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2022年5月の記事一覧

詩11「落雷」

詩11「落雷」

赤い雲が裂けて
森の奥の一本の樹に落雷する
燃え広がることなく
昼間のように明るく燃える
リスは非常食を持って逃げた
ひっそりと深い森の奥
誰も知らない
わたしの胸の中
一本の木が燃える
燃え尽きる様子のないそれは
光の樹のようになり
神様の遣わした大きな鹿
ああわたしは滅んで行くんだね
そして生きていくんだね
涙は蒸気に変わる
わたしの顔を焼く
見知らぬわたしになる
わたしはわたしの髪を捧げる

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詩10「アリス」

詩10「アリス」

知らずのうちに落っこちた
アリスはもういないらしい
言葉たらずなあなただから
イートミー食べすぎている
赤の女王の振動が伝わって
物語は終わろうとしている
次の女王はアリスになった
穴はがちゃがちゃ変容して
僕のための穴となるだろう
僕はといえば身支度をして
タイを身につけお呼ばれに
うまくやるさ帽子売りとも
うさぎはケージに押し込み
兵士の剣を拝借しておいた
きらり光が王宮から見えて
女王アリス

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詩9「日曜の朝」

詩9「日曜の朝」

安全剃刀の音
朝から響いて
洗面台の角に
当てる音する
私は二度寝の
クマに襲われ
抱き合い布団
絡れこんでる
掛けっぱなし
レコードの針
見放して浮き
スイッチの緑
付きっぱなし
バッテリーの
ない掃除機が
すうすう言う
炭酸水を飲む
牛乳を温める
コーヒー淹れ
怖いものない
最強目玉焼き
日曜の朝方は
わたしたちの
勝ちで終わる

詩8「診察室」

詩8「診察室」

よあけまで起きていようか
このまま
眠れないときは
わるい事した数かぞえると言ったら先生は
僕の方がはるかに多いと仰った
診察室のドアを閉めて
先生のしたわるい事を思った
窓から見た花壇には
赤と黄色の鶏頭が咲いている

何度も読みかえさずに
わざと乱雑に封筒に入れた便箋
一枚一枚廊下に落ちて
白く光っている
踏み分けて
いえ踏まないように歩く
そんなふうにして眠りが降りるのを待つ
神様がいくつか

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