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ゲームをリプレイさせるために: 変化する得点手段の妙(What Keeps Me Coming Back to Games: the Magic of Variable Scoring)

本記事は、Anthony Faber氏が2020年9月25日に投稿した「What Keeps Me Coming Back to Games: the Magic of Variable Scoring」の翻訳である。

Anthony氏のゲームのメカニズムに関する話となる。Variable Scoring、つまり、変化する(変動する・可変式・変動式)得点手段のことを意味し、得点カード、得点タイル等がゲームのたびに異なることを意味する。得点手段が変わるという要素はゲーマーには馴染み深い。その点に関する素晴らしさを検討した記事となっている。少し古い記事であるし、派手な議論ではないが、参考になるかと思われる。

なお、variableという単語の翻訳は難しい。プレイ毎に変わるという意味合いだ。頭を空っぽにして「可変式」という訳語を当てるのが無難だが、個人的にやや意味が取りにくいと感じる(可変式のボードならば馴染みが出てくるのであるが……。)。本記事の和訳が成功しているとは思わないが、「変動する」、「変化する」等の訳語を当てている。ご留意いただければ幸いである。

ヘッダー画像は、みんなのフォトギャラリー機能を使用した。また、本文中の画像は引用にとどまると考えられるのでクレジットを付記した(リンクは元記事から参照されたい。)。

元記事は以下のリンクを参照されたい。

もし、あまりの文章量に目がかすんでしまったら、ポッドキャスト「Two Wood for Wheat」のほうで聞くことができる。そこでは、共同ホストであるPat Flanneryの変化する得点手段についての考えだけでなく、Elizabeth Hargraveの「マリポーサ」のレビューも聞くことができる。

どうやったらゲームが楽しく遊ばれるかというと、どういった得点手段が実装されてるかが何よりも重要となる。長い間にわたってリプレイされるかどうかについては、ゲームのたびに変化する要素が何よりも肝心だ。そうすると、変化する得点手段(variable scoring, ※可変式の得点手段)は、現代のボードゲームを継続して楽しませるための核心部分といえる。(ゲームの)変動性(variability, 多様性)を高めるには、可変式/モジュラーセットアップ、継続的に利用できる固有能力(プレイヤーが利用したりドラフトして選択することができる市場に出現するカード、タイル、契約を含む。)、変化する得点手段の3つの方法があるといわれている。これら一つひとつについて語ると、本1冊ほど書けてしまうだろう。

モジュール方式を採用しても、変動性が高まるわけではないだろうなんて指摘をして、わざわざこういった変動性をもたらそうとする必要なんてないんじゃないか(the need for any of these artificial insertions of variability)と疑問を抱く人もいるかもしれない。チェスようなゲームはモジュール性が全くないが、今までに制作されたほとんどのゲームと同じくらいの変動性がある。これに対して、Reiner Kniziaも話すようなことだが、私としては、空間的な広がりのあるアブストラクトゲーム(spatial abstracts)は、たくさんの駒(pieces)で埋め尽くされた広いマップとの相乗効果のおかげで、単純なシステムを使っても高い変動性をもたらすと思っている。これだけ言われても、他のゲームにおいて変動性を高めているシステムの力のことは、あまりわからないままだ。そうはいっても、変化する得点手段のような変動性の要素をただ付け加えたとしても、面白くない(stale)ゲームが面白くなるわけではない、ということは否定しようがないよね。

変化する要素を褒めそやす私に向けられる別の反論として、現代ゲームには、得点要素、すなわち勝利点を暗黙のうちに必須のものとしている点があるかもしれない。勝利点のないゲームだって何ら問題はないけど、勝利点があることで、ゲームごとにどうやって勝者を決めるかについて、またとない(unrivaled)柔軟性と変動性をもたらす。異なるアクションは、異なるゲーム毎に、異なる方法で異なる得点を生むので、常に新鮮なプレイ体験を保つことができる。"ポイントサラダ"(point salad)と呼ばれるには理由がある。得点(とか、お金とか、他の包括的な(generic)通貨とか)がないまま、複数の勝利への道筋を設けることは難しいだろうと思う。

例えば、文字通りのレースゲームで考えてみるといい。プレイヤーは、ミープル、車、馬等をゴールまで走らせる。たとえ、プレイヤーが走らせる駒(avatar)に異なる力/能力が付与されるとしても、ゲーム毎にプレイ感を変えるのは難しいと思われる。レースゲームは、異なるマップやトラック、様々な組合せで組み立てることができるモジュラーマップやトラックを採用して、変動性の問題を解決している。この例からわかるとおり、得点手段を変化させることは、得点/通貨を用いたゲームやユーロゲームに限られた方策ではないということだ。ただ、私が遊ぶゲームのほとんどはそういったゲーム(※得点/通貨を用いたゲームやユーロゲーム)なので、これからは主にそのようなゲームについて話すことになる。

では、得点手段を変化させる様々な方法を見ていこう。

取得可能な変化する得点ツール

クレジット: Rodney Thompson

このうざったらしい用語で伝えたいことは、変化する得点手段と異なる能力が入手できること(variable power availability)が合わさる点にある。英語では、得点するのに必要なものが、ゲームを通して変化しながら入手可能であることを意味している。

これは、「クランズ・オブ・カレドニア」、「Lords of Waterdeep」、「マルコポーロの旅路」のような資源変換ゲームにおいて、契約やクエストの形のようでみられるかもしれない。プレイヤーが資源を得点に変換できるカードやタイルは、アクションを行うことで利用可能となる変動する市場(※ランダムでカードやタイルが配置される場)で、手に入れることができる。

また、タブロービルディングのゲームでも似たようなことがみられる。そのようなゲームでは、得点分の価値があったり、得点そのものを生み出すために使われたり、ゲーム終了時に変化する得点分の価値があったり(実際には、ゲーム終了時に到達した条件を参照する得点カードの形式をとる。)する建物や他の種類のカードを、プレイヤーが購入/選択/ドラフトすることがある。

ユーロゲームをみれば、ゲームの数とほぼ同じくらいの数のこういった様々な得点手段の仕組み(scoring devices)がある。これらの仕組みが相互に関連して有機的なつながりをもって利用できることが(the organic availability)、変動する得点手段の基礎となっており(bread and butter)、それら(※ユーロゲーム)では、大抵のゲームで採用されている方法となっている。ボード上での現れ方にはランダム性があるが、変動性を付加したことによる代償として受け入れられている。ゲームそれ自体も、このような仕組みを巧みにコントロールして獲得することを目的として設計されている。私は、ゲームの多様性に貢献するような重要性を認識してもらうためだけに、こういった仕組みに言及する。この記事では膨大な可能性の海に飛び込んで検討することはしないよ。ゲームの中盤と終盤にある、特定の変化する得点条件に焦点を当てたいと思っているからね。

ゲーム終了時(に参照する)カード/タイル

クレジット: Jamey Stegmaier

古めかしい(ol')秘匿された目標カードのことは皆さんご存知だろう。その最も陳腐な(clichéd)形式では、全員に裏向きでカードが配られて、それぞれのプレイヤーが目標を達成することができたら、様々な方法でゲーム終了時に得点を獲得できる。「サイズ -大鎌戦役-」でみられるように、時として、目標達成時にカードを公開するが、ほとんどの場合、ゲーム終了時に公開されることになる(tallied)。他のゲームでは、特定の場所でアクションを行うことで、ゲーム中により多くの目標カードを手に入れることがあるが、それはトラブルの起こる原因となる(ここからが本論だ(more to come)。)。

ゲーム終了時の目標は、ゲームデザインに変動する得点手段を詰め込む(shoehorn)方法としては、まずまず(okayish)といったところだ。しかし、多くの場合(oftentimes)、際立って面白い意思決定が形成されることはない。なぜかというと、プレイヤーは、とにかくゲーム終了時に得点となる物を集めることになる。これは、やっていることがもう1つ増えたというだけで、他のプレイヤーも(自分と)ちょっと違うことをやっているにすぎない。更によろしくないのは、プレイヤーが間違ったプレイをすると、バランスの問題が生じてしまう。

例えば、「サイズ -大鎌戦役-」の目的カードは、カードの中には他のカードと比較して、めちゃくちゃ簡単に達成できてしまうものがあるという点で、ある種の忌まわしいもの(abomination)となっている。あるプレイヤーは、何十個ものリソースを集めて、馬鹿らしいほどあちこちのマップ上の場所に運ぶことが要求される。目標を達成しようとするのが純粋に罠と思えるくらいだ。他方、他のプレイヤーは、普通にプレイをしたら、ほとんど自動的に達成されるような目標であることがある。これは、もうはっきり言うけど、悪手だよね。

クレジット: W. Eric Martin

もっとよく見かける問題は、ゲーム終了時の得点カードがゲーム中にランダムに引かれる時に生ずる。これは、以前、このブログで議論した問題である、ゴミ箱あさり(dumpster diving, ※多くの場合、ゲームの後半にデックからランダムにカードを引いて、得点に繋がるようなカードが獲得できることを祈るというメカニズムを指す)につながる。「ノイシュヴァンシュタイン城」や「Egizia」では、ゲームが終わりに近づくとアクションを行って、ゲーム終了時の得点カードをランダムに引く。そんで、ほらやったぜ!(voila)ってなる。自分は、カードが要求する全ての条件をたまたま達成していたので、大量の(bushelful)得点分の価値があるカードを引いた。相手はどうかっていうと、無価値なカードを引いてしまう。相手は残念すぎるな(Sucks to be you)。もっとうまい方法は、これらのカードは表向きで長く見られるようにしておいて、プレイヤーが、良いカードを引いて勝ち負けを決するよりも、カードを手に入れることを中心にした戦略を練ることができるようにすることだ。

クレジット: Shem Phillips

おそらく私の素晴らしい洞察によれば(in my probably less than humble opinion)、うまくいってない別のゲームは、「西フランク王国の聖騎士」だ。公平を期すためにいっておくと、このゲームは実直(solid)なユーロゲームといえる、ただ、ゲーム終了時のシステムを除けばということになる。このゲームでは、変動するゲーム終了時の得点となる目標は共有されていて、ランダムで引くことによる欠陥(pitfall)を回避している。しかし、ゲームの開始ではなく、ゲーム通して段階的に目標が公開されるので、偶然による(arbitrary)不公平さが再び生じてしまっている。言い換えると、ゲームの途中で、Xという行動をすれば大量の得点を得ることができるが、Yという行動をとると得られないということが判明する。もし、あるプレイヤーがずっとXという行動を取っていて、相手がYという行動を取り続けていたら、そうね、Yという行動をとっていたプレイヤーは、当て推量が外れたせいで残念なことになってしまう。

デザイナーがこの方法をとることにしたかは理解できるよ。批判に応答する形で、デザイナーは、最初から公開された目標を使ってテストプレイをしたら、とても決まり切った暗記的な(rote)ゲームプレイになってしまったって言ってたんだよね。こういった目標を達成して得点を得るために、全く同じ道筋をたどるだけだった。少なくとも、この不公平なバージョンにおいては、プレイヤーは、今までしていなかった方向性に軸足を移す(pivot)べきかどうかについて、ダイナミックな意思決定を迫られることになる。

しかし、デザイナーに対する私の回答は、暗記的なゲームプレイと偶然による不公平さを天秤にかけて選ぶ(choosing between)べきではないということになる。もし、そういった選択を迫られたら、どちらも選んではいけない。つまり、ゲーム終了時の目標を取り除くか、どちらの観点からも公平で説得力のある目標を見つけるかしかない。

クレジット: Todd Rowland

全てのゲーム終了時の得点カードが傑出していて、台本とおりのプレイをうまく避けているゲームとして、「タイニータウン」がある。このゲームでは、建築できる建物とゲーム終了時の得点カードが一体となっているので、得点手段が異なっているということは、ゲーム中の効果が異なった、違う建物ということにもなる。さらに、1ゲームで使われる数よりも、はるかに多くの建物が使用可能となるので、毎回、セットアップがかなり異なるように感じられる。つまり、毎回異なる(unique)セットアップ下の建物と得点手段がどしたら上手く機能するかを見極めることが、このゲームのスキルと楽しさの半分を占めている。

クレジット: W. Eric Martin

終了時の得点カードを、ゲーム開始時に完全公開したまま見事に取り入れた重めのゲームとして、「アンダーウォーターシティー ズ」がある。このゲームの開始時には、強力でランダムに選択される、誰もが入手可能なゲーム終了時の得点カードが数枚ある。そして、一旦、プレイヤーがアクションを使って1枚の得点カードを取ると、そのカードはそのプレイヤーだけのものになり、他のどのプレイヤーもそのカードを利用して得点することができなくなる。

しかし、ゲームが始まるやすぐに、得点カードを急いで取りに行かない強力な理由がある。つまり、得点カードはゲームでプレイするには極めて高くて、手札の枚数上限が厳しい。だから、もし、プレイヤーが1ラウンド目で得点カードを取れば、非常に長い間(light years)、自分のエンジン作りを遅らせて、自分のタブローに加えるか、あるいは、そのカードをプレイするために何ラウンドも待っていないといけなくなる。これは、カードのボーナスアクションを得るためにカードの柔軟性(※余裕を持ってカードを入手すること)が必要にあるので、間違いなく悪い手といえる。

以上の理由から、ゲーム終了時の得点カードをすぐに取るプレイヤーはいなくなり、いつそのカードを取るべきかという決断が本当に難しいものとなる。長く待ちすぎると、誰かがさっと取ってしまう(snag)。そして、ゲーム終了が近くなると、そういったカードを獲得するためのアクションスペースが、ラウンドのかなり早い段階で塞がれてしまう。あまりに早く獲得してしまうと、上述した問題が発生する。もし、誰かが同じ目標を達成しようとしていると気づいてしまったら、いつ極めて重要なカードを手に入れるべきか非常に難しい決断をすることになる。

クレジット: W. Eric Martin

ゲーム開始時に、ゲーム終了時の得点カードを提示して、後になってそのカードを巡る緊張感のある争いを生み出しているのは、何もユーロゲームに限ったことではない。「ライジングサン」は、このことをうまく成し遂げた、マップ上に野郎どもを配置するゲーム(a dudes on a map game)だ。ゲームの大部分において、得点カードは、ゲームの3つの季節(ages)の最後でしか入手できない。しかし、前もって、プレイヤーはカードを知ることができて、多くの場合、後でカードを手に入れる意図をもって、その目標を達成するためにプレイすることになる。

だが、得点カードを得ることが難しい場合もあり得る。他の誰かが、そのアクションを先立って行うかもしれないし、プレイヤーの1人がカード獲得アクションを宣言したら、全プレイヤーがそのアクションをすることができるが、宣言したプレイヤーが最初にカードを選び、そこから時計回りにアクションを処理する。プレイヤーは、カードを前提に(※計画を)築き上げる(building up to)ことができるが、もし、どうやってそのカードを手に入れられるかを正確に計算してなければ、誰かが先に取っていってしまう。それに、最初に行動できた場合でさえも、どうしても必要となった別のアクションを選択しないといけないかもしれない。さらに、その最終ラウンドにおいて、ゲーム終了時の得点カード以外のカードが入手できる。その最終ラウンドにめっちゃ(Uber)強力なモンスターが出てきたら、得点を取るか、あるいは、もう1つの得点方式に影響するような、盤面をコントロールするための強力な道具を取るかとの間で、悩んでしまうだろう。

クレジット: Todd Rowland

この話の最後になるが、Flatout Gamesのメンバーは、フィラー(※ 空き時間を埋めるぐらいの極めて短時間で遊べるゲーム)や、アブストラクトゲームにおいてですら、変動するゲーム終了時の得点カードやタイルを上手く実装して、素晴らしいものを作れること(sing)を示している。Flatout Gamesは、華やかなグラフィックデザインと、巧みでパズル的なゲームプレイで知られている。もっとも、私は、変動するゲーム終了時の得点手段を賢く使っており、あまり目立ってはいないが、同じくらい彼らの成功の非常に重要な要因だったと主張している。

彼らの最初の作品で、実際にはAEGを通して発売された「ポイントサラダ」は、毎手番において、2枚の野菜カード(資源)と1枚のゲーム終了時の得点カードのどちらかをドラフトして選択するフィラーゲームだ。ドラフト/タブロービルドのゲーム分野において、数多くの軽いフィラーがあるけれど、ゲーム終了時の得点カードは、特に、それぞれの種類のカードを獲得量をどうやって調整するかという点において、このゲームに真の独自性を与えている。野菜カードが多すぎて、得点カードが十分でないと、対戦相手はそれ以上に何度も得点を獲得することになる。そして、得点カードが多すぎて、野菜カードが十分でないと、得点カードがほんの僅かな価値しかもたないことになる。得点カードが現れるタイミングには運要素が少し絡むが、これは、10分のフィラーにわくわく感を加えるだけで、2時間のユーロゲームで同じようなランダム性を与えられると、満足感はぐっと下がってしまう。

クレジット: Shawn Stankewich

Flatout Gamesの最近の作品である「キャリコ」は、変化する得点条件が、変化が乏しく、単純な空間タイル配置パズルになりかねないところに、どれほど十分な多様性を付け加えられることを示している。ゲーム終了時に3つの得点手段がある。そのうちの1つは常に同じで、同じ色のタイルが3つ繋がるたびに3点の"ボタン"を獲得する。しかし、各タイルには模様もあり、ゲームごとに、得点するのに必要な模様が異なった"猫"タイルが並べられる。最後に、ゲーム終了時の得点タイルが3つあり、ゲーム開始時に個人ボードに直接配置されていて、種類と場所がゲームごとに異なっている。つまり、得点タイルの周りの6つのヘックス(六角形)に、どのような色と模様のタイルが配置されるかに基づいて得点を得ることになる。タイルの色と模様の双方に基づいて得点を得ることとの間の緊張感(つまり、一方を満たそうとすると、多くの場合、もう一方を満たすことができない(forfeiting))と、変化する得点タイルと猫タイルが組み合わさって、毎回、緊張感や異なる良質な体験を生み出している。

クレジット: W. Eric Martin

Flatout Gamesは、今まさに(※元記事投稿時点)、Kickstarterにおいて、「Cascadia」という別の空間パズルゲームのプロジェクトを進行している。通しのプレイ動画を見たが、ゲーム終了時の得点手段が変わることによって多様性が生み出されている軽いゲームであると気付いたが、驚くことはなかった。このゲームでは、異なる地形のタイルを全部配置し、時折、地形上に様々な動物を加えていく。ゲームごとに変わらないルールで、エリアマジョリティを取った地形から得点を得るが、共有された得点カードを通じて、動物からはゲームごとに異なった得点を得る。あるゲームでは、プレイヤー全員のきつねは、その隣に配置された別の動物とのペアの数によって得点となるが、次のゲームでは、きつねは全く違った得点条件となる。各動物には、ゲーム開始時にランダムに選ばれる3つの異なる得点カードがあり(ストレッチゴールとKickstarter限定により四、五個になると思う。)、各プレイヤーに得点条件を適切に評価して、それに応じて行動する機会を生み出している。

ラウンド終了時(に参照する)得点タイル/カード

ここで、正直に話すよ(confession)。大抵はラウンド終了時になるが、変化するゲーム中盤の得点手段が、この話題の中で最もわくわくさせてくれる話で、そもそもこの記事を書いた最大の理由なんだ。ゲームを通じて特定のタイミング(set points)で起こる得点手段や、ゲームごとに異なる得点手段というのは、ゲーム体験に多くのダイナミックさを与える。ほとんど全てのゲームにおいて、何種類かのゲーム終了時の得点計算があったり、少なくとも、ゲーム中にいつでも起こるような得点計算があったりする。それと、ゲームの途中で、特定のタイミングで起こる得点計算が組み合わされば、プレイヤーの中盤の目標と終盤の目標との間に緊張感を作り出すことができて、最高だ。このことがはっきりわかる例を見ていこうか。

クレジット: W. Eric Martin

Alexander Pfisterの「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」は、変化するラウンド終了時の得点手段が上手くいった模範例だ。比較的軽いタイル配置ゲームで、「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」は、タイルを値付けして獲得するシステム(price setting tile acquisition system)で最もよく知られている。しかし、それは、ゲームを新鮮さを吹き込む、変化するラウンド終了時の得点手段であり、それがなければ、あまり知られてない名作の地位(a minor classic)にすらならなかっただろう。

このゲームでは、ゲームに含まれている何十個のタイルから引いてきた、4つのラウンド終了時の得点タイルが使われる。このタイルからは、プレイヤーが作り上げたタブローの配置条件を満たすセットコレクションごとにポイントが得られる。実際には、6ラウンドのうち3ラウンドから各条件を見て得点が入り、ゲームが進むにつれて、各ラウンドでの得点が増加していく。最初のラウンドでは、条件Aのみについて得点が入るが、3ラウンド目では条件AとCについて得点が入り、最終ラウンドでは条件B、C、Dについて得点が入る。

議論してきた他のゲームのように、今まで遊んできたゲームにおいて、プレイヤーが絶対に見たことがない組み合わせだろうと思われるほど、十分な数(enough possible)のセットアップが、このゲームにはある。そういった理由から、このゲームは、タイル配置の部分が非常に単純なものであるにもかかわらず、台本通りであったり、決まり切っていたりすることには決してならない。こういった進行中の目標に到達するために、タイルのパターンをドラフトして組み上げることに加えて、ゲーム終了時にしか得点にならないタイルも中にはある。その組み合わせのおかげで、変動するタイルの価値を考慮する前であったとしても、タイルの獲得が自明なものとはなっていない。

クレジット: Keith Matejka

昨年、発売された「カートグラファー」は、同じような定式に従ったものだった。このゲームは、ビンゴのように、全プレイヤーに公開される(turn up)カード上に記載されたテトリスの形を書き入れていく形式のフリップ&ライト(flip and write, ※カードをめくって書き込みをするゲーム)である。しかし、Pfisterのゲームのように、カードには4つの大きく異なったラウンド終了時の得点条件が含まれており、このゲームにおいては、4ラウンドにわたって2つずつ使用していくことになる。以前の「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」のように、「カートグラファー」は、おそらく偶然ではなく、誰もが欲しがるドイツ年間ゲーム大賞エキスパート部門にもノミネートされた(「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」は大賞をとっている。)。頭がおかしいんじゃないかって言ってくれ。だけど、ゲーム大賞の審査員は、大きく変化するラウンド終了時の得点手段が好きらしいんだ。

2つの空間ゲーム(spatial games, ※「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」と「カートグラファー」のこと)において、こういった異なる得点手段が機能する方法に関する良いことの1つは、空間(space)が埋まったり分離されたりするので、ある得点手段を達成するためにした行動が、別の得点手段を達成し難くするということだ。こういう得点手段が、緊張感を出しながら、お互いを争わせてバランスを取っている。

クレジット: W. Eric Martin

中盤の変化する得点手段ゲームの王であり、高い役職にある偉大な者(grand poobah)であり、銀河系の皇帝といえば、「テラミスティカ」(もしくは、「ガイアプロジェクト」、好きな方を選んでくれや。)だ。ゲーム開始時に、ラウンド終了時の得点タイルが1枚引かれて公開され、6ラウンドある各ラウンドで繰り返される。特に、そのタイルは、ラウンド終了時に獲得するリソースのボーナス手段をも同じように提供していて、得点以外の部分でも変動性を加えている。

さらに、このゲームには、ラウンド終了時にパスしたら得られるタイル(pass tiles, パスタイル)も複数あり、ランダムに選択される。その報酬は、それを選択した時にプレイヤーに与えられる。パスタイルを最初に選ぶ権利は、ラウンドで一番初めにパスをしたプレイヤーに与えられる。パスタイルの中には、特定の建物を建築したことに応じて、実際にその時点で得点を与えるものもある。つまり、基本的に、ラウンド終了時の得点タイルには2つの種類(set)がある。通常のラウンド終了時の得点タイルと、前述のパスタイルだ。そして、両方のタイルについて、ゲーム開始時に、もらえるリソースと得点を獲得できる可能性(potential)の双方の価値を見積もらないといけない。

だけど、これで終わりじゃないんだな!「テラミスティカ」と「ガイアプロジェクト」(TM/GP, 以下、2つのゲームを併せてそのように表記する。)では、特定の上級建物を建てると、3種類目のタイルである恩恵タイルも出てくる。そして、恩恵タイルはエンジンビルドに関するボーナスを与えてくれると同時に、ゲーム中に特定の建物を建てることに応じて、より多くの得点手段を与えてくれる。この3種類目のタイルは、ゲームごとに変化するわけではないが、ゲーム中にどうしたら得点を取れるかといった計画を立てる際に考慮する必要がある、3種類目のタイルを導入する。TM/GPのゲーム終了時の特典は極めて重要だが、ゲーム全体を通してこういったタイルから獲得してきた得点の積み重ねよりもはるかに少ないので、ゲーム中に絶対に落とせない得点となる。

さらに、TM/GPは、エンジンビルド要素がゲームの大部分の要素を占めるので、ゲーム中盤の得点する機会と、プレイヤーのエンジン構築との間で、強力な緊張感を作り出している。最も大きなエンジンを構築したプレイヤーは、実現し得る最高のエンジンを構築して、ゲーム終了が近くなると、ドヤ顔で(in a big way)そのエンジンを売却することで報酬が与えらることになるが、単に巨大なエンジンを構築しただけでは、十分な得点を得るだけの時間がないわけだ。とあるTM/GPの熟練したプレイヤーが言うには、"時々、自分のプレイヤーマット上の建物を全て建設してしまうプレイヤーがいるけど、そういうプレイヤーはいつも負けるよね"だそうだ。もし、エンジン構築がめちゃくちゃうまくいっているのであれば(kill it)、その過程で得点獲得をおろそかにしてしまっていることになる。自分のエンジン構築の可能性を犠牲にして、ゲーム中に得点を獲得する必要があるわけだ。ただ、得点獲得行動に全振りするのはいけない(But not all of it!)!何かしらエンジンを構築して、各ラウンドの最後に得点できるように成長させないといけないわけだ。

こういった競合している優先順位が、価値を正確に見積もらないといけないあらゆるゲーム中盤の得点獲得の機会や、一歩間違えれば、マップ上から無惨にも追いやられて拡大することができなくなるという事実が組み合わさることで、「テラミスティカ」を50回や60回も遊ぶような(俺みたいな)プレイヤーが、この重さのゲームからするとたくさんの人たちが存在するガチ勢コミュニティから(by hardcore community)、ど素人(newb, ※知ったかぶりをするという意味合いがある。)扱いされてしまうのは不思議ではないよね。

クレジット: luigi 'bove' de feo

このゲームがみんなに愛されるというわけじゃないのは明らかだ。けど、"一見しただけじゃ戦略がみえない"(non-obvious strategy)ことが素晴らしいことだと思えるなら、このゲームは、遊ぶべき本当に素晴らしい箱庭ゲームといえる。

そして、こういったメカニズムから得られる楽しさを体験する(benefit)ためには、TM/GPほどの頭おかしいゲームである必要はない。「バラージ」や「クランズ・オブ・カレドニア」の両方とも、重要なラウンド終了時の得点手段が特徴となっており(念のために言っておくと、どちらのゲームとも「テラミスティカ」から着想を得たと認識されている。)、どちらのゲームにおいても、ラウンド終了時の目標が、より明快な契約達成により得点を得られることと相反することが多く、それを体感するにはうってつけなわけだ。

クレジット: Jamey Stegmaier

そして、最後に、この数年で最もヒットしたボードゲームはラウンド終了時の得点手段が特徴的であること忘れがちであることに触れよう。多くの人たちは、タブロービルドと素晴らしい鳥のアートにばかり着目してるからね。しかし、ラウンド終了時の得点手段は、ゲーム終了時の得点カードと同じく、卵の配置や、ゲームの最終一、二ラウンドで支配的になるほど高価な鳥の購入に対して、良い得点手段の変化をもたらしている。

クレジット: Todd Rowland

そんな変化するラウンド終了時の得点手段なんて、「ウイングスパン」がたまたま実装してただけだろなんて思われないように、デザイナーであるElizabeth Hargraveは、そのメカニズムを強化して(has doubled down)、渡り蝶であるオオカバマダラを題材とした最新作「マリポーサ」では、得点の大部分を占めるようにした。私は、このゲームにおける得点手段の実装に対して全面的に賛成してるわけじゃない。ラウンド中盤の得点目標が、ゲームが進行するにつれて明らかになるというのは、その目標が明らかになった後に正しい進路を取っているかどうかがわかるので、ゴミ箱あさりの体験につながってしまう。けど、私が遊んだゲームにおいてはうまく機能しており、そういったランダム性は、比較的短くて軽いゲームという条件では悪いことではないと認めざるを得ないかな。

世の中には、他の形のラウンド終了時の得点手段というのがあると思う。実際には、最後に取り上げたゲーム(※「マリポーサ」)はちょっと意味合いが違うけれども、これを含めて、ゲームの中で同じような得点手段が二、三個あるというゲームはたくさんある。しかし、この項で挙げてきたゲームは、私がプレイしたゲームの中で唯一のもので、全体として珍しい部類のメカニズムのように思われる。これは不可解なことだ。そんなに実装するのは難しいことではないし、ゲーム終了時の得点手段と比較して変動性や緊張感があることは否定できない。

これらのゲームは現に成功を収めている(As is the success)。新作である「マリポーサ」を除けば、この項で言及したゲームを見てほしい。「アイル・オブ・スカイ:族長から王へ」、「カートグラファー」、「テラミスティカ」、「ガイアプロジェクト 」、「バラージ」、「クランズ・オブ・カレドニア」、それに「ウイングスパン」。これら全てのゲームが、BGGにおいて最も高い部類に位置しており、桁外れの評価されて、予想していた以上に非常によく売れている。これらのゲームが成功を収めた理由が他にあるのは明らかだ。けど、これらのゲームに実装された得点手段が長期的な成功を収める要因になった(give them legs for the long haul)と思わずにはいられない。そして、願わくば、もっと多くのデザイナーが気づいて、リプレイ性とゲーム中の難しい意思決定の両方を向上させる、こういった素晴らしいメカニズムを実装し始めてほしいと思う。

他のみんなはどう思ったかな。ゲームことに大きく異なる得点手段や勝利条件がルールにある、お気に入りのゲームは何かな。

以上

※他のAnthony Faber氏の記事として、以下のものがある。

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