Anthony Faber氏の2022年のベストボードゲーム(My top 10 games of 2022)
本記事は、Anthony Faber氏が、2023年2月3日に投稿した「My top 10 games of 2022」の翻訳である。
久々のAnthony氏の記事ということで翻訳した。普段はあまりこういった記事を翻訳しようとは思わない。こういった話題は一過性のものであるからだ。
とはいえ、挙げられているリストには、日本語版になったり、日本語版がアナウンスされたりしているゲームが少なかった。それに、日本ではあまり注目された作品が多くないようだ。そうすると、そういった作品を紹介することにも意義があるように思われた。
元記事は以下のリンク先を参照されたい。ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリー機能を利用させていただいた。
文字を読むより、耳で聞いたほうがいいというのであれば、ポッドキャスト「Two Wood for a Wheat」をチェックしてみてくれ。そこでは、共同司会者のPatとMitchが選んだ(心許ないことが多いけど)2022年のベストボードゲームのみならず、新作のユーロゲームである「ウッドクラフト」のレビューも聞くことができる。
2022年は最悪の年だった。父と犬が亡くなったんだ。自分の人生の中でこれほどの困難やストレスが伴うことはなかった。みんながクリックするような(clickbait)トップ10のリストを公開する前にこのことに言及することとした。その理由は、どんなに客観的にリストを作成しようと思っても、ある人の人生における経験とゲームの好みを分つことなんか不可能だと思うからね。私がこのようなリストを作る際には、通常、重い最適化されたユーロゲームが優勢となる。そして、いくつかはこのリストにあるけれど、それ以上に暗い状況に直面するに当たっておどけた笑いを伴うゲームがあるように見える。あらゆるリストは個人的なものだ。けど、特に今年については、客観性のかけらも取り繕わないよ。私の苦しみのせいだとか、私が仕事をすぐに手をつけない人間だからとかという理由で、2023年2月のうちにこのリストを作成したわけではないことも言っておくべきだろう。いつも、年末に発売されたゲームをプレイして検討するために、だいたい今頃まで待つことにしているんだ。
もう一つ補足事項だ。こんな感じのリストを作るときは、通常、拡張や調整の伴った再版を取り上げていない。その理由は、新しいゲームやアイディアは、読者が追い求めているものとより整合すると思うからだ。みんなは、おそらく「Frosthaven」が自分に向いていたかどうかを知っているはずで、この記事では議論しないこととするよ(興味がある人向けに、次の投稿で詳細に話すつもりだけれどね。)。しかしながら、このルールの例外を設けたよ。オリジナルのゲームが非常に古いゲームとか、オリジナルのゲームと非常に異なっているとかの場合には取り上げることとする。いいかな、見ていこう。
10位:「ザ・ギルド・オブ・マーチャント・エクスプローラーズ」
空間パズルが大好きで、このゲームにはアクション選択の部分を向上させた、素晴らしいアクション選択メカニズムがある。プレイヤーは、個人ボード上で、首都から様々な塔、街、その先にある外国へキューブをつなげようとする。
各プレイヤーは、様々な種類の地形にキューブを置くことができるカード一式を持っていて、それをランダムな順番に引いて、そのカードを適用する。カードの順序がランダムであることで、決まりきったプレイを排除することができる。しかし、本当に面白いなと思うのは、プレイヤーが様々な方法でゲームを壊し、他のプレイヤーの能力と明確に差別化することができるユニークの特殊能力カードを各ラウンドで獲得することだ。このゲームは、思考に耽るゲームとビア&プレッツェル(※ルールと戦略の面で軽く、大量のランダム性と軽いテーマのゲームの総称)のすぐ終わるゲームとの適切なバランスを取っている。アートスタイルは特段好きというわけではないが、ゲームプレイはハマってるね。
9位:「Evergreen」
このゲームも、得点を得るためにプレイヤーの個人ボード上の空間パズルを行う中で、駒をつなげていくのが特徴的だ。ただ、この作品は、探検家ではなく、何段階もの成長を経る樹木を用いている。
このゲームは、Hjalmar Hachが手がけたもので、周回する太陽があって、他の木の影に隠れてしまったら樹木が成長しないというところを特徴としている点において、彼の最初の出世作である「Photosynthesis」を思い起こさせる。けれど、「Photosynthesis」と異なり、「Evergreen」は、より親しみやすくなっている。他のプレイヤーの樹木が邪魔になることはないし、インタラクションは樹木が成長するアクションにおけるオープンカードドラフトが中心となっている。そして、各ラウンドで選択されない成長カードが、特定の地域における得点を高めるというのが、このゲームの最高のメカニズムだ。言い換えると、誰も樹木を育てていない場所では、価値が増すということだ。こうすることで、既に育てている場所で樹木を育てるべきかどうか、その地域において存在している樹木から得点をもっと得るために次の機会を待つべきかどうかといった厳しい意思決定が生まれる。
もし、出版社が、「リビング・フォレスト」のようなゲームの先例を自信満々になぞらえていなくて、ボードゲームの発売と同時に(場所によってはそれよりも早く)Board Game Arena(※オンラインでボードゲームがプレイできるプラットフォーム。BGAとも。)上で公開されてなければ、このゲームをプレイすることはなかったかもしれない。1か月間、夢中になって、このゲームのソロと多人数ゲームをプレイした。そして、このゲームに深みがあるとまでは言わないが、デジタル形式における最高のアプリゲームを彷彿とさせるような中毒性のあるパズルゲームだった。
8位:「Ascension Tactics」(※正式名称は「Ascension Tactics: Miniatures Deckbuilding Game」)
このゲームを正式な名称で示すのを拒絶させてもらうよ。だって、コロンに弱々しく付け加わった"Miniatures Deckbuilding Game"なんだよ。このゲームが、戦術的な戦闘について、「Ascension」(※正式名称は「Ascension: Deckbuilding Game」)のデックビルドとマップを組み合わせたものだって、みんなわかるさ。Stone Blade Entertainmentよ、タイトル中に混ぜ込んでゲームジャンルを思い起こさせるなんて、不安を解消したいがために英語という言語を台無しにする必要なんてない(※なぜ、このようなことを言うのかについては、この記事(「最高のボードゲームタイトルと最低のボードゲームタイトル」)を参照されたい。)。
このブログを長年読んできてくれた人は、私がデックビルドとマップの組合せをよく好んでいることはご存知だろう。そして、この作品は、完全なデックビルドと短い戦闘のゲームとして初めてみるゲームだ。このゲームの盤面のプレイ感は、3つのファンタジー由来のフィギュアからなるユニークなチームを選んで、六角形のマスで構成されたマップ上での支配を争うという点で、過小評価されている「World of Warcraft: Miniatures Game」(ここのジャンル説明はまだマシだね)を思い起こさせる。構築した山札からプレイするカードによって、こういったマップアクションを行うための戦闘に関する通貨がもらえるし、もっと良いカードを得るためにその通貨を買うことができる。
もし、みんなが気にするのであれば(私は気にしないけど)、そのカードは「Ascension」の世界観に合致していることは言っておこう。それに、もっと重要なのは、(良い意味で)盤面のプレイに予測不可能性を加える突飛な能力が混合されていることだ。このゲームに見る唯一の欠点は、ゲームの後半には無意味となる能力を購入することだ。というのも、カードは得点にはならず、(※カードの)購入戦略は時として少しあからさまになるし、それを疑うのであれば、戦闘能力のほうに切り替えることとなる。それでもなお、このゲームは、そのほかのゲームではあまり見たことがないように感じられるし、最近になって引っ越したので、一緒にこのゲームを遊んでくれる人がいなくて不自由してる。
一見したところ、この複雑でなさそうなワーカープレイスメントゲームには、メカニクス的、テーマ的に斬新な工夫が加えられている。プレイヤーは、自分の宇宙ステーションを建設していて、そこに住んでくれる人類やエイリアンを招くことができる。地球が死につつあることは明らかだ(驚きはないさ)。地球は金属が不足しているので、プレイヤーは、実際に自身のワーカーを置く場所を壊して、自分の宇宙ステーションを完成させるための金属を得る。
リソースを得るために、結果的に自分のアクションスペースを壊す必要があることで、タイミングに関する緊張感が作り出される。そして、各ゲームで利用可能な、プレイヤー固有能力と変化する宇宙ステーションの区域は、たとえ能力のバランスが完全にはとれていなかったとしても、多様性を生み出している。プレイヤーは、有料で対戦相手のワーカーを配置する場所を利用することもできる。そうすることで、終盤でのゲームにおける、消えつつある自分のアクションスペースを補うと同時に対戦相手を妨害するための効果的な手段となる。
テーマ的には、自分のステーションに小さなエイリアンキューブを置くことと、繁栄している小さなコミュニティを築くのが最高だ。宇宙ステーションは、プレイヤーのエンジンビルドも加速させる。そこで、外交トラック上で自分と他のプレイヤーとを比較することで左右される、基本アクションを強化する外交アクションという形をとってタイミングとインタラクションのある緊張感も伴う。あらゆることが面白い。それに、「Evergreen」のように、Board Game Arenaでプレイすることが可能で、時間のかかるセットアップを省略することができる。
6位:「アクロポリス」
このゲームは、テーマ的な興味深さや、「キャリコ」や「カスカディア」といった純粋な美しさを持った空間パズルではないかもしれないが、純粋なゲームプレイとしては、このゲームは同等以上のものがある。このゲームは、これらのゲームのオープンドラフトに今まで見たことがあるひねりが加わっている。それは、もし、列に並んだ1番目のタイルではない他のタイルが欲しければ、追加のお金を払う必要があるということだ。したがって、タイルの多くはパターンを作ったり得点を稼いだりするための地形を得るためのものだが、他のタイルはタイルのドラフトに柔軟性を与えるためのお金になる。
しかし、このゲームを本当に面白いものにしているのは、外側に向かってタイルの配置が行われるというだけではなく、上に向かっても配置されるというところだ。高い階層で作成されたパターンは、そのタイルのある階層の数だけ倍になる(古典的な「ナンバーナイン」のように)。けれども、上に置くことで、(※その下に)プレイヤーが配置した地形がなんであろうと、そこからもはや得点を得られなくなってしまうという犠牲も必要となる。得点を最大化するために、上に配置するエリアを綿密に計画する必要があるが、あまりに考えすぎると、同様に効率的ではない。このゲームは手っ取り早くプレイされる。それに、ルール量の少ないゲームとしては、そうあるべき以上に楽しくて考えどころがある。この種のゲームが好きな人にとっては予想外の大ヒットだった。
5位:「美徳」
まず、一つのことを言っておこう。たとえ、ほとんどのレビュアーとBGGがこのゲームを2021年のゲームであると考えていたとしても、私はこのゲームを2022年のゲームと呼んでいる。プロのレビュワーが手に入れた時とか違う国で発売された時とかを出版された時とは考えていない。私がゲームを手に入れることが可能となった年を基準としているわけだ。
こういったばかばかしい話はさておき、私は、今年プレイしたあらゆる重いユーロゲームよりも、このゲームが好きだ。その中には、私がもっと期待していた高く評価されたデザイナーによって出版された数多くのゲームを含んでいる。このゲームは、Stefan Feldが中世のヨーロッパではなく日本に心を奪われていたのであれば、彼が作成したであろう作品のように思われる。得点を稼ぐ手段は無数にあるし、ダイスの使い方も巧妙だし、かっこいいテーマである。まあ、メカニズムには薄い関連性しかないんだけれど。
中心となるのは、複雑なワーカープレイスメントとデックビルドの融合で、毎手番にカードをプレイして、アクションスペースに置くことができる個人ボード上のダイスをアンロック(unlock, ※解放)する。プレイヤーは、磐座(stones, ※この訳でいいかは不明)を建てたり、旅の途中の巡礼者を護衛したり、さまざまな種類の精霊を解放したり、もっと良いカードを得るためにダイスを強化したりすることができる。しかし、その後、「テオティワカン:シティオブゴッズ」でみられたように、サイコロの価値は低くなる。ダイスの目の価値によって、特定のアクションスペースから得られるものが制限される。
個人的なこのゲームの最大の難点は覚えることだ。西洋人として、美徳、妖怪、御魂、鎮魂トンボ(chinkon dragonflies, ※的確な翻訳となっているかは不明)が何なのか全く見当がつかないし、テーマと実行したアクションとの間につながりもない。いずれにせよ、テーマに内容が乏しい。しかし、この融合/フランケンシュタイン的なゲームは、ほかの道筋にも相互に連動した多くのボーナスをもたらす様々な道筋を追求するという点で、非常に満足するものだった。複雑でインタラクションが少ないリソース管理のパズルが好きな人にとって、このゲームは、空想的なアートワークによって高められた素晴らしい作品だ。
このゲームは、先ほど述べたように、新版や改良版のルールを除くというルールを破ったゲームの1つとなる。けれど、これは、多くの人たちがプレイしたことがなくて大幅に変更が加えられた古いゲームということで、ここで例外としても居心地が悪くなるわけじゃないね。私は、このゲームに対して、与えることができる最高の賛辞を贈ることになるだろう。その賛辞とは、いつも記憶している以上に楽しいというものだ。おそらく、タイトルはださく、このゲームを始めるたびにそこそこかなあと思うが、すぐに激しい楽しさに発展する。
このゲームは、数多ある競馬ゲームの基本的な要素を取り入れている。それは、プレイヤーは賭けて、最も多くの賞金を得るために馬を所有し、ランダムなサイコロによって、どの馬が前に進むかが決まるというものだ。このゲームを際立たせているのは、毎手番で行うことができる追加アクションだ。これは、前述した賭けや購入に関するものにとどまらず、通常のダイスを振ることとは別の異なる方法で特定の馬を前や後ろに動かすことができるように通貨を増大させることもできる。
こうして、賭けが油断ならないものとなる。もし、ある馬が順調だったら、単純にできる限り多くのお金をその馬に賭けるべきだと思うかもしれない。しかし、誰もその馬を応援していないとしたら、他のプレイヤーは、ほぼ間違いなくその馬を後ろに戻して他の馬を前に進める。自分が他のプレイヤーが応援している馬も応援したいときもほとんど同じ話で、他のプレイヤーが援助してくれることになる。うまくいけば、自分はそれを最大限利用することとなる。驚くほど簡単で扱いやすい、ちょっとした特殊能力がたくさんある。その結果は、荒れ狂ったものでばかばかしい驚きが生まれることが多い。
3位:「Now or Never」
Ryan LaukatのArzium三部作(最初の2作品は、「アバブ&ビロウ」と「ニア&ファー」である)の最後の作品であるこのゲームは、2022年の最も期待するゲームのリストに数多く掲げられており、デザインに関するドキュメンタリー映画が作られたことについても他とは異なる特徴をもっている("Crafting Arzium"とGoogleで検索してくれ。)。しかし、みんなこのゲームに関して話すことをやめてしまったように感じる。私は、期待していたのと同じくらいこのゲームが大好きな数少ない人たちの1人だ。
公平のために言うと、このゲームには多くのプレイヤーが要求される。前二作以上に長くて入り組んでいる。このゲームの対象となる人たちが含まれるベン図が小さくなるかもしれないくらいまで、このゲームには、数個の異なるジャンルが組み合わさっている。物語が紡がれ、ダイスを振って戦闘が行われ、巧妙なグリッド上にユーロ形式で建物が建築されるということは、プレイヤーが行うことの一部にすぎない。ただ、このベン図には、まさしく私が含まれているので、わくわくしたよ。コンフリクトゲーム(conflict games, ※インタラクションが強い、戦闘等があるゲームが想定される。)、空間パズル、物語は私の愛するものだ。このゲームは長すぎると言う人もいる。けど、私は、終始、プレイすること全てを楽しんでいる。
個人的には、この作品がLaukatの絶頂期である。戦闘システムは、「スリーピングゴッズ」を思い出させるが、この作品の方が優れている。無関係なカードで埋まることはないが、カスタマイズ性に優れており、プレイヤーが購入することができる特殊能力の形で運要素が軽減されている。リソースの収集は、「アバブ&ビロウ」よりもランダム性が少ない形で機能しているが、それでもなお多少は物語に基づいている。建物の建築には、ゲームの最初にランダムで生成される所定のパターンに従わなければならないので、巧妙な計画立てが必要とされる。ボード上の探索は、「ニア&ファー」よりも熾烈ではないし、よりオープンである。物語は、今までの作品と同じくらい奇妙で心温まるものだ。そうだね、おそらく、このゲームはほんの少し長くて、特に三、四人のプレイヤーだとそうなる。けど、もし、Ryan Laukatの変わった思考とユーロゲームの感性に浸るのが好きなのであれば、このゲームが大好きになるはずだ。
2位:「Resurgence」
過小評価されているデザイナーであるStan Kordonskiyは、昨年発売された2つのユーロゲームに主体的に関与していた。そして、みんなは「Endless Winter: Paleoamericans」を話題にしているけれど、このゲームのほうがさらに優れている。世界崩壊後のロシアという設定は、近頃は、だいぶ嫌な感じがするように思えるが、このゲームはうまく機能している。全てのリソースはカツカツで、あらゆる種類のワーカーを獲得する能力もある。プレイヤーは、モスクワで物品を手に入れたり、自分のワーカーを用いて個人の本拠地を強化したりすることができる。契約の達成は標準的なものだが、高レベルのミッションを行う前に特定の条件を達成しなければならない。
このゲームを傑作の中量級ユーロゲームにさせているのは、バッグビルドとワーカープレイスメントの組合せではなく、各ラウンドの最初に行う秘匿での競りである。個人のスクリーンの裏で全てのワーカーを置き、モスクワのどの区域に配置するかを決断する。各区域に最も多くのワーカーを配置したら、かなりのボーナスが得られる。したがって、時には、プレイヤーは、想定される時期よりも早い時期に、より多くのワーカーを送り込むこともある。この点は、緊迫感があって胸が張り裂けそうになる。時として、自分の計画を遂行するためにボーナスとして与えられる資源1つが必要なだけなのに、その1つが手に入らないことがある。
秘密のワーカーの決断以上に、このゲームが讃えられるべき理由は、その完成度の高さ(the execution)にある。Kordonskiyのゲームは、いつも完全に危うい状況になるようにテストプレイされており、このゲーム以上のものはない。妥協は存在しない(no cheap outs)。プレイヤーは、あらゆるリソースのためにずっと争うし、全てのワーカーの配置場所は、適切な状況下では有効に機能する。結局のところ、あらゆる事象は、常に1つの動き、1つのワーカー、1つの配置に行き着くことになるように思われる。"もし、あそこに行ってさえいれば、勝っていただろうに"と、自分に言い聞かせることになる。そして、そういった考えが、もっとこのゲームをプレイしたいと思わせ続けてくれる。このきつさというのは、テーマにも見事に合致している。
全部包み隠さず話しておくと、私は、Stanにインタビューをしたことがあって、人として彼のことが好きになった。そうすると、私は、このゲームに対して好意的になりやすかったということになる。けど、もし、みんなが私のバイアスを疑うのであれば、おそらく、私が今年プレイして、一緒に遊んでくれた人たちみんなが大好きだといっていた唯一のゲームであったということも付け加えておくよ。遊んでくれた人たちは、普段はユーロゲームをそこまで楽しむすらできないような人たちもいた。
1位:「Wonderland's War」
「Wonderland's War」は、うまくいくはずがないと思っていたゲームだ。けれど、どういうわけか、見事にうまくいったよ。私が誰かに"このゲームは、「ブラッドレイジ」が「クアックサルバー」に出会ったようだ"と伝えると、半信半疑の視線を感じるんだ。まぁ、当然、そうなるよね。エリアコントロールと戦闘に加えて、ランダムで多くの狂気を袋から引いてくるなんて、私には、確実に成功する組合せのようには思えないんだ。メカニズムについて話をする前に、何がこのゲームをうまく機能させているかについて私が感じたことを話すべきだね。特に、どうして、戦術的な戦闘ゲームに過酷なランダム性を導入しているにもかかわらず、プレイヤーがそれを許容しているのかについてだ。これを可能にしているのがテーマだ。私は、「不思議の国のアリス」が大好きで、これに言及するだけでいい気分になれる。だが、たとえ、特別に好きではなかったとしても、「不思議の国のアリス」をテーマとするゲームをプレイして、そのゲームが予測可能で公平であるべきだなんてことを思うのは難しい。
プレイヤーに重要な奇想天外な話を渋々認めさせること以上に、このテーマは、見事にメカニズムもまとめ上げている。ロンデル形式のドラフトは、お茶会として完璧に機能していて、プレイヤーは、後の戦闘フェイズに向けてカードを獲得するためにテーブルの周囲を進む(Eric Langがこれをデザインしていたらなと思っていることは容易に想像できるね。)。この戦闘ゲームの傭兵は、全てルイス・キャロルの本の中に出てくるばかばかしいキャラクターで構成されており、みんなおどけた能力が備わっている。プレイヤーキャラクター(マッド・ハッター、アリス、赤の女王、ジャバウォック、チェシャ猫)の特殊能力は、あまり強力になりすぎることなく楽しいものだ(まあ、マッド・ハッターは強すぎるが、ゲームに完璧はあり得ない。)。それに、ゲームのアートスタイルは、LSDでトリップしたみたいだ(like an acid trip)。ああ、これは可能な限りの最高な賛辞だよ。
戦闘では、お茶会のフェイズで採用した生物を自分の袋から引いてきて、戦闘力を増加させる。けど、当然、狂気チップにより、自分の袋は徐々に変化する。もし、あまりに多くの狂気チップを引いてしまったら、バースト(bust)してしまい、戦闘に敗北することになる。プレイヤーが採用した生物からは、多くの特殊能力が得られる。それは、袋から取り出されると同時に発動することが多いが、プレイヤーエイドで全てがうまく説明されていて、ゲームが要求する計算不可能な雰囲気をもたらしながら、どうにかこうにかして多く取りすぎないことを避けるだけだ。
戦闘を予測不能にさせているのは、プレイヤーに与えられるクエストだ。一方では、これらのクエストは複雑ではなく、「ブラッドレイジ」のように、単純なゲームの目標を思い起こさせるが、単純な目標ですら、一見すると奇妙なことをプレイヤーにさせる。戦闘力を8か9か10にしなければ達成したことにはならない目標を持っていたとすれば、そのプレイヤーは、みんなが予想していたよりもかなり遅いか、かなり早い段階で戦闘から離脱するかもしれない。こういう出来事があると、プレイヤーは、他のプレイヤーが、良いプレイというよりも腹いせに行う戦闘に固執しているのではないかという被害妄想(paranoia)に取り憑かれる(ところで、こういうことは、被害妄想じゃなくて、間違いなく起こり得るけどね。)。
そして、こういったおかしなプレイヤーの行動や運の悪さに由来する奇妙で嫌な感情というのは、普段、私が求めているものではない。けれども、このゲームにおいては完璧だ。私は、言葉とおり、3回連続でダブル狂気トークンを引いてしまった直後に、イライラが募って部屋にそれを投げつけた回があったよ。だけど、ゲーム終了までには、めちゃくちゃ楽しめたことに幸せを感じていた。不思議に思うかもしれないけど、私はそのゲームで勝利せず、惜敗した。しかし、これこそが、このゲームを非常に奇妙な奇跡を起こさせた要因だった。子供の頃から、ゲーム中において、駒を投げたり、そんなふうに振る舞ったりしたことはないと思う。けど、どういうわけか、それが、不思議の国の住人たちの世界では楽しさの一部となっている(私がこの行動をとったとき、卓にいた他のプレイヤー全員が、長い間、笑いを抑えきれずにいた。)。
大抵、自分では認めたくないとしても、私は勝つことに楽しみを見出している。しかし、このゲームでは、ほとんど勝てないのに、プレイし続けたいと思った。「Wonderland's War」は、考えどころがある戦略ゲームだという幻想を与えてくれる。それに、もし、あらゆる動きを正しく行えば、最後にはその優れたプレイが報われるだろう。けど、このゲームでは、技量は、プレイヤーが重要だと思うくらいには報われるにすぎず、プレイヤーが最も運命の祝福を必要とする際には、残酷な運命が無慈悲にかつ滑稽にプレイヤーを突き刺すだけだ。
多分、私はマゾヒストなだけだ。だけど、このゲームは、他のゲームにはほとんどないような感想を抱かせてくれる。つまり、このゲームは、冷めた目で自分を眺めさせてくれる。そして、この一年のストレスと苦しみの中で、これはギフトであったし、そういうことで、このゲームが2022年のベストゲームとなった。
選外佳作
「ティルトゥム」と「兵馬俑」は、このリストには入らなかったが、優れたユーロゲーム2作品だった。その理由の一部は、私はゲームのソロモードに価値を置いていて、この2作品は、私が楽しむ単純な自分のスコアを更新する的なバリアントではなく、ゲームのバリアントの代わりに、Dávid TurcziのAIの対戦相手を理解するのにより多くの時間を費やすタイプのものだったからだ。とはいえ、両作品とも素晴らしくプレイしがいのある(crunchy)ユーロゲームだし、「兵馬俑」は、今まで見てきたこの種のゲームの中で最高の製造品質が備わったゲームの1つだ。「ゴーレム」は、素晴らしいテーマが乗っかった、また別の優秀なユーロゲームで(これまた、私にとっては2022年のゲームだ。)、素晴らしいテーマと、今まで見たことがない形で重量級のユーロゲームにプッシュ・ユア・ラックを付け加えているゴーレムの移動メカニズムがある。
他にもいくつか優れたゲームがこのリストには挙がらなかった。その理由は、この上位10ゲームよりも私の好みに合わなかったからだが、それでも言及しておく価値があるね。「Mindbug: First Contact」は、お金を使ったり資源を集めたりせずにプレイする、見事な二人用の対戦カードゲームだ。それに、「Creature Comforts」と「Planted: A Game of Nature & Nurture」は、家族で遊ぶのに向いた重さの素晴らしいゲームだ。
おわりに
最後の数段落は、2022年のがっかりしたゲームについて書こうとしていた。それに、結構な数があったことは間違いない。しかし、2つの理由から、それをすることを止めることにした。1つ目の理由は、みんなが大嫌いになったゲームではなく、大好きになったゲームについてのコメントがほしかったからだ。2つ目の理由は、私の右手がタイピングのせいでこの20分間痙攣し続けたからだ。だから、もし、そういうことを聞きたいのであれば、下記のリンクにあるポッドキャストを聞いてくれ。
さて、読んでくれてありがとう。そして、下記のコメント欄で、2022年のゲームのどの作品が楽しかったのか教えてくれ。それじゃ、また次回に。読んでくれてありがとう!
最新のポッドキャストのエピソード:
「Two Wood for a Wheat」のDiscord:
以上
※Anthony Faber氏の記事として、以下のものがある。