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詩11「落雷」

詩11「落雷」

赤い雲が裂けて
森の奥の一本の樹に落雷する
燃え広がることなく
昼間のように明るく燃える
リスは非常食を持って逃げた
ひっそりと深い森の奥
誰も知らない
わたしの胸の中
一本の木が燃える
燃え尽きる様子のないそれは
光の樹のようになり
神様の遣わした大きな鹿
ああわたしは滅んで行くんだね
そして生きていくんだね
涙は蒸気に変わる
わたしの顔を焼く
見知らぬわたしになる
わたしはわたしの髪を捧げる

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詩9「日曜の朝」

詩9「日曜の朝」

安全剃刀の音
朝から響いて
洗面台の角に
当てる音する
私は二度寝の
クマに襲われ
抱き合い布団
絡れこんでる
掛けっぱなし
レコードの針
見放して浮き
スイッチの緑
付きっぱなし
バッテリーの
ない掃除機が
すうすう言う
炭酸水を飲む
牛乳を温める
コーヒー淹れ
怖いものない
最強目玉焼き
日曜の朝方は
わたしたちの
勝ちで終わる

詩5「引っ越し」

詩5「引っ越し」

2月生まれ占いは絶好調
予定が全てうまくいく
君に会うことをかっことじで
全部保留にしている
顔を上げると赤信号で
占いは到底当たると思えない
目の奥がたまに痛んで
僕を小さくする

住んでいた
古いアパートが解体されるので
毎週写真を撮りに通った
5週間で更地になったそこには
居場所を無くした幽霊が2、3人
物憂げに佇んでいる
新しい建物が建つのは早かった
僕はよそへと越した

越した家は角部屋

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詩3「よあけまえ」

詩3「よあけまえ」

喉にナッツのカケラが詰まって咳き込んだ
君が寝ているのに構わずに
東京の月島のワンルーム
川の匂いとソースの匂いのする中間
流行りのモツ屋の行列で取っ組み合いの喧嘩を見た
ドラマのように川沿いを歩く二人を見た
小型犬を抱いたサングラスの芸能人を見た
ボラを釣る人達はたくさんいた
僕は小さい箱の中で寝転んで住人の騒音を聞いている

君が小さい箱の中に切り取った求人票を隠しているのを知っている
まるで

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