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【名言とちょっとマジメな話】選挙と政治

修身・斉家・治国・平天下

『礼記-大学』


「私、選挙って人生で2度くらいしか行ったことがないんですよね」

 雑談時、相手からそんなことを告白され、少なからず衝撃を受けた。
 相手は30代半ばくらいの女性。定職(技術職)に就いて長年付き合った彼と結婚したばかりの常識人だ。理由は「誰に入れたらよいかわからないから」だった。

「誰にも入れたくないときは白票を投じますよ」と伝えたら驚かれた。いや、驚くのはこちらの方だ。

 若者の投票率が低いという話は知っているが、目の当たりにしてしまった。よく考えたらあまり周囲で選挙の話はしない。政治家の文句は言うのに。

 というわけで門外漢の小鳥が知ったかぶりで選挙と政治の話をしようと思う。


●選挙の話

 とはいえ選挙のしくみなどは、私が語るよりもこちらの本がわかりやすい。


 生憎、私は引っ越しの時に売ってしまったので具体的な内容の提示ができないが、これから選挙権を持つ年代である中学・高校生向けの平易な絵本である。なんなら学校で必読書にでもすればよいと思う。


 そして現状の投票率はこんな感じだ。


 直近の衆院選挙でいけば、60歳代が一番高くて71.38%、20歳代が一番低くて36.50%。大きくくくれば50歳代以降が高くて、30歳代以下が低い。
 ちなみに日本の人口ピラミッドはただでさえ50歳代と70歳代が一番多い。


統計局HPより。詳しくは下のリンクからどうぞ


 つまりは50歳代以降の人の声が届きやすいのだ。逆に言えば、政治家はその年代にウケる政策を掲げれば当選する。育児よりも介護と年金に力を入れていけば勝てそうだ。

 そう言えば、直近の選挙ではたかまつななさんが選挙に関する尖った動画を挙げ話題になっていた。


 批判もあるようだが、私は良い動画だと思う。若者に届きやすい媒体で分かりやすい表現である。Xで「保育所落ちた日本死ね」と書いて社会現象になろうとも、育児に力を入れる議員に投票しなければ変わらない。国民主権の民主主義国家で主張を通すならXではなく選挙なのだ。まずその前提を認識しておかなければならない。

 そして選挙自体も変わるべきだと思う。いまだにハガキを持って投票に行くが、様々な電子化が進んでいるのだ。スマホ投票ができるようになれば若者の投票率は上がるだろう。ワンストップ納税もネットでできる時代だ。QRコード付きのハガキでも良い。24時間体制なら、働き盛りの忙しい方も、お子様を寝かしつけた後の方でも投票ができる。

 ついでに被選挙者の公約やプロフィールなどが確認できるとなお良い。新聞でも取っていないと、そのあたりの情報がそもそも入ってこないのだ。

 単純に選挙に行くのが面倒くさいという意見も聞いたことがある。スマホ投票で一気に解決である。


 歴史の話を持ち出すのも恐縮だが、選挙はあたりまえの権利ではない。先人たちが勝ち取ってきた現在考え得る最善の公平な制度なのだろう。

 日本では1889(明治22)年にはじめて選挙という形ができた。ただし選挙権があるのは25歳以上の男性で高額納税者。人口の1.1%だ。
 1945(昭和20)年に20歳以上の男女となり、2016(平成28)年に18歳以上の男女となった。

 そう。まだ女性が選挙権を勝ち取ってから1世紀にも満たないのだ。今のおばあ様方は選挙権が無い時代を生きていた。そんなレベルである。もっと前に遡れば天皇と将軍の世襲制である。その時代の人から見たら国のトップを自分たちで選べるなんて、もはや夢物語だ。

 2世紀前にはファンタジーな話が、1世紀前に形作られ、現在はメンドクサイから行かないとなっているのだ。なんてもったいない。行こうぜ。ばあちゃん泣いてるぜ。

 ちなみに現在選挙の無い国についてchatGPTに聞いてみたら王様がいる系の国々でした。サウジアラビアやブルネイやオマーン、モナコやヴァチカン市国など。中国、北朝鮮は形式的には選挙があるそうだ。まあ、確かに王様ではない。

 では逆に投票率が高い国はというと、そもそも義務投票制を採用している国も多いらしい。ベルギーやオーストラリア、シンガポール、アルゼンチンなど。投票しないと罰則がある、というのも尻込みしてしまうが国の行く末を決めるのだ。案外義務にしても良いかもしれない。

 義務でなくても投票率が高いのは、ドイツ、カナダ、ニュージーランド、南アフリカ、スウェーデン、アイスランドなど。70~80%を超えるのが一般的だそうだ。

 だったら投票率の低いのはどこだろう。アメリカ、日本、スイスが50~60%だそうだ。chatGPTにお墨付きをいただいた気分である。アメリカなんてあんなに盛り上がるのに意外と低い。

 いやいや、50%あればわりと良いんじゃね? と一瞬錯覚してしまったが、選挙は多数決である。投票率が半数以下なら、被選挙者の人数によっては、もはや多数決の意義も無くなる。ふと見返してみると直近の衆院選の20歳代の投票率は30~40%。ダメじゃん。

 そういえばこの間行われた地元の補欠選挙は投票率が10%代だったはずだ。全ばあちゃんが泣くわ。


●政治の話

 「誰に入れたらいいかわからない」というご意見はごもっともである。ここは難題だ。誘導するわけにもいかないし、自己判断でお願いします。

 だが、どうやって国を治めるべきか、というのは古くから議論されている。有名な古典で言えば、プラトンの『国家』やら、ホッブズの『リヴァイアサン』やら、マキャベリの『君主論』やら。収める国も時代も違えば、どれが正解というのも無い。個人的な好みは、冒頭に挙げたような考え方である。

修身・斉家・治国・平天下
しゅうしん・せいか・ちこく・へいてんか

『礼記-大学』


 天下を安定させようと思うならまず国を治める必要があり、国を治めようと思うならまず家をととのえる必要があり、家をととのえようと思うならまず身をおさめる必要がある。先ず自らの徳を高め言動に気を付けることが、最終的に社会全体の安定につながるという儒教の基本的な政治に関する考え方だ。やはり国を任せるなら人徳者に任せたい、と個人的には思う。

 ちなみにきちんと読んでいないが『君主論』は、君主たるもの道徳よりも利益追求。必要なら暴力も辞さない。軍事力も大切、という感じだ。戦争の多い地域ならこれを是とする気持ちもわかるが、のうのうと田舎で暮らす小鳥としては君子に国を治めてほしい。

 そういえば、歴代のアメリカ大統領は良く奥様や子供たちと仲良しアピールをされているイメージがある。別に家族がいないと大統領になれないわけではないが、国を治める者は家庭も円満、という考え方はアジア圏以外でもあるような気がする。

 なお、家のととのえ方と国の治め方は完全なイコールではない。

儒教では古くから「父子天合」に対して、「君臣義合」というテーゼがある。『礼記』曲礼篇に、もし父がまちがった行いをした場合、子たるものは「三タビ諫メテ聴カレザレバ、スナワチ号泣シテ之ニ随ウ」、ところが君に対して臣は「三タビ諫メテ聴カレザレバ、スナワチ之ヲ逃ル」、という記載がある。儒教的世界(天下)は、いわば国家と家族(個人)との二つの中心を有する楕円である。修身・斉家・治国・平天下の理想というのは、要するにこの楕円を楕円たらしめようとする理想主義であって、それをいずれか一方の中心に収瞼させて円にしようとするのではない。この点、嘗ての日本の「忠孝一致」のプリンシプルから安易に類推することのできないものがあることを、知らねばならない。

島田虔次『朱子学と陽明学』岩波書店、2006年、 28-29頁


 父子と君臣では似ているところはあるものの、君臣の方がドライである。「あ、コイツ、ダメだ」と思ったらサクっと逃げられるのだ(最近は親子も同じくドライかもしれない)。政治家もダメだと思ったら選挙によって切り捨てることができる。

 さて、ではどの立候補者が徳の高い御仁なのか、あるいは武力で引っ張っていくゴリゴリ系のタイプなのか。このあたりは興味を持って調べるしかない。掲げている公約をチェックすることはもちろんだが、普段から政治を中心とした時事に興味を持っていることだ。

 そして同時に議員の方々も普段から活動を情報公開していただきたい。選ぶ側の人たちは常日頃から彼らの活動を見て、評価する。好きなアイドルのSNSをチェックするように、期待している議員のSNSの通知をオンにする。そういう外部からの目があれば、政治は劇的に変わるだろう。

 我が身でも、毎日体重計に客観的数値を乞えば一気に太ることは防げるし、家庭でも、「早く片付けなさい!」と怒られれば一日中荒れ放題だった部屋も片付く。会社だったら、証憑の提出を監査役から求められれば次回から気をつけるだろう。

 自ら律することがもちろん重要だ。でも人間だもの。そう簡単にはできない。だからこそ客観的な視点が必要なのだ。

 不正とか裏金とか日本の政治家ってイヤ、と言って遠巻きに見ていても何も変わらない。部屋中におもちゃを出して遊んでいる子どもを遠くから眺めていても、部屋が片付かないのと同じだ。ダメだと思えば「もう票なんか入れないからね!」と叱らなければならないのだ。もっと政治や政治家に興味を持って過ごすことが大切だろう。

 時々想像するのだが、迷惑系な方々や芸能人のスクープなどがあるとすぐに特定班が動き即日暴き出す昨今、彼らの興味が政治に向いたらすぐに情勢が変わるのではないかと思う。それだけのリサーチ力と影響力、発信力があるのだ。

 若い世代は比較的人口も少ないが、ひとたび興味が向けば国を変えられるポテンシャルがある世代だと思う。行こうぜ、選挙。

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