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『Beep21』セガ・アーケード メモリーズby 元『ゲーメスト』編集長 石井ぜんじ-memory06- ネット検索で必勝法が見つからない!? 不思議な奥深さを秘めたゲーム「ボーダーブレイク」


石井ぜんじ氏のコラム第6回は「ボーダーブレイク」

『Beep21』のコラムとして元『ゲーメスト』編集長が連載してくれているこのシリーズもいよいよ6回目。

今回扱うタイトルは、PS4®版「BORDER BREAK(ボーダーブレイク)」が、2023年9月9日をもってサービス終了したのを受け、先進的なタイトルであったアーケード版「ボーダーブレイク」について語ります。

▼第1回「ハングオン」

▼第2回「ファンタジーゾーン」

▼第3回「アウトラン」

第4回「ゲイングランド」

▼第5回「テトリス」

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石井ぜんじ:1964年生まれ。元『ゲーメスト』編集長。現在はフリーのゲームライター。ゲーム制作の仕事にも関わる。主な著書は、『ゲームセンタークロニクル』『石井ぜんじを右に!』『セガ・アーケードヒストリー』『シュタインズ・ゲート公式資料集』など。ゲーム関連ほか、SF、ミステリ、アニメなどエンタメ全般に興味あり。

ライターの石井ぜんじです。ここではセガのアーケードゲームを中心に、作品の魅力や発売された当時の状況、個人的な思い入れなどを書いていきたいと思う。

6回目となる連載で取り上げるのは、アーケード版「ボーダーブレイク」(セガ・2009年9月~2019年9月)である。

「ボーダーブレイク」はブラスト・ランナーと呼ばれるロボットを操作し、10 vs 10で戦う対戦ゲームだ。ゲームジャンル的にはTPS(サードパーソン・シューター)に分類される。本作は発売されるや否や、全国のゲームセンターで熱烈なファンを獲得し、その後バージョンアップを重ねながら、10年ものあいだ稼働を続けた名作である。

2010年代までの日本では
メジャーとは言えなかったFPS/TPS

FPS(ファーストパーソン・シューター)及びTPS(以下FPS/TPS)は、’90年代の前半から欧米で発展したゲームジャンルである。その内容は、3D空間で射撃武器を撃ち合って戦うというものだ。

FPS/TPS は2023年現在、日本ではすっかりお馴染なじみのジャンルとなっている。しかし欧米にルーツを持つFPS/TPSが、日本で楽しまれるようになったのは比較的最近である。そこで、FPS/TPSの歴史と、TPSである本作が稼働を開始した頃の状況について、簡単にまとめていくことにする。

‘90年代のFPS/TPSと
時代を先取りしていた「アウトトリガー」

欧米でのFPS/TPSの歴史を簡単に振り返ってみよう。1993年に「DOOM」(id Software)が人気となり、FPSというジャンルを確立。その後「Quake」(1996年・id Software)、「Unreal」(1998年・Epic Games)、「Half-Life」(1998年・Valve Software)などのメジャータイトルがPCを中心に輩出されてきた。

それでは’90年代の日本では、FPS/TPSは存在していたのだろうか。アーケードでは1992年に「ガンバスター」(タイトー)がリリース。この作品は移動しながら撃ち合い、対戦もできるガンシューティングであった。また同時期に、ロボットを操り対戦する「バトルテック」が国内で稼働している。いっぽう家庭用では1997年にNINTENDO64版「ゴールデンアイ 007」(任天堂)が、またロボットTPSの「アーマード・コア」(フロム・ソフトウェア)がPlayStationにて1997年に発売されている。

このように日本でも欧米のFPS/TPSに近いゲームはプレイできたのだが、ジャンルとして定着したわけではなかった。’90年代の日本、とくにアーケードでは「ストリートファイターII」シリーズ(カプコン)、「バーチャファイター」シリーズ(セガ)などの対戦格闘ゲームが大ブームとなり、大多数の日本のプレイヤーにとって対戦ゲームといえば対戦格闘ゲーム、と認識されていた時代だったと言える。

‘90年代の後半になると、対戦格闘ゲームの人気が過熱した結果、似たようなゲームが増えてきた。差別化を図るのにも限界があり、各社は新しいジャンルの可能性を模索していた。

そんなときにゲームセンターに登場したのが、セガの「アウトトリガー」(1999年)である。この作品はレバー、ボタン、トラックボールを使った本格的なFPSで、4人同時の対戦プレイが可能だった。その内容は、明らかに当時欧米で人気だったFPS/TPSを研究、参考にしたことが伺えた。

©SEGA アーケード版「アウトトリガー」(1999年稼働)

しかしこの作品は、残念ながらゲームセンターではあまり人気が得られなかった。前述したように当時の日本は対戦格闘ゲームが大人気で、多くの人がFPS/TPSというジャンルに馴染みがなかった。またゲームセンターでオンライン対戦が普及する前であり、仲間を集めないと対戦ができなかったのもマイナスであった。

「アウトトリガー」はセガらしい、時代を先取りした作品であったと思う。もし現在のゲームセンターで稼働していたなら、違和感なく遊んでくれる人が多かったのではないかと思われる。

斬新なロボットゲームとして
プレイヤーの目を引いた「ボーダーブレイク」

2000年代になると、家庭用コンソールのXbox、Xbox360において、「HALO」シリーズなどのFPS/TPS作品が国内でリリースされた。しかし欧米のFPS/TPSを遊ぶ日本のプレイヤーはまだまだ多いとは言えず少なかった。当時は海外のゲームを遊んでいるというだけで、一部から「変わり者のマニア」という扱いを受ける場合もあったほどだ。「日本は欧米とは文化的な背景が違うので、銃を使うFPS/TPSは人気が出ない」などと、まことしやかに言われていた。

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