメイクの作品は載せてない。他の人のリストを読んでいて、何らかの形で既にプレイしたことがあるゲームが多く現れるのを見ると何となくがっかりしてしまうのはわかってるからね。これは新しいもの崇拝であって、新版崇拝ではないということだ。「Wyrmspan」が前作(※「ウイングスパン」のこと)と十分異なるかどうかについて内心で議論していたが、その後、「Wyrmspan」が実際に私の家の玄関前の階段に届いたので、もはやその到着を楽しみに待っていると言い張ることはできない。さあ、はじめよう。

10位:「Sand

クレジット: Devir Iberia

私たちはDevirを信頼してる。それでいいさ。この作品について私が本当に知っていて話さなければならないことはこれで全てさ。まあ、この作品に関しては、気温的にも暑くて評判的にも熱いイベリアの出版社ということ以外に気に入ったことが何個かある。理由があって、ゲームの設定として砂漠は気に入っている。砂漠はクリーンでありながら神秘的なアートが実現できるし、危険もほのめかすものだ。道なき荒れ地を横断してキャラバンを進めるピック・アンド・デリバリーのゲーム(a pick up and deliver game)にとって完璧な設定となる。

何よりもまず、プレイヤーは、巨大ないも虫に商品を載せて砂漠を横断して運ぶらしい。それだけでこのリストに載せるのには十分であるが、このゲームには私の愛する自然をテーマにした要素もある。プレイヤーは、砂漠を再興させるために都市にある温室から植物も運び出しているということだ。

9位:「Kavango

クレジット: Mazaza Games

テラフォーミング・マーズ」、「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」、「アース」等の重めのタブロービルドゲームにおいて私が考える問題点は、そういったゲームがもたらす意思決定の量が多くて時間がかかることがままあるということである。さらにまた、プレイヤーは、自分の対戦相手がくすくすと笑いながら必要なすべてのカードをトップデッキしてくるものだから、自分の戦略と調和する(synchronize with)カードを無駄に探しながら、デックをすり減らしていくことにもなる。悪い意思決定をしたという後悔をする時間がないほど素早く意思決定がされるようなきびきびした(snappy)タブロービルドゲームが好きだね。

そういうことで、ある日Kickstarter上で「Kavango」を見かけたときは嬉しかったよ。このゲームは、60分以内に終わる、取って渡す(pick and pass)ドラフトゲームで、一般的なシナジーと私が楽しめる動物テーマとなっている(私は、とりわけ「アーク・ノヴァ 新たなる方舟」の動物園よりも自然保護区のほうを好む。小さいが重要な違いだ。)。こうしたドラフトゲームを愛する理由の1つは、同時プレイをすることでタブロービルドゲームでの時間の膨張を削減することができるところにある。アートは、私が好きになるほど豪華というわけではないが、このゲームが実際にバランスのとれたカードで構成された「フォレストシャッフル」の面白い体験をもたらしてくれるとった見込みのない希望を抱き続けるよ。時がくればわかるだろうさ。

8位:「Cities

クレジット: Devir Iberia

ここでもDevirの別のゲームとなった。けど、この場合の方程式はもっと複雑となる。つまり、Devir + Phil Walker-Harding + Steve Finn + 都市建設 + めっちゃ魅力的な箱絵 = 勝利だ。Devirはこのゲームについて何ら語ってはいないので、私は、もっと詳細を得るためにBGGの登録を解析しようとしたままとなっている。個人のプレイスペースが映っており、興味がそそられる一枚の部分的な写真がある。推測すると、そのプレイスペースにはタイルがあり、他のタイルと合致した場所からドラフトして、その上にプラスチック製の建物をプレイするのだろう。

このゲームの説明文には、8ラウンドにわたってゲームが行われて、各ラウンドでは"1枚の得点カード、1つの都市タイル、一、二枚の特質タイル、2枚から4枚までの建物駒を収集する"ためにワーカーを使用するとある。そうすると、このゲームは、複数の得点条件をさばきながら都市建設ゲームによくある課題をこなすように聞こえる。私にとっては十分な話だ! 説明文には、"シドニー、ロンドン、ニューヨーク、バルセロナ、リオデジャネイロ、リスボン、メキシコシティ、それにブエノスアイレス"にある地域も建設するとある。この点では、私はより疑い深くなる。40分のゲームでは、全く異なった都市がある可能性が低いからだ。

7位:「Nocturne

クレジット: Shawn Stankewich

私は、手軽な空間パズルに、てこずるような結合したドラフトの意思決定を組み合わせたFlatout Gamesの方程式に目がない。彼らの次作において追加された特徴のおかげで、空間パズルが、文字どおりの意味でタイル獲得の一部とされた。というのは、タイルの獲得には競りが含まれており、その中でプレイヤーが望むタイル上に、より高く入札(bid)しなければならないこととなっている。そのタイルは自分より前に入札したプレイヤーが入札した場所に隣接しなければならない。こんなふうにしてプレイヤーは入札を誘導することができる上、Flatout Gamesの他の作品よりもはるかに意地悪い形で特定のタイルから入札を遠ざけることができる。Gen Conでこのゲームを途中までプレイした後なので、自信を持ってこのように言うことができる(※その詳細なレポは前回記事参照)。

このメカニズムは完全にYstari Gamesが2008年に発売した「Metropolys」からコピーされたものだと言及する人もいるが、ゲームが楽しいのであれば、私は盗作(plagiarism)を気にしない。その他の要素には、タイル上に標準的なセットコレクションが含まれている。加えて、オークションに勝てなかった場合にタイルを取得することができる副次的な市場がある。このゲームには、「ハイソサエティ」にあるような特定の入札トークンも含まれている。それは、通貨の山ではなくて、プレイヤーの所有する残りの入札トークンを使用した場合に限って入札することができて、タイルを獲得すると入札トークンが消えてしまう。「キャリコ」/「カスカディア」/「ヴェルダント」にもっとインタラクションが必要だと思ったのであれば、このゲームがぴったりだ。

6位:「Neodreams

クレジット: Maria Nikolskaya

これを読んでるみんなのほとんどは、Ivan Lashinという名前を知らないだろうが、「ファーナス -ロシア産業革命-」や「スマートフォン株式会社」といった彼の過去作に言及したら感銘を受けるかもしれない。ゲームの重さや、購入するリソースを得たりカードを起動したりするために単純なワーカープレイスメントを用いているという観点からは、このゲームは「ファーナス -ロシア産業革命-」にかなり近い。明晰夢(Lucid)、反復夢(Recursive)、新夢(Neodreams)という3種類のカードがあり、異なる機能を有している。例えば、ゲームタイトルを冠する新夢はゲーム全体を通じて繰り返し発動することとなる。

デザイナーの経歴に基づけばこの作品は良いゲームだと十分に予想しているが、私の心が奪われたのは、カードのイラストを見たせいであると認めなくてはね。ネオンカラーのサイバーパンクと夢テーマに弱くて、夢を表したイラストは魅了される。残念だけど、BGG上には掲載されてないし、アートを盗んでくるつもりもないので夢のイラストを見せることはできない。

5位:「Civolution

クレジット: Viktor Kobilke

これが私のリストの中で最もオリジナリティのないものであって、私のリスト上で見つけられる唯一の真に重いゲームとなる。Stefan Feldは、長い間、軽量級/中量級のQueen Gamesという特定市場(niche)でゲームを作り出してきたので、彼がそこから抜け出してきたらどんなものを作り出してくれるか見るのを期待している(※筆者がアメリカ在住なので、こういう認識になると思われる。)。彼のダイスをベースにしたアクション選択に係る思想を大ヒットゲームに持ち込んでくれた場合には、彼は本当に特別なことをやってくれると思うよ。

一部の点において、このゲームは巨大なタブロービルドゲームのように見えるし、既に述べたとおり、私はこの種のゲームにあんまりわくわくするものではない。だが、このゲームは、得点を獲得するためにダイスを集めるのではなく、ダイスを使ってカードを起動させるようにも見える。カードがさまざまな機能を果たすのであれば、セットコレクションのタブロービルドゲームにおいてデックから一部のカードのみが現れてしまうという私の懸念(※トップデッキのこと)は消える。そのとおり、プレイヤーは運良くコンボができると思うが、プレイヤーは、単純に自動操縦でプレイすることにより運良く得られるのではなく、コンボを構築するための方法を見出さないといけなくなんじゃないかというように見える。個人のプレイエリアは異常に大きいし、選択肢も膨大だ。60分から90分までのゲームという制限から解き放たれて制約のないFeldを見る準備はできているよ。

4位:「Let's Go! To Japan

クレジット: Josh Wood

Josh Woodの軽量級のタブロービルドゲームは不毛で型にはまったように感じたことは一度もない。実質的にいかなるデザイナーよりも、自分が獲得したカードとつながりがあって大切にしようという感覚を覚える。彼は、「とるネコ」において、家に連れてくる滑稽な猫ちゃんの名前・能力や、得点を得るために必要なものを度外視してプレイヤーが自分の猫ちゃんがちゃんとご飯が食べられているかを確認することにどれほど必死になっていたかということを通じて、これを成し遂げたのだった。「サンタモニカ」では、街の地図を形成する自分のタブロー内の場所を移動させることでこれを実現した。メカニクス的には、どちらのゲームも、「とるネコ」における列のドラフトから「サンタモニカ」の浜辺と店を建築するに至るまでの、ほとんどのタブロービルドゲームには欠けていた空間認識をも取り入れたものだった。

「Let's Go! To Japan」でも、自分のタブローをどのように築くかについて移動と空間の感覚があるが、このゲームでは移動は時間の経過それ自体となっている。プレイヤーは、日本における観光旅行をドラフトする(またしても、ゲーム時間を増やさないように同時プレイが用いれている。)が、その旅行のカードは時間内に間に合うカードの近くにあるものによって得点化されるので、その旅行(※原文はthe trickだが、the tripsのタイポと思われる。)は自分のカレンダー上に配置しなければならない。連日、日本のあちこちを往復する長距離旅行をしなければならないせいで得点を失うかもしれない。そうでなければ、テーマに沿ったカードを順番にプレイすることで得点を得るかもしれない。イベント間に新しいカードを入れ込む余地が残っているかどうかという点にプッシュ・ユア・ラック要素もあるように思われる。そして、全てのJosh Woodのゲームと同じく、アートワークは、十分にテーマを喚起してくれる個性のある豊かなものとなっているね。

3位:「Creature Caravan

クレジット: Ryan Laukat

さらに、短時間の枠組みに濃縮した意思決定を盛り込んだタブロービルドゲームへの私の愛を明らかにするもう1つの例である。私はRyan Luakatの感情に訴えかけるアートワークと世界構築が大好きだ。この作品では、想像し得るあらゆる種類の生き物の助けを借りて彼のファンタジー世界であるところのArziumを横断していく。取って渡すドラフトの要素はないけれども、互いにコンボになるカードを引いてプレイするので、プレイヤーは同時に全ての動きをすることとなる。

色とりどりのタブローを構築することに加えて、プレイヤーはこの世界を旅し、生き物を倒し、プレイヤーのカードが生み出すコインやその他のリソースを得点と交換していく。この全てが60分以内に起こる。プレイヤーの動きがお互いに影響し合うとなると、同時にタブローを構築する余地がほとんどなくなるので、このデザインにおいてスピードの犠牲となるのは双方向性(interactivity, ※インタラクション性)である。私はこの点を気にしないが、もし気になるのであれば、避けたいと思うかもしれないね。

このゲームが私の期待すべきリストの首位に入らなかった唯一の理由は、私がPAX Unpluggedで既にプロトタイプをプレイしたからである。そういうことで、おそらくゲームプレイを待ち望む喜びというのは、実際のゲーム本体を手に入れるのを待ち望む喜びに取って代わってしまっている。しかし、このことは、このゲームが強力であることを断言できるということでもある。このゲームではカードが通貨でもあるので、より大きな箱の「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」という感覚をもたらす。それに、(Red Raven Gamesの全ゲームのデザインとデベロップを手助けしている)Ryan Laukatの妻であるMalorieがPAX Unpluggedで教えてくれたのは、「レース・フォー・ザ・ギャラクシー」がこのゲームのデザインの着想の1つだったということだった(自分が有名人と仲良しであるかのように見せる(name drop)のは完了した。)。

2位:「Wondrous Creatures

クレジット: Hani Chang

このファンタジーテーマのワーカープレイスメントゲームへの期待は、Bad Cometの前作「Life of the Amazonia」の評価により高まっており、そのゲームのゲームプレイとテストプレイによって堅実なものになるだろうと確信したよ。そのゲーム(※「Life of the Amazonia」)やこのリストの他のゲームと同じく、またもやこのゲームのタイトルとコンポーネントに素晴らしい生き物(creature)が登場する。ワーカープレイスメントの工夫は空間にある。その空間では、プレイヤーがこのゲームのタイトルにもなっている生き物をヘックス上に配置し、風変わりな(exotic)ワーカーの置かれた2つのヘックスがマップ上のどの資源と隣接するかに基づいてリソースを受け取ることとなる。

クレジット: Gunho Kim

ワーカープレイスメント以外にも、このゲームのメカニズムは、プレイヤー固有能力、ゲーム終了時の得点カードの獲得、セットコレクション等といった標準的なものだ。私のブログを読んだことがある人ならば知っているだろうが、私は、現在のバージョンが私の脳を悩ませて私の気持ちを高揚させる限りは、以前に考え出されていたものかどうかは気にしない。このゲームの暗い箱絵は、このゲームの魅力的で鮮やかな見た目という良さを十分に発揮するものではない。というわけで、私は、この文章の右側にゲームボードの写真を掲載する余白を十分にとるまで(※原文ではこの段落の右側に上記の写真が配置されている。)、少し無駄話をするつもりだ。お、うまくいったね!

1位:「Windmill Valley

クレジット: Kacper Frydrykiewicz

私が2024年で最も期待するゲームは、Board&Diceと熱い新人ユーロゲームデザイナーであるDani Garciaから出版されるゲームだ。彼は、ユーロゲームが抑えた茶色の色彩パレットでの作成を余儀なくさせられているのではなく、ユーロゲームがTom Vaselの衣装での虹色の活力を伴う色合いでも作成できることを証明しようと決意しているようにみえる。(※カラフルな色合いを理由に)昨年の「バルセロナ」と「Arborea」はどちらも批評家たちの心を捉えて、軽率な人たちの判断能力を奪った。「Windmill Valley」はカラフルにするためだけの色使いではないが、風車とチューリップの時代におけるオランダの片田舎を舞台としている。このゲームの見た目は、その時代に戻ってあのバブルを直接体験したいと思うのに十分なものだ。

クレジット: Peter Gorniak

興味をそそるメカニズムもある。プレイヤーの個人ボードは、風車の歯車のように2つの連結した巨大な歯車で構成されていて、おそらく、「ツォルキン:マヤ神聖歴」と少し似ていて、その歯車はプレイヤーアクションの二重ロンデルを形成している。メインボードは、風車を素早く取り除く競争をしているようにみえる。プレイヤーは、ゲーム終了時の得点のためにチューリップを植えたり、リソースや外国との貿易のために市場に参加したり、ボーナスアクションのためにお手伝いさんを手に入れたり、ルートを構築したり、契約を獲得したりしつつも、風車を取り除くことにより隣接するフィールドに得点が入るのかもしれない。そして、基本的にあらゆるユーロゲームっぽいことを取り入れながら、それでもなお、45分から90分までの中量級ゲームとなっている。俺もゲームに参加させてくれ!

終わりに

みんなはどうかな? みんなはこの文章の書き手よりも洞察深くて勇敢であって、今現在の暗い世の中にいるムードを明るく照らしてくれる短くて明るいゲームは必要ないかな? そうであるなら、今年プレイするのを楽しみにしているゲームは何か教えてくれ。もし、みんなもカラフルなデザインに対する私のこだわりに共感してくれるのであれば、コメント欄でその旨も教えてほしい。読んでくれて感謝!

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